元ヒュンダイワークスドライバーのヘイデン・パッドンは今週末、北欧フィンランドで開催されるWRC世界ラリー選手権第9戦フィンランドにMスポーツ・フォード・ワールド・ラリーチームから復帰参戦を予定していたが、7月29日に行われた事前テストでのクラッシュにより同イベントの参戦を断念することになった。
2018年シーズンまでヒュンダイ陣営に所属したいたパッドンは今季、世界選手権9連覇王者のセバスチャン・ローブがチームに加わったことでWRCのレギュラーシートを喪失。活動の場を母国ニュージーランドやアジア・オセアニア地域のラリーイベントに移しながらシリーズ復帰のチャンスを窺っていた。
そうしたなかパッドンは6月下旬、古巣であるMスポーツ・フォードとWRCイベントの出場に向けた交渉を行い、8月1~4日に行われるラリー・フィンランドでの参戦契約を結ぶことに成功する。
その後、チームと“キウイ”レーサーは2019年シーズン後半戦のオープニングラウンドに向けて、プライベートテストを実施した。しかし、その最中の月曜午後、パッドンがドライブしたフォード・フィエスタWRCは高速コーナーでクラッシュを喫してしまう。
幸いにもパッドンとコドライバーのジョン・ケナードは、大クラッシュにも関わらず双方とも無事だったが、このアクシデントでラリー・フィンランドに持ち込む予定だった車両は一部原型を留めないほどのダメージを受けることに。
MスポーツWRTの代表を務めるリチャード・ミレーナ―は、大破したフィエスタWRCをイベント初日の木曜日までに修復することは不可能であること、また、別のクルマを用意する充分な時間がない状況であることを確認している。この決断が意味するのはパッドンのWRC復帰が幻に終わったという悲劇的な事実だ。
「1回目の走行でコース上の岩が掘り起こされた。彼らはクルマを転回させ同じ道を引き返している最中に、その岩が6速で通過する右ブラインドコーナーの真ん中にあるのを見つけた」とWRC.comに語ったミレーナー。
「岩はサンプガードの底にぶつかり、クルマを宙に浮かせた。そうなれば彼らはただのパッセンジャーと化す。何もできなかったんだ」
「岩を地面から引き抜いてしまった場合に備えて、コースの隅から隅までを把握することはできない。また、テストの性質上、直前の走行から変化した事象を最初に確認するのはつねに自分自身になるんだ」
ミレーナーは、Mスポーツがパッドンをラリー・フィンランドに出場させるために、あらゆる手段を検討したと続けた。
「マルコム・ウィルソン(Mスポーツ・マネージングディレクター)が真っ先にとった行動は、彼らをラリー・フィンランドの出発点につかせる方法を見つけ出すことだった」
「しかし、それは不可能だった。大破したクルマはジグに載せなければならず、時間内に別のクルマを用意することもできなかったんだ」
「これはヘイデン(・パッドン)にとってあまりに残酷な状況だ。彼はいま、最悪といっても過言ではない運気に見舞われている。残念ながら、これがエントリーカーでテストを行うときに起こりうるリスクだよ」
パッドンの欠場により、3台体制を改め今戦も2台体制となるMスポーツは今週末、レギュラーメンバーのテーム・スニネンと、ラリー・エストニアで背中を負傷したエルフィン・エバンスの代役を務めるガス・グリーンスミスがフォード・フィエスタWRCをドライブすることになる。