当たり前ですが、150円で売られているドリンクは、150円を支払って買います。でも、もし値段が決まっていなかったら人はその商品やサービスにどれだけの価値をつけるのでしょう。
僕は"投げ銭制の接骨院"を運営しています。施術や相談の価値は人それぞれ違いますが、一定の基準がない、価値に対する支払いを人はどう考えるのでしょうか。東京・福井に一店舗ずつ同接骨院を開院し、のべ1500人の支払いを見てきた中で、気づいたことをお伝えします。(文:ちばつかさ)
値段のついていないサービスの支払い方法「多めに払う」「少なめ」「周りに合わせる」
僕が行う施術やカウンセリング自体にはコストはありません(もちろん、その技術を身につけるためのコストや、時間コスト、場所代などはあります)。だからこそ、施術やカウンセリングの"価値"は、受け取り側の状況によって大きく変わってきます。
例えば、明日までにどうしても治したい人にとっての施術と、メンテナンスに訪れる人のそれとはまるっきり価値が変わってきます。でも多くの人は意外と"価値"に関してかなり無頓着で「なぜこの金額なのか?」と考えることはありません。
では、値段が決まっていなかったら? 投げ銭の整骨院を3年以上続ける中で、値段が決まっていない時の支払いに3つのパターンがあることがわかりました。
1.自分の中の基準より多く払うパターン
施術やカウンセリングの大体の基準を自分で決め、価値に対して多めに払うというパターン。チップや応援の意味を込めるなど、価値に対してしっかりとお支払する感覚なのでしょう。
2. 自分の中の基準より少なく払うパターン
自分が思っているより少なめに払って、お得感を感じている人もいます。値下げ品を買えて得した、という感覚に近いのかも。
3.周りの支払額や相場を聞いてから金額を決めるパターン
普段の生活の中で僕たちは「150円」と言われた商品を何の疑問を持たずに150円で買いますよね。自分で価格=価値を決めることに慣れていないため、周りの反応を見てから金額を決める、といったところでしょうか。
東京の人は目の前で支払う 一方、福井はいくら払ったか見えないように支払う
値段が決まっていないものへの支払い方法はこの3パターンしかありませんが、東京と福井で多少の違いがみられました。東京は「多く払う」「少なく払う」のいずれかが多く、ほとんどの人が手渡しでお金を渡します。
対して、福井県では必ずと言っていいほど「みなさんどれくらいお支払するのですか?」と聞きます。また、手渡しではなく、用意している支払い箱(支払額がわからないように見えないところに箱を置いています)にお金を入れる人が圧倒的に多いのです。
それは、自分で決めるか、他人を気にするのかの違い。どちらがいいとか悪いとかではなく、価値に対する考え方やお金に対する考え方、支払いかたにもこうした地域性がでることに驚きました。福井は集落があるなど"均一性"を求める文化があるので、それが関係しているのかもしれません。
自分基準で価値を考えようとしても、インターネットが普及し、情報過多ともいえる昨今では、どうしても周りの声に自分を左右されてしまいがちです。しかし、「自分がこう感じたのだから」「自分はいまこの状況だから」をしっかり把握できれば、目の前の商品やサービスに対する"自分だけの価値"がみえてきます。
もちろん口コミなどに触れて安心することも大切ですが、そこに偏りすぎると自分自身を失うことでもあります。他者との関わりのなかで自分をどう位置づけていくかで、目の前に広がる世界も価値が変わってくるでしょう。
ちなみに施術は大体1回60~90分。東京・福井の支払相場を書くと僕が基準を作ってしまうことになるので書きませんが、投げ銭で頂いた額の最低額は300円(でものちに3000円持ってきてくれました)、最高額は10万円です。
【筆者プロフィール】ちばつかさ
柔道整復師、メンタルケア心理士、元プロ野球独立リーガー。東京と福井で投げ銭制の接骨院「小道のほぐし接骨院」を経営しのべ10万人近くの体と心と向き合う。野球経験を活かし都内で"野球を教えない"野球レッスンも運営。【公式サイト】