オーストリアGPでのレッドブル・ホンダとしての初優勝は、暑いコンディションに強いホンダのパワーユニットのアドバンテージと、車体側のアップデートによる進化が主な勝因だった。
あれから4週間、今回レッドブル・ホンダを優勝に導いたのは、マックス・フェルスタッペンのドライビングと、彼のレースエンジニアを務めるジャンピエロ・ランビアセ、そしてそのランビアセからの指示でピットインしてきたフェルスタッペンを素早いタイヤ交換作業でコースに送り出したピットクルーたちだった。
レースは雨が降ったり止んだりする、気まぐれな天候の下で行われた。目まぐるしく変わるコンディションに、多くのドライバーが何度もピットインとピットアウトを繰り返した。多いドライバーで6回、少ないドライバーでも3回のピットストップを行った。
そんななか、フェルスタッペンのピットストップは合計5回だった。回数が増えれば、ミスする確率も当然増える。しかし、この日のレッドブルのピットクルーはミスしないだけでなく、最高のピットストップ作業を披露した。
1回目は3周目。ウエットタイヤからインターミディエイト(雨用と晴れ用の中間)タイヤに交換するタイミングだった。このときは多くのドライバーが一斉にピットインしたため、静止時間がモニターに映し出されなかったが、ピットレーン滞在時間は22.358秒だった。
2回目は25周目。インターミディエイトからドライタイヤへの交換だ。このときの静止時間は2.0秒。ピットレーン滞在時間は19.640秒と、1回目よりも約2.7秒速かった。3回目は4周後の29周目。ドライタイヤから再びインターミディエイトタイヤに変えるときだった。静止時間は3.6秒でピットレーン滞在時間は21.472秒だった。
4回目はニコ・ヒュルケンベルグ(ルノー)のクラッシュによってセーフティカーが導入されたタイミングでピットインした。このとき、フェルスタッペンはトップを快走していた。しかも、タイヤはインターミディエイトからインターミディエイトへの交換。どうして入れたのか? レースエンジニアのジャンピエロ・ランビアセは次のように説明した。
「あのとき、我々と2番手のボッタスとの差は約9秒しかなかったが、セーフティカー導入下ではピットインしても逆転されない、いわゆる『フリーピットストップ』状態だった」
ランビアセの指示を受けたメカニックたちは41周目にピットインしてきたフェルスタッペンを静止時間2.1秒(ピットレーン滞在時間は19.327秒)でコースに復帰させ、トップを堅持。1.4秒後ろにはボッタスが迫っていた。もし、タイヤ交換作業で少しでもミスしていれば、逆転されていた可能性は十分にあった。
そして、この日5回目のピットストップはインターミディエイトタイヤからドライタイヤ(ソフト)に交換するタイミングだった。このときもフェルスタッペン以外の多くのドライバーがピットインしていたため、静止時間はモニターでは確認できなかったが、ピットレーン滞在時間は19.062秒だった。
4週間前のオーストリアGPでは、コンストラクター代表として表彰台に上がったのは、レッドブルからの指名を受けた田辺豊治F1テクニカルディレクターだった。この日、クリスチャン・ホーナー代表から指名を受けたのは、ピットクルーを指揮するチーフメカニックのフィル・ターナーだった。
「今日はピットクルーが素晴らしい仕事をしてくれた。それを報いるためにも、チーフメカニックであるフィル・ターナーに表彰台でコンストラクターズトロフィーを受け取ってもらいたかった」
今年のドイツGPでファステストラップを記録したのはフェルスタッペンだったが、ピットレーン滞在時間のファステストタイムもまたフェルスタッペンが最後に記録した19.062秒だった。この日のレッドブル・ホンダは本コースでも速かっただけでなく、ピットレーンでも速かった。