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深田恭子との6歳差親子も違和感なし! 小沢真珠、『ルパンの娘』母親役で真骨頂を発揮

2019年07月25日 10:01  リアルサウンド

リアルサウンド

『ルパンの娘』(c)フジテレビ

 深田恭子がセクシーな泥棒役を演じて話題の連続ドラマ『ルパンの娘』(フジテレビ系)。その中で、深田恭子と並んでその美魔女ぶりで注目を集めているのが小沢真珠だ。迫力のある悪女役を得意としている小沢だが、今作ではその高飛車なイメージを逆手に利用した泥棒一家の頼もしい母親役を熱演し、『牡丹と薔薇』(東海テレビ・フジテレビ系)以来の当たり役という声も多く、女優・小沢真珠の魅力を十二分に発揮している。


参考:『ミッション:インポッシブル』のパロディ満載 『ルパンの娘』に仕組まれた細かい遊び心


 小沢と言えば、やはり2004年に放送された昼ドラ『牡丹と薔薇』で、「役立たずのブタ!」などと罵るエキセントリックな悪女を演じた香世役をイメージする人が多いと思われるが、デビューの頃からすでに今の美しい顔立ちが完成されていた。女優として世間に知られるきっかけとなった月9ドラマ『君といた夏』(1994年・フジテレビ系)での生花チェーン社長の娘役など、当時はまさに“箱入り娘”と言える清楚な少女役が多かったように思う。ほかにも連続テレビ小説『甘辛しゃん』(1997年・NHK総合)での酒蔵の女職人だったり、映画『ろくでなしBLUES』(1996年)のヒロインなど、共通しているのが芯の強い女性という役柄で、演技以上にその存在感がドラマの絶妙なスパイスとなり、時代劇や2時間サスペンスドラマでのバイプレイヤーとして重宝されていく。


 そんな中、『牡丹と薔薇』で、大河内奈々子との愛と憎しみに溢れるドロドロの修羅場を怪演し大ブレイク。東海テレビ制作の昼ドラは、男女関係の愛憎劇を大人が楽しむ作品が多く、特に『牡丹と薔薇』の脚本家・中島丈博は同ドラマ枠で以前『真珠夫人』もヒットさせていただけに、かつての大映ドラマのような過剰な演出と尋常じゃないハイテンションを真剣に行う演出は、昼ドラ視聴者層を虜にしていく。「役立たずのブタ!」など現実ではありえないセリフの連発は、清楚感ある小沢の容姿で言うから面白く、小沢のキャラが役柄と見事に調和していたのが人気の秘訣だった。女優としての殻を破りブレイクという見方は当然あるが、それまでの地道に積んで来たキャリアの賜物とも言える。この作品で過激な悪女役が定着し、小沢真珠という女優としての一つのブランドが確立、以降も高飛車な役柄を多く演じていく。


 さて『ルパンの娘』での小沢は、代々泥棒を生業としたLの一族であり、深田恭子演じる三雲華の母親、悦子役を演じている。華の婚約相手である桜庭和馬(瀬戸康史)が警察官一族という、ロミオとジュリエット状態の禁断の恋を描き、勧善懲悪的に盗みを計る物語は、ルパンと言うより『キャッツ・アイ』に近く、『翔んで埼玉』『テルマエ・ロマエ』の脚本・監督・プロデューサーが集まっただけに、コメディー色の強い作品だ。泥棒一家とは言え、上流家庭の雰囲気が漂うセレブな妻という小沢の真骨頂と言える役柄に加え、40代に突入し子供もいる小沢に母親役が似合うようになったというのも大きい。ただ作中での年齢設定は実年齢より13歳も歳上の55歳で、実際には6歳しか離れていない深田との母娘役での共演は一見無理があると思われがちだが、深田の可愛らしさを、対照的なキャラの小沢が引き立て、その妖艶なオーラと高飛車な演技で違和感なく母娘に見せてくるから面白い。


 また、小沢は今まで培ってきた悪女役イメージの貯金があるだけに、悪人から物を盗む泥棒役は、今までの敵キャラが味方になるような少年ジャンプ的展開のようで、実に頼もしく、『牡丹と薔薇』を知っている人には、どこか嬉しい気持ちにさえさせる。そして何より、コント的な展開を演じる小沢が「演じるのは楽しい役ですよ。ストレス発散になりますから(笑)」とドラマの公式インタビューで語るように、実にイキイキと楽しそうな演技が印象的。娘に「やれやれ」と思わせるのも、小沢の役者としての使い方を熟知した演出だと感じる。


 『ルパンの娘』の今後の見どころと言えば、母娘にとって最大の敵とも言える、マルシア演じる和馬の母親・美佐子の存在。公式インタビューで小沢は「今までも女性同士のバトルシーンはたくさん演じて来ました。でも、今回は良い意味で新しいバトルシーンに挑戦している感じです」と語っている。最初から泥棒だと見透かしているかのように、美佐子がクールに悦子を挑発するバチバチ感は、素のようなマルシアの怖さが全面に出ていて、小沢が今まで経験してきた相手とは次元が違う静かな怖さがある。ただ、そんな美佐子の挑発に対し、悦子も余裕を見せる、冷戦状態でのマウントの取り合いが実にスリリングで、女優としての腕の見せ所に。また、華にとっては、かつての昼ドラの温泉旅館ものを彷彿とさせる嫁姑バトルとも言えるので、深田・小沢連合軍がマルシアをどう懐柔していくのか、物語の展開に要注目である。


 遠藤憲一や松重豊など、かつては悪役を得意としていた名バイプレイヤーたちが、その揺り返しと実力で今ではすっかりいい人キャラになったように、『ルパンの娘』の母親役がハマリ役になったことで、小沢もみんなから愛される大人の女優になりそうな予感がする。


(文=本 手)