トップへ

『HiGH&LOW THE WORST』を形作る数々の“つながり” 『EPISODE.O』放送を機に考察

2019年07月27日 18:31  リアルサウンド

リアルサウンド

映画『HiGH&LOW THE WORST』(C)「HiGH&LOW THE WORST」製作委員会 (C)高橋ヒロシ(秋田書店)、HI-AX

 現在放送中の日本テレビ系7月期ドラマ『HiGH&LOW THE WORST EPISODE.O』(日本テレビほか)は、10月に全国公開される映画『HiGH&LOW THE WORST』の前日譚にあたる。


 『HiGH&LOW THE WORST』とは、EXILE TRIBEのメンバーが多数出演する『HiGH&LOW』シリーズのスピンオフ作品であり、髙橋ヒロシ原作・不良漫画の金字塔『クローズ』、そしてその続編『WORST』のクロスオーバー作品だ。


 『HiGH&LOW THE WORST EPISODE.O』は、作品内の時系列的には2016年に公開された『HiGH&LOW THE MOVIE』のクライマックスである、“コンテナ街の戦い”を終えたばかり。“鬼邪高の頂上(てっぺん)”をとるために入学してきた花岡楓士雄(川村壱馬/THE RAMPAGE from EXILE TRIBE)と高城司(吉野北人/THE RAMPAGE from EXILE TRIBE )のふたり。しかし、楓士雄はとある事情で鬼邪高を去ってしまう。一人残された司は、校内で加熱する派閥同士の“頂上”をめぐる争いに参戦することになる。


■『HiGH&LOW』と映画『クローズ』の共通点


 飄々としながらも熱さを秘めている楓士雄、口数は少ないが意志の強さはうかがえる司。“ふたりの不良”を軸に描かれる本作に、既視感を持つ者もいるのではないだろうか。


 漫画『クローズ』の前日譚を描いた実写映画『クローズZERO』『クローズZERO Ⅱ』(2007年・2009年公開。どちらも三池崇史監督)もまた、小栗旬演じる滝谷源治、山田孝之演じる芹沢多摩雄という“ふたりの不良”を中心にして物語が展開していく。このように、『HiGH&LOW THE WORST EPISODE.O』は、『クローズZERO』のスタイルを踏襲しているのである。


 また、2014年に公開された『クローズ EXPLODE』(豊田利晃監督)には、三代目 J SOUL BROTHERSの岩田剛典、ELLY、そして早乙女太一など、『HiGH&LOW』シリーズでおなじみの面々も出演しており、いわば『HiGH&LOW』シリーズと『クローズ』シリーズのミッシングリンク的な立ち位置といえる。


■戦いを彩るテーマソング群


 このふたつのシリーズは、作中での劇中歌の扱いも相似している。


 映画『クローズ』シリーズといえば、原作者の髙橋ヒロシが愛好するTHE STREET BEATS「I WANNA CHANGE」がオープニングを飾り、日常やケンカ、様々なシーンで浅井健一、The Birthday、横道坊主、DOES、MAN WITH A MISSIONなどのロックミュージシャンの楽曲がストーリーに華を添えており、映画公開時にはライブ(『クローズZERO Ⅱ』)やクラブイベント(『クローズEXPLODE』)も開催された。


 『HiGH&LOW』シリーズもやはり、劇中歌とストーリーやキャラクターは強く結びついている。全編MVさながらの美麗な画面が本作の魅力のひとつであり、『HiGH&LOW THE WORST EPISODE.O』の総監督である久保茂昭は、『HiGH&LOW THE MOVIE』公開時に発売されたムック「ローリングストーン日本版スペシャルエディション 完全保存版『HiGH&LOW』の世界 ~EXILE TRIBEの飽くなき挑戦~」にて、「演技に音をはめるのではなく、音に演技をはめるという編集をしていきました。音を感じるカット割りやカメラワークを駆使して、サビで一番気持ちいい瞬間が来る。そこを狙って作りましたね」と語っている。


 これまでのシリーズにおいても、それぞれのチームの楽曲が存在したように、『HiGH&LOW THE WORST EPISODE.O』でも、作中で前田公輝演じる轟洋介のテーマとしてEXILE THE SECOND「Ain’t Afraid To Die」が、神尾楓珠演じる中越と中島健演じる中岡からなる“中・中一派”にはSWAY「ON FIRE」、佐藤流司演じる泰志とうえきやサトシ演じる清史のコンビ“泰・清一派”のテーマとしてDOBERMAN INFINITY「まだ足りねぇ」が使用されており、ほかにも、RAMPAGE from EXILE TRIBEの「SWAG & PRIDE」、「FIRED UP」が、鬼邪高校の“てっぺん争い”をさらに熱くさせている。


■“不良×音楽”映画は永遠


 ここで取り上げたいのは、1982年に公開された石井岳龍(石井聰亙)監督の『爆裂都市 BURST CITY』だ。


 近未来都市「破怒流地区」を舞台に、パンクバンド、アウトロー、ヤクザ、警察が一大バトルを繰り広げ、ザ・ロッカーズや、ザ・ルースターズ、スターリンら、実在のミュージシャンも多数出演しており、作中のライブシーンは鮮烈な印象を残す。『クローズZERO』、『クローズZEROⅡ』も『爆裂都市 BURST CITY』や同監督の『狂い咲きサンダーロード』へのオマージュを感じさせるし、映画通で知られる俳優の斎藤工も、『HiGH&LOW THE RED RAIN』に出演した際のインタビュー(参照:SPICE)で『HiGH&LOW』に同作を思い起こすと語っていたように、この2作品に共通点を見出すものも少なくはないのでは。


 また、『爆裂都市 BURST CITY』でヤクザの黒沼を怪演していた泉谷しげる(俳優としてだけでなく、企画や美術にもクレジットされている)は、『HiGH&LOW THE WORST EPISODE.O』では楓士雄の祖父役として少年たちを見守っているのも、ちょっとした縁を感じるのだ。


 昭和、平成、令和と時代を超えても、“不良×音楽”映画(ドラマ)は愛され続けるのだろう。(藤谷千明)