2019年08月01日 11:21 弁護士ドットコム
大阪府枚方市の遊園地「ひらかたパーク」(通称・ひらパー)で7月28日、着ぐるみショーの練習をしていたアルバイトの男性(28)が熱中症で死亡する事故があった。
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報道によると、男性は閉園後の午後7時半から着ぐるみ(重量15キロ)を着て、屋外ステージでダンサーらと通し稽古をしていたという。
この日、男性は昼間に着ぐるみを着て25分ほど園内で活動。そのあと、着ぐるみを脱いで別の業務をこなし、午後5時からの屋内練習(ジャージ着用)をへて、屋外稽古をしていた。
当日の大阪府の最高気温は33.2度。男性に異変が起きたのは、屋外練習を初めて20分ほどしてからだったそうで、午後8時の気温は28.7度、湿度は68%だった。
アルバイトを含むスタッフが熱中症で倒れたとき、会社の責任はどう考えられるのだろうか。波多野進弁護士に聞いた。
ーー業務中の熱中症とのことですが、労災は認定されるのでしょうか?
今回のケースは労災申請を行えば、業務によって熱中症を発症し死に至ったということで労災認定がなされると思います。
ーー会社には労働者の熱中症に配慮する必要があるのでしょうか?
厚生労働省は、1996年に「熱中症の予防について」を策定して以降、2001年、2004年にも同様の通達を発して、熱中症予防対策の必要性を事業者に求めてきています。
2009年には「職場における熱中症の予防について」という通達が出ていて、あわせて「職場における熱中症予防対策マニュアル」が発表されています。
今日においては熱中症の危険性やその防止の手段などについて周知されていると言えます。
お亡くなりになった方は風邪気味で体調が不良であったとのことです。体調不良があると熱中症になりやすいことから、熱中症の危険のある業務の場合には、業務の開始や業務中も体調不良の有無をチェックする体制とその実施が必要になります。
今回のケースでは体調不良のチェック体制があったのか、仮にあったとしても実際に行っていたのかも責任の有無や程度を考える際の要素になってくると思います。
ーー会社の責任はどう考えられるでしょうか?
会社(使用者)の民事上の責任も認められると思います。
報道によると、男性は日中も着ぐるみを着て活動していたといいます。当日の最高気温は33.2度で、温度だけ見ても熱中症の危険のあるものでした。
パーク内の地面はアスファルトやコンクリートが多いと考えられ、その輻射熱(ふくしゃねつ:照り返し)も考慮すると、着ぐるみでの活動でいつ熱中症になってもおかしくなかったといえます。
着ぐるみショーの練習のときも温度は下がっていたとはいえ、28.7度で熱中症を引き起こしてもおかしくない温度です。湿度も68%と高めで、通常よりも放熱がうまくできにくくなります。
しかも、15キロの着ぐるみで動くこと自体相当な身体の負荷であるうえ、熱がこもりやすい着ぐるみ内の温度は相当高温になっていたと推測されます。使用者(会社)にとって熱中症がいつ起こってもおかしくないことは十分予測可能といえます。
ーー夏場に着ぐるみで踊れば、どれだけ暑いかは容易に想像がつきます。それだけにより細やかな安全配慮が求められるといえます。
【取材協力弁護士】
波多野 進(はたの・すすむ)弁護士
弁護士登録以来、10年以上の間、過労死・過労自殺(自死)・労災事故事件(労災・労災民事賠償)や解雇、残業代にまつわる労働事件に数多く取り組んでいる。
事務所名:同心法律事務所
事務所URL:http://doshin-law.com