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絶妙だったスペック3投入時期。フランスGPからオーストリアGPの1週間に何があったのか?【ホンダF1の技術的勝因】

2019年07月24日 17:31  AUTOSPORT web

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2019年のホンダF1のパワーユニットは未公開だが、写真の昨年のRA618Hからターボチャージャーユニット(TCU)は大幅に改良。TCUはIHIとホンダが共同開発。
7月25日発売のF1速報緊急増刊「Honda F1優勝の軌跡」では、オーストリアGPにおけるレッドブル・ホンダの勝因と技術的背景を徹底検証している。なかでも興味深いのがパワーユニットHRD Sakura技術者のコメントである。スペック3を投入したフランスGPでは結果が出せず、なぜそのわずか1週間後のオーストリアGPでは見違えるようなパフォーマンスを発揮できたのだろうか?

「高吸気温に対するマージンが大きすぎました」と浅木泰昭F1パワーユニット開発責任者はこれを説明した。(フランスGPでは)本当はもっと攻められるのに、過剰にパワーユニットを保護してしまったのだ。

 オーストリアでは外気温33度を超えたが、1週間前のフランスも同様に高温に見舞われたことが、ホンダにとって幸いした。事前に最新スペックの高温対策を済ませておくことができたからだ。そうでなければ、メルセデスのように失速していたかもしれない。浅木氏は次のように説明した。

「フランスは想定以上の吸気温でした。そのあたりのデータをちゃんと使ったことがなかったので見直し、適切な信頼性とパワーのバランスにして、オーストリアに臨みました。高吸気温だからといって、あまり無残なことにならないように、です。ただ、修正したからといって、勝てるとは思っていませんでした。チャンスがあると思っていたモナコで勝てなくて、オーストリアのようなパワーサーキットで勝てると思う方がおかしい」

 オーストリアGPは高温に加え、サーキット立地の標高が高いため気圧は低く、ターボにとってはさらに厳しい条件だった。これを思えば、ターボチャージャーの効率を上げたスペック3の投入時期は絶妙だった。

「標高の高いサーキットでのスペック3投入が、多少有利に働いた面はあると思います」と、ターボ技術領域のエキスパートである乙部隆志氏は言う。

「標高が高くて気圧の低いサーキットでは、エンジンが要求する空気量と圧力を得るために、ターボは余計に仕事をしなければいけません。高地に限らず平地でも取り分が出るように頑張った結果ではあるのですが、スペック3は標高が高く気圧が低い条件でも性能向上を図ることができたと思っています」

 HRD Sakuraのミッションルーム(サーキットとリアルタイム接続してパワーユニットのデータを共有。現場をバックアップする)で戦況を見守っていた深尾洋一郎氏も、高地の厳しさを説明する。

「高地は空気が薄い分、冷えにくいのでクーリングが厳しくなります。それとターボ。空気が薄い分、同じ空気流量をエンジンに放り込もうとすると、ターボがたくさんの仕事をしないといけない。効率が低いコンプレッサーだと、MGU-Hの回生量が落ちてしまいます。スペック3では、ターボの効率が高いところで運転できるので、さほど心配せずオペレーションできました」

 ターボチャージャーの効率を向上させたスペック3を投入したタイミング。異常ともいえる高温が2戦続いたこと。そして、標高が高く、気圧が低い----。オーストリアはホンダのパワーユニットが真価を発揮する条件が揃っていたように見える(Text/Kota Sera)。

【企画内容】
再現密着レポート2019年オーストリアGP
「勝因」徹底検証。「一撃必勝」の法則を解く。
Honda F1首脳陣独占インタビュー
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73勝への足跡 ほか 

■F1速報緊急増刊 Honda F1優勝の軌跡