2022年シーズンから本格的なハイブリッド機構の導入をアナウンスしているBTCCイギリス・ツーリングカー選手権は、そのシステム供給入札の勝者が『Cosworth Electronics(コスワース・エレクトロニクス社)』に決定したことを発表。BTCC史上初のハイブリッドシステム採用に向け、その設計、供給と保守に関する契約を締結した。
BTCCのオーガナイザーであるTOCAは、2018年8月にも将来的なシリーズへのハイブリッドシステム導入をアナウンス済みで、現行のNGTC規定に「アドオン可能な機構」を持ち、かつ「安価」で、「プッシュ・トゥ・パスなどでレースの戦略的な側面を支える」ことが可能なシステムであること、などの共通システム開発に向けた条件を提示していた。
そしてこの4月から開始されたサプライヤー入札には、都合11社の応募があったことも明かされ、そのなかでもレーシングカーの電装系システムを古くから製造してきたコスワース・エレクトロニクス社が権利を獲得したことがアナウンスされた。
これにより、当初計画の2022年シーズン期日でのハイブリッド導入が確定したばかりでなく、TOCAの希望とシステム開発進捗に合わせて、2021年に前倒しての部分的導入を実現する可能性も出てきている。
この"アディショナル"ハイブリッドシステムの『P2 off-axis』は、現在のNGTC規定で採用されているXtrac社製の共通ギヤボックスに追加装着され、各ドライバーがオーバーテイクやディフェンスの際にエクストラパワーを供給。BTCCのレースシーンで新たなコンペティションとレース戦略、バトルの機会を提供することが期待されている。
コスワースがシルバーストンで行ったパフォーマンス・シミュレーションによれば、エンジン回転数の低い領域でより効果的なゲインが見込めることが確認されており、コプス・コーナーからの脱出では、非装着車に比べて次のブレーキングゾーンまでに「8mのアドバンテージが見込める」という。
実際のレース運用では、オープニングラップを終えたところで各ドライバーはシステムのエネルギー使用や回生を任意でセレクトすることが可能となり、必要な場合はトラックのどのゾーンでも1ラップあたり最大15秒間のハイブリッドエネルギーを使用することができる。
ステアリングに装着されたボタンでシステムの作動をコントロールし、そのエネルギー使用時には約40bhp(約40PS)のエクストラパワーを供給。また、ブレーキ使用時やエネルギー上限に達した場合など、いくつかの要件を満たした場合にはエネルギー供給がカットされ、さらにボタンを1秒間長押しした場合や、スロットルのリフトや急なペダル操作などの要件でも、ハイブリッド機構の作動が解除されるシステムが採用された。
電気モーターとデルタ・モータースポーツ製のバッテリーを含めたシステム総重量は64kgとなり、このハイブリッドの出力や回生比率の調整を行うことで現在のサクセスバラストの運用を代替する。これにより75kg上限だったバラスト搭載量より約10kgほど最大車両重量が軽減されることになった。
今後もテストやシミュレーションを通じてエネルギー放出量や回生の効率などを洗練させるとともに、アップデートされたギヤボックスケースの耐久性やインタークーラー位置やパイピングの見直しも含め、NGTC規定ツーリングカーへの最適化が図られることになる。