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「WAVEDRUM」シリーズ最新モデルから変わり種まで 気になるパーカッション・シンセサイザー4選

2019年07月28日 19:11  リアルサウンド

リアルサウンド

 毎回気になる楽器や機材を紹介する本コラム、今月は、叩くだけで様々な音色を奏でられるパーカッション・シンセサイザーをピックアップしてみた。


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■ KORG 「WAVEDRUM Global Edition」
 まずは、パーカッション・シンセサイザーの代表格ともいえるKORGの「WAVEDRUM」シリーズ、その最新モデルである「WAVEDRUM Global Edition」を見てみよう。


 「WAVEDRUM」は、電子楽器ながらフィジカルな操作に徹底的にこだわった楽器である。サウンドは、ヘッド部分とリム部分にそれぞれ設けられたピックアップによってDSP技術によるアルゴリズムとPCM音源を発音。しかもヘッド部分は圧力センサーが搭載されているので、叩くだけでなく引っかいたり擦ったり、押したりといった指や手のひらの繊細な動きをはじめ、オープン・ショットやスラップ・ショット、ミュートなどの奏法にも反応するようになっている。


 スティック、マレット、ブラシなどによる音の違いや、叩くヘッドの位置によるサウンドの変化なども忠実に再現。スケール設定によってフレーズを奏でたり、叩くたびにピッチを変化させたりすることも可能である。さらに、ヘッド面を叩いた後、さらに力を加えて余韻部分の音色やピッチをコントロールする奏法にも対応しているので、例えばインドの楽器タブラのような、叩き方によって様々な音色を出すパーカッションの「再現」も可能となったのだ。


 リムの部分は、大小2種類の突起物からなるノッチ部分が用意されており、スティックなどでこすることでトレモロ的な効果も出せる。ヘッドと合わせて演奏することによって、自分なりの音色やフレーズを編み出すことも可能だ。


 「WAVEDRUM」はこれまでにアラビック・サウンドをプラスした 「WAVEDRUM Oriental」や、限定カラー・モデル、後述する「WAVEDRUM Mini」などバリエーションも増え続けているが、今回の「WAVEDRUM Global Edition」は、最新サウンドを追加し、各音色のクオリティも大幅にアップ。低音と高音のメリハリや小音に対する追従性も増酢など、操作性も格段に向上している。王道のパーカッション・サウンドから斬新かつユニークなサウンドまで、200種類のプリセットを搭載。もちろん、自分なりにエディットして保存することも可能だ。


■ KORG「WAVEDRUM Mini」
 そんな「WAVEDRUM」をコンパクトにしたのが「WAVEDRUM Mini」だ。電池駆動、スピーカー搭載など、いつでもどこでも手軽に演奏できるのに加え、ユニークなのは「センサー・クリップ」である。例えば、センサー・クリップにキックの音をアサインして、そのクリップを足元に付ければ、まるでペダルを踏んでキックを鳴らすようなことが出来る。あるいは、センサー・クリップにシェイカーの音をアサインして、そのクリップをペットボトルなどに取り付ければ、それを振ることでシェイカーの音を出すことが出来るのだ。つまり、身の回りにあるものを簡単にパーカッションに変えてしまうのである。


 クリップに取り付ける素材によってもサウンドが変化するので、色々試してみたくなること請け合い。もちろん、本体のパッド部分も叩く位置や叩き方の強弱によって変化がつけられるので、オープン・ショットやスラップ・ショットなど、高度で複雑な奏法にも反応してくれる。「WAVEDRUM」よりも、もう少しカジュアルにパーカッションを楽しみたい人向けである。


■Roland ローランド デジタルハンドパーカッション HandSonic HPD-20
 Rolandからは、デジタル・ハンド・パーカッション「HandSonic HPD-20」が2013年に発売されている。こちらはプリセット音色が、なんと850種類も搭載されている。Rolandといえば「V Drum」も有名だが、そこに搭載され高い評価を受けているアコースティック・ドラム音色をはじめ、コンガ、ジャンベ、カホン、タブラなど世界各地のパーカッション、スチールパンなどメロディックなパーカッション、さらにエレクトロニック系サウンドやダンス・ミュージック向けサウンドも豊富に取り揃えている。


 また、ユニークなのは13分割された、大小様々なパッド部分だ。各パットには異なる音色を割り当てることが出来るため、これ1台で様々な音色を鳴らすことが出来る。パッドはシリコン素材で、手のひらを使った力強いショットから、指先を使った繊細なショットまで、様々な奏法に対応している。


 また、叩く強さを検出するだけでなく、パッドを押し込むことで音色をコントロールすることも可能。例えば、手前にある大きなパッド2つのうち、左のパッドを指で押し込みながら右のパッドを叩くとミュート効果が得られたり、ピッチを上げたりすることが出来る。「ロール」ボタンをオンにした状態でパッドを叩けば、誰でも簡単にロール奏法ができるのも嬉しい。しかもロールの速さをパッドごとに変えられるので、パーカッション上級者じゃないと出来ないような複雑なプレイも出来るのだ。


 シンセではおなじみのレイヤー機能も搭載。パッドごとに2つの音色をアサインして、叩く強さに応じて切り替えたり、ミックス・バランスを変化させたりも出来る。また、WAVファイルをUSBメモリー経由で取り込む事もできるので、DAWソフトで作り込んだオリジナルの音色を「HandSonic」で鳴らすことも可能。ループ機能もあるので、フレーズごと取り込んでブレイクビーツとして鳴らしたり、その上からさらに演奏をリアルタイムで重ねたり、アイデア次第で様々な楽しみ方が出来るのだ。


 同じパーカッション・シンセサイザーでも、KORGの「WAVEDRUM」はよりフィジカルな、Rolandの「HandSonic」はより打ち込み的な発想で作られた楽器と言えるかもしれない。


■ZOOM ズーム リズムマシン エアロリズムトラック Aero RhythmTrak AR-98
 最後は番外編ということで、ちょっと変わった楽器を紹介。ZOOMのグルーブ・マシン「ARQ Aero RhythmTrak AR-96」は、そのユニークな形状と独創的な操作性によって大きな話題を集めたが、そのシリーズ機として2017年に発売された「AR-48」は、「AR-96」以上に直感的な曲作りとパフォーマンスが可能となった。


 「AR-48」と「AR-96」の両方に共通しているのは、多彩な音源を搭載したベース・ステーションと着脱可能でシーケンスを打ち込めるリング・コントローラーにより構成されていること。本体のオーディオ・インに入力した音や外部のWAVファイルもインストゥルメントとして扱え、それらを使ってシーケンスを組むことも可能だ。


 「AR-96」と比較して気づくのは、ベース・ステーションのボタンやツマミが大幅に増え、液晶ディスプレイも2つになっていること。音色の編集を行うサウンドエリア、ソングやパターンの作成を行うシーケンスエリア、リバーブやディレイなどのエフェクトをかけるエフェクトエリア、そしてシーケンスのレコーディングやプレイバックを行うロケートエリアの4つにパネルが分かれており、「AR-96」のようにページを切り替えなくても直感的に操作ができるようになったのだ。


 逆に、リング・コントローラーは「AR-96」よりもグッとシンプルになった。パッド1個あたりの面積が倍になったため、機動性も上がっている。加速度センサーが内蔵されているため、このリング・コントローラーをベース・ステーションから取り外し、揺すったり、傾けたり、回転させる動作で、ディレイ、リバーブ、フィルターなどのエフェクトをリアルタイムにコントロール。「魅せる楽器」としてステージでも注目を集めること必至だ。


 以上、パーカッション・シンセサイザーを4つ紹介した。叩いて音を出すという、プリミティヴな楽しさと、最新技術によるユニークな操作性を併せ持った楽器は、ユーザーのインスピレーションを大いに刺激してくれるだろう。


(黒田隆憲)