7月のNTTインディカー・シリーズ3連戦の最後となるミド・オハイオ。先週のアイオワは天候に翻弄されたが、この週末は一貫して天候に恵まれた。
ミド・オハイオでは過去上位入賞はありながら、まだ表彰台には上がれていないレイホール・レターマン・ラニガン・レーシングの佐藤琢磨。不運のスパイラルから早く抜け出し、ホンダのお膝元のオハイオで景気の良い結果を残したいところだ。
ロードコースでは第3戦アラバマの快勝の印象が強いが、このミド・オハイオではプラクティスから苦戦した。ファイアストンの用意したタイヤに対してグリップ不足を感じ、プラクティス1回目は14番手、プラクティス2回目はレッドタイヤで周回する時間を失って20番手に甘んじた。
「アラバマのセッティングを基にして、ここに合わせていってるのですが、なかなかうまく合わせ込めないです。最後にレッドタイヤできちんと走れなくて残念……」と厳しい様子を語る。
土曜日のプラクティス走行は18番手となった。上位陣が1分5秒台で走行するなかで、琢磨は1分6秒台での走行とタイム差は縮まらない。
予選では偶数組のグループ1だったが、レッドタイヤを履いても大きくタイムを削ることができずに9番手でQ1突破ならず。同じくチームメイトのグラハム・レイホールも8番手とレイホール・レターマン・ラニガンがスランプに入ってしまったことがわかるだろう。
わずか光明が見えてきたのは、日曜のウォームアップだった。琢磨はレッド、ブラックそれぞれのタイヤで長めのランをして磨耗を確かめつつも7番手のタイムで、レースペースは決して悪くないことを予感させた。
「幸いにしてQ1で終わったのでレッドタイヤが1セット余分にあります。それを有効に使ってレースの作戦を考えたいですね。ウォームアップでレッドもブラックも磨耗を確認できたし、想定の範囲内のクルマの動きをしてましたから、レースは楽しみにしてます」
ペースが見えてきたとはいえ、17番手からのスタートではなかなか先も厳しい。
ミド・オハイオの場合、バックストレッチでレースがグリーンとなる。その直後のターン3で、思いっきりインから入ってフェルッチを交わした琢磨だが、アウトからインに入ってきたマーカス・エリクソンと接触し、その後左右の車にも弾かれる形で次のコーナーへ。
琢磨は走行を続ける右フロントタイヤがパンクしておりコースオフ。砂煙を上げながらグラベルを走り抜けてピットに向かった。
タイヤ交換を済ませてピットアウトした琢磨は、幸いにもレースリーダーのウィル・パワーの前で戦列に戻る。パワーがいずれ追いつくと思っていたが、むしろ琢磨がパワーを引き離す勢いだった。
パワーとトップを交代したジョゼフ・ニューガーデン、その後にスコット・ディクソンが来ても琢磨をラップダウンするには時間がかかった。レースペースが良かっただけに、悔やまれる序盤の接触だった。
琢磨は最初の接触からほぼ最後尾の21番手に落ちるものの、前のザック・ビーチらに追いつきこれをパス。30周目に2度目のピットイン作業。ようやくラップダウンになったのは3度目のピットイン後、58周目のことだった。
レッドタイヤでややペースを落としたものの、15番手のマルコ・アンドレッティに追いつき、これを猛追した。
だが最後の不運が琢磨を襲う。最初のコースオフでマシンに砂利や砂が飛び、マシンの給油口にも小石が飛んでしまっており、そのまま給油作業をしていたことから、リグがきちんと収まらなくなってしまい、給油時にフルに燃料を入れられなくなっていたのだ。
残り5周を切ったこところで、燃料不足の表示が出て琢磨は止む無くピットイン。タイヤは替えず、スプラッシュ&ゴーでコースに戻った。
せっかく15番手争いまで復帰していたのに、このピットで19番手まで脱落。そのままチェッカーを迎えることになった。
「スタートで膨らんだヒンチが戻ってきて、その隙間に入ろうとしてエリクソンと接触して、他にも何台かと当たってタイヤがパンクしてしまいました」
「今日はレースのペースも良くて、3回のピットストップの予定でしたけど、思いっきり楽しめました。レースペースは良かっただけに最初のアクシデントが悔やしいですね……」
7月の3連戦は思いもよらぬ悪夢の連続で、結果らしい結果を残すことはできないで終わった。次のポコノまで2週間のインターバルがある。その間に運気が変わることを祈るしかなさそうだ。