ビジネスメディア「INSIGHT NOW!」に7月21日に掲載された、大阪芸術大学の純丘曜彰教授のコラム「終わりなき日常の終わり:京アニ放火事件の土壌」が批判を浴びている。京都アニメーションの事件を受け、アニメ業界全体に働き方や作品作りの是非を問うものだったが、京都アニを始めとするアニメ制作会社について、
「夢の作り手と買い手。そこに一線があるうちはいい。だが、彼らがいつまでもおとなしく夢の買い手のままの立場でいてくれる、などと思うのは、作り手の傲慢な思い上がりだろう」
「ジュブナイルアニメが、いくらファンが付き、いくらそれで経営が安定するとしても、偽の夢(絶対に誰も入れない隔絶された世界)を売って弱者や敗者を時間的に搾取し続け、自分たち自身もまたその夢の中毒に染まるなどというのは、麻薬の売人以下だ」
などと表現していた。
キャリコネニュース編集部が確認したところ、記事は24日に読めなくなっていた。その後、内容を大幅に削減した上で「終わりなき日常の終わり」のタイトルで再掲され、末尾に「この記事は、大阪芸術大学の意見・見解を代表・代弁するものではありません」と追記されていたが、25日夕方には、記事は再度削除され読めなくなっていた。
作品は「似たり寄ったりの繰り返し」などと批判
削除された記事は元々、4000字ほどあった。京アニの事件を「あまりに痛ましい」としながらも、「アイドルやアニメは、そのマーケットがクリティカルな連中であるという自覚に欠けている」と指摘するなど、事件の容疑者の肩を持つような表現もあった。
京アニの主力作品が学園物になったのは『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』の制作に携わったことがきっかけという見方を示した。また、次回作の公開に追われ続けてきた同社の作品について「内容が似たり寄ったりの繰り返し」と評した上、
「そもそも創立から40年、経営者がずっと同じというのも、ある意味、呪われた夢のようだ。天性の善人とはいえ、社長の姿は『BD』(編注:ビューティフル・ドリーマー)の『夢邪鬼』と重なる。そして、そうであれば、いつか『獏』がやってきて、夢を喰い潰すのは必然だった」
と表現していた。
最後の段落にある「この業界自体、作り手たち自身がいいかげん夢から覚め、ガキの学園祭の前日のような粗製濫造、間に合わせの自転車操業と決別する必要がある」から推察するに、全体としては京アニの放火事件を下地に、業界が抱える問題を指摘した上で、業界のあり方に疑問を投げかけたかったものと思われる。
しかし、放火事件の犠牲者達が、容疑者に襲われるだけの理由があったとも読める内容や、犯行に及んだ容疑者の肩を持つような表現が多く、大きな批判につながった。
「記事表現の管理とその後の対応、行き届かなかった」
大阪芸大の卒業生でイラストレーターの中村佑介さんは24日、自身のツイッターで
「思うことは自由ですが、いま口に出すべきことではありません。大阪芸大卒業生として恥ずかしいです」
と記事内容を批判した。記事を掲載していたINSIGHT NOW!は25日夕方までに、サイトトップに
「今回一部の記事に不適切な表現があったことをお詫びいたします。運営事務局として、記事表現の管理とその後の対応に対して、行き届かなかったことを重ねてお詫び申し上げ、改善を図ってまいります」
という声明を掲載している。直接言及はしていないものの、当該の記事を指すものと見られる。