■韓国で新人賞10冠、デビューからチャートのトップに君臨する6人組
また一組、韓国から大型新人が日本にやってきた。BTOB、PENTAGON、CLCらを擁するCUBE ENTERTAINMENTが送り出す6人組ガールズグループ「(G)I-DLE」(日本での読みは「ジー・アイドゥル」)だ。
2018年5月に本国でデビューした彼女たちは、デビューからわずか20日で音楽番組1位を記録。その後リリースした“HANN”“Senorita”“Uh-Oh”でも立て続けに1位を獲得している。韓国国内では音楽賞の新人賞10冠という記録も打ち立て、まさに「大型新人」の名にふさわしい活躍と言えよう。国境を超えて活動するK-POPアーティストにおいて多国籍なグループはいまや珍しいことではないが、(G)I-DLEもグローバルなメンバーで構成されている。
韓国での華々しいデビューから1年超。7月31日にリリースとなった日本デビューミニアルバム『LATATA』の発売に先駆け、6人は日本のファンにとっては待望の初単独公演となるショーケースライブを行なった。
■日本で初の単独公演は最新曲で幕開け。(G)I-DLEの「いま」を見せつける
7月23日、会場となった東京・マイナビBLITZ赤坂には1分で完売したというチケットを運良く手にした約1500人が集まった。チケットには定員の約10倍の応募があったというから、日本でも彼女たちに向けられた期待の高さが窺える。
ペンライトの紫の光と大歓声に包まれて登場した(G)I-DLEの6人がまず披露したのは、6月末に韓国でリリースされたばかりの“Uh-Oh”。恋愛を歌ってきたそれまでのリード曲とは一線を画し、都合よく近づいてくる人間への反発心を挑発的に歌った最新曲で、(G)I-DLEの「いま」のモードを見せつける。
黒を基調としたクールなファッションを纏い、1990年代ヒップホップのBoom Bapのスタイルを取り入れたゆったりとしたビートに身を揺らす彼女たちは、かわいらしさとかっこよさが同居した「ガールクラッシュ」のイメージが良く似合う。メインダンサー・スジンのソロダンスパートではひときわ大きな歓声があがり、会場は熱気に包まれた。パフォーマンスでは、さっそく日本デビュー盤から“MAZE(Japanese ver.)”が披露された。
■リーダー・ソヨンのソングライターとしての才能を思い知る
ラッパーのソヨンは、オーディション番組『Produce 101』や『UNPRETTY RAP STAR』などでデビュー前からその名を馳せ、作詞・作曲・編曲も手掛ける。これまでの(G)I-DLEのタイトル曲では全て作詞作曲を担当し、音楽番組で1位を獲得しているが、それだけにとどまらず同じ事務所のガールズグループ・CLCにも“NO”を提供するなど「作曲ドル」としても知られる。またソヨンだけでなく、バンコク出身メンバーのミンニも自作曲が2ndミニアルバム『I Made』に収録されている。
トークコーナーを挟んだライブ後半は、ムーンバトン調の“LATATA”、カスタネットのようなサウンドが全編に配されたラテン調の“Senorita”、口笛の音のような音色が印象的なダンスポップソング“HANN”と、ソヨンが手掛けたタイトル曲が続けてパフォーマンスされた(“HANN”は日本語バージョン)。YouTubeの総再生回数が約1億2000万回を記録しているデビュー曲“LATATA”ではファンの掛け声も一層大きくなり、本編最後の“HANN”まで最高潮の盛り上がりで駆け抜けた。
いずれも「明るくポップ」というよりは、メランコリックかつ妖艶で、ややスローペースの楽曲にもかかわらず、緩急ある展開と統制されつつも各々の個性が際立つ6人のパフォーマンスによって観客の心をしっかりと掴む様からは、ソヨンのソングライターとしての才能、そして6人のパフォーマーとしての実力を思い知らされた。
■第一に掲げたのは「楽しみながら音楽をやっていくこと」
勉強中だという日本語も交えて進行されたトークコーナーでは、日本デビューに向けての思いや各々の魅力ポイントが語られた。
なかでもリーダー・ソヨンの言葉が印象に残っている。これからの目標を尋ねられた彼女は「まず1つ目は楽しみながら音楽をやっていくことです」と答え、「2つ目は韓国だけでなく世界のNEVERLAND((G)I-DLEのファンの名称)とお会いすることです」と続けた。
言葉の裏には、オーディション番組で音楽によって競うことを経験した彼女だからこその思いがあるのかもしれない。ソヨンはトークコーナー後に会場で流されたスペシャルVTRのなかでも、タイトル曲の作曲を手掛けることについて「プレッシャーはありますが、楽しくできるように努力しています」と答えていた。
しかし「今後の目標」という質問にファンへの思いや、グループを大きくすること、といった答えが第一にくるのではなく、「まず自分たちが楽しむこと」を掲げる姿に頼もしさを覚えたのは私だけだろうか。自分たちが楽しんでこそ、ファンを喜ばせることもできる。(G)I-DLEのグループ名には「ひとりひとり個性ある女の子たちが集まっている」という意味が込められているそうだが、ここには「自分」を持っている6人が集まっているのだと感じさせられた。
作詞・作曲・編曲への参加に加えて振付も自ら行なう「セルフプロデュースアイドル」である(G)I-DLEは、「自分たちの音楽を自分たちでパフォーマンスしている」という自負も強いだろう。ライブ会場では多くの若い女性ファンが声援を送っていたが、「自分たちの音楽」を楽しみながらステージで見せる6人の姿は憧れの対象であるだけでなく、観る者をエンパワーしてくれる存在でもあるはずだ。日本デビュー曲“LATATA(Japanese ver.)”を披露したアンコールでも、クールな本編とは打って変わった力の抜けたパフォーマンスでファンと交流し、ステージを楽しむ姿が目を引いた。
ショーケースライブはアンコール含め6曲という短い公演だったが、今度はその姿をより大きな会場で、もっと長い時間見せてほしい。日本デビューをきっかけに、日本でもその機会が増えることを期待したい。