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BTSのリーダー RM、グループの歩みと重なる成長 知的なイメージと“破壊王”のギャップも魅力に

2019年07月29日 10:21  リアルサウンド

リアルサウンド

 5月から続いてきたBTSのメンバー各個人に焦点を当てたシリーズだが、今回のRMで最後となった。ちょうど先日Lil Nas Xがリリースした「Old Town Road」のリミックス曲、「Seoul Town Road」にフィーチャリングしたばかりだ。


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 RMが出演していたバラエティ番組で公開された通知表によると、中学1年生の時にはすでに将来の希望欄(韓国の通知表には本人と親が進路希望を書く欄がある)には「MC」と書かれていた。SUGAと同様、小学校6年生でEPIK HIGHの「Fly」を聴いてラッパーを志すように。2010年に高校1年生でBigHitの練習生になるまでは、RunchRandaという名前でウェブコミュニティなどで楽曲を発表していたという。練習生になって以降はラップモンスターという芸名を使うようになった(2017年にRMに変更)。元々防弾少年団(現BTS)はヒップホップグループとしてデビューさせる予定で練習生を集めていたこともあり、当時同じくラッパーで練習生だったIRON、Supreme Boi、キドなどと共に大南協(大南朝鮮ヒップホップ協同組合)というクルーを結成して時折活動していた。しかし後に“アイドルグループ”に路線変更されたため、他メンバーは事務所を去りRMだけが残った(Supreme Boiは現在BigHit所属のプロデューサー)。J-HOPEと同じ94年生まれで最年長ではないが、BTSメンバーの中では最も練習生期間が長いこともあり、リーダーを任されている。


 メンバーの中ではデビュー前も含め最もソロトラックを多く発表している。デビュー初期のバラエティ番組『防弾少年団のアメリカンハッスルライフ』で縁が出来たウォーレン・Gや、クリッズ・カリコーやワーレイなど、アメリカのラッパーとのコラボレーションも多い。クリッズ・カリコーとワーレイの場合はRMがファンだと公言したことでSNS上でファンがRTなどで知らせて繋いだ縁であり、すでに2015年ごろからSNS上ではARMYの勢いとアメリカ国内でのファンベースの下地がかなりあったことがわかる。2015年発表の最初のミックステープ『RM』に関しては過去記事を参照されたい。2018年にも2本目のミックステープ『mono.』を発表したが、BTS人気を反映して86カ国のiTunesで1位、ビルボード200で26位を記録した。


 楽曲制作面ではメンバーの中で最も多くの曲にクレジットされており、特に「春の日」ではサビの部分を担当している。それまで全てのタイトル曲のサビ部分は所属プロデューサーが作曲していたが、この曲で始めてメンバー作のサビが採用された。また、かつてBigHitがGFRIENDが所属するSource Musicと共同でプロデュースしていたGLAMという女子グループの楽曲制作にも参加していた。


 中高時代はかなり成績がよく、現在も語学堪能なことで知られている。読書量も多く、普段から深く思考することが多いという点はリーダーに選ばれた理由の1つでもあるようだ。ラップに比べるとダンスはあまり得意ではないようだが、スケートが得意という一面も持つ。一方日常では、色々なものを紛失したり(最低でも2回は渡航中にパスポート無くしたことが知られている)よく物を壊す“破壊王”としても知られている。このようなギャップが彼の大きな魅力としてみなされている部分もあるようだ。


 “リーダー”以外のRMのグループ内での役割を考えた時、グループそのもののイメージがそのままRMと重なる部分は多い。国連本部でのスピーチなどでの知性的なイメージがある一方で、思慮深い反面、実は過去最もさまざまな物議をかもしたり、バッシングを受けてきたことが多かったメンバーでもある。楽曲制作やパフォーマンス面でも最初からカリスマ性やセンスが目立っていたというわけではなく、いわゆる天才型というよりは努力型秀才タイプのラッパーと言えるだろう。読書などでのインプットが多い分、引用に伴う盗作疑惑をかけられたこともあった。しかし、その度にRMは謝罪し、女性学の専門家や作詞に定評のあるミュージシャンに学ぶことを現在まで繰り返してきた。今現在の知性的なイメージは決して一朝一夕で築かれてきたものではないのだ。


 楽曲制作でも同様で、最初は既存のビートを借用していたところから徐々にオリジナルトラックの割合が増えていった。初期の歌詞ではラッパーとアイドル、アンダーとメジャーの境目で苦悩するような歌詞が多かったが、後のインタビューではファンからの手紙で本当の10代のアイドルになりたいと感じるようなったと語っていた。このように、決して完璧ではなく折々で過ちや壁にぶつかっても、そこで諦めることなく学び直して成長していく、という姿は、そのままBTSの成長と重なるようだ。そしてその過程を共有してきたからこそ、ファンも献身的に支持するようになった面もあるのではないだろうか。「韓国のアイドルはデビュー時からほぼ完成されている」というのが定説だ。しかし、パフォーマンス面でのクオリティとは別の次元でデビュー以降最も紆余曲折が多く、目に見える変化や成長が多かったBTSが現在最も世界で支持されるグループの1つになったという事実が、“アイドル”というもののある種の本質を表しているのかもしれない。


 メンバー個人に焦点を当ててきたこのシリーズを振り返ると、BTSはそれぞれのメンバーに得意なことも不完全な部分もある。しかしグループとして全員が揃った時、得意なメンバーが他メンバーの少し足りない部分を補填してリードし、共に成長していくことができる。そしてそれによって、単純に7倍した以上の実力や魅力を増幅させることが出来るという、それこそがまさに“グループがグループである意味”を体現していると言えるのではないだろうか。(DJ泡沫)