トップへ

奈緒、『あなたの番です』尾野ちゃん役で反響 若手女優は“サイコキャラ”で存在感を強める?

2019年07月28日 08:01  リアルサウンド

リアルサウンド

奈緒『あなたの番です-反撃編-』より(c)日本テレビ

 放送を重ねるごとに盛り上がりを見せる『あなたの番です』(日本テレビ系)で、その“怪演”が話題を呼んでいる女優の奈緒。昨年の朝ドラ『半分、青い。』(NHK総合)での爽やかな好演が印象深かっただけに、今作での彼女の姿には驚きを隠せない。


 2クール連続での放送となっている本作で描かれているのは“交換殺人ゲーム”であり、第2章・反撃編に突入した現在、すでに“姿を消した”キャラクターも多い。その中でも、奈緒が演じる尾野幹葉は生き残り、第1章以上に彼女の取る奇行がエスカレートし、その存在感を増しているというわけだ。


【写真】焼きとうもろこしを笑顔で売る尾野(奈緒)


 奈緒が演じるのは、第1章の主人公であった手塚菜奈(原田知世)の死を悼み、最愛の人の復讐に燃え、第2章から主人公となった手塚翔太(田中圭)に付きまとう、同じマンションのナゾの住人。そしてその奇行とは、翔太が既婚者であることを知りながらも、自分と付き合っているのだと思いこんでみたり。のちのち、フラれたと勝手に解釈しては、今度は脅迫まがいの行動に出る。目をらんらんとさせながら翔太にすり寄り、意味深な言葉を投げかけ、わけの分からない自家製(!?)オイルで強引にマッサージを施したりするなど……その奇行の数々は枚挙にいとまがない。彼女の愛らしい笑顔に対し、初登場時には好感を持った方も多いに違いない。しかしここまでくると、さすがに異常だとしか思えず、もはや“サイコパス”と呼んで差し支えないだろう。こんなキャラクターを、奈緒はじつに自然体で演じている。


 こういった“サイコキャラ”といえば、すでに本作では木村多江が圧倒的な力量を見せてはいるが、彼女がヒステリックなタイプを熱演しているのに対し、奈緒の場合はまたタイプが違う。終始笑顔を絶やさず、感情を宙吊りにしたままの言動からは、心のうちが全く読めない。環境さえ違えば“変わり者”程度の存在なのかもしれないが、連続殺人が起こる現場とあって、“何をしでかすか分からない”人物としては、本作の中でも抜きん出た存在だろう。豪華キャストが名を連ね、みなが演じるキャラクターそれぞれが特異なものばかりだが、奈緒は軽やかにこの居住者の一員となっている。


 ここ近年で強く印象に残る“サイコキャラ”を演じた女優といえば、『カルテット』(2017/TBS系)の吉岡里帆、『ブラック・スキャンダル』(2018/日本テレビ系)での松井玲奈、さらには、『ホリデイラブ』(2018/テレビ朝日)で鬼気迫る演技を披露した松本まりかが思い浮かぶ。松本にいたっては、どんな作品であれ彼女が登場すれば、“必ずや何かしでかすだろう”、そんな思いを抱かずにはいられないほど、先の作品で視聴者を恐怖のどん底に落とし入れた。『あなたの番です』での奈緒の姿も、彼女らと同じように記憶に残り続けるだろう。


 そんな奈緒だが、冒頭で述べたように『半分、青い。』での爽やかさもまた、強く印象に残っている。彼女が演じたのは菜生(なお)という、自身の名と同じ読みの名前の人物で、お転婆なヒロインの幼馴染。人生の酸いも甘いも、苦も楽も共に経験し、親友同士の二人が対照的に成長していく姿も見どころの一つであった。本作が飛躍のきっかけとなり、今年は『のの湯』(BS12)で連ドラ初主演。この秋には『ハルカの陶』という初主演映画の公開や、自身初となる舞台『終わりのない』も控えている。いまがまさに、彼女の力の見せどころである。


 『あなたの番です』でのように、“サイコキャラ”を軽やかに演じられるのは、彼女にとって大きな武器になるだろう。果たして次に何が起こるのか、先の読めない今作で奈緒がさらなるポテンシャルを開花させていくことに期待である。


(折田侑駿)