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杏が語る『偽装不倫』の“こじらせ女子”鐘子への共感 「自分が好きなものを追求していくのが好き」

2019年07月24日 06:01  リアルサウンド

リアルサウンド

杏(撮影=林直幸)

 「結婚している」という嘘から始まった恋を描く『偽装不倫』(日本テレビ系)。本作で4年ぶりにドラマ主演となった杏と、恋愛ドラマ初挑戦となる宮沢氷魚が、それぞれ秘密を抱えながらも互いを大切に思い、またそれがゆえに苦悩する姿が描かれる。原作は『東京タラレバ娘』などの代表作を持つ東村アキコの同名漫画作品。東村らしい視点で、アラサー女子の、今の時代ならではの恋愛事情と、周囲の人々の恋愛観・結婚観などがコメディタッチで綴られていく。


 杏は以前から東村アキコ作品のファンだったそうで、主人公・鐘子はまさにハマり役。クランクインから2カ月ほどがたった今、撮影の裏側や、“こじらせ女子”鐘子を演じての感想、自身と共通する部分など語ってもらった。


■「“もうちょっと頑張れ!”という気持ちです(笑)」


ーー久しぶりのドラマ出演ですが、現場ではどのように過ごしていますか?


杏:私がなかなか時間の自由がきかないので、みんなで食事に行ったりができず、撮影もわりとスムーズに進んでいくので、待ち時間すらすごく少ない環境です。オフにコミュニケーションはとる時間がない反面、そういう環境の中でみんなで力をあわせていこうという雰囲気になっているのかなと思います。


ーー鐘子を演じてみていかがですか?


杏:今クランクインから2カ月ほどがたち(編集部注:取材は7月半ばに実施)、中盤の撮影をしています。やっぱり、丈(宮沢氷魚)に嘘をついていることの悩みが深くなっていて、そういったシーンが多くなってきました。1~2話の頃は明るく楽しいデートがあって、もちろん今も会って嬉しいというシーンもあるのですが、これからどうなっていくんだろうなと。鐘子は本当のことを言おうか言わないか悩んでいるので、「もうちょっと頑張れ!」という気持ちです(笑)。


ーー鐘子は応援したくなる女性ですね。


杏:応援から、最近は“激励”に変わってきています(笑)。


ーー以前から東村アキコさんの漫画のファンだったということですが、どこに惹かれていたんでしょうか?


杏:東村先生の漫画は作品によって様々な題材を取り扱っていると思います。時代も作品ごとに違うし、主人公の女性も東村先生自身を投影していたり、現代の女性を切り取っていたり、子どもが主人公の時もあって、どれも着点眼が面白いなと。あと、スピード感がすごいですよね。ギャグのスピード感もそうですし、話の運びもどんどん先に進んでいくので、飽きさせないで読者を引っ張ってくれる。漫画の『偽装不倫』も毎週更新されるのを、キャスト・スタッフ全員で読んでいるので、クラスメイトと「今週の見た!?」と盛り上がっている感覚を味わっています。


ーー漫画を読んでいた当初は鐘子をどう捉えていましたか?


杏:「言おうとしてもいろんなタイミングが重なって言えない」というのがだんだんと積み重なって様式美みたいだなと(笑)。ちゃんと言っていたらどうなっていたんだろう? と毎回考えてしまいますね。


■「自分の中で完結する喜びを持っている」


ーー「言おうとしても言えない」という鐘子の心を杏さんなりに分析すると?


杏:「お付き合いをしよう」という話にはなっていないのに、もうデートしたりキスしたり長い時間を一緒に過ごしていて。「もしかしたら遊びなのかも、本気じゃないのかも」と悩むというのは、想像するとかなり辛いだろうなと。好きになれば好きになるほど今の関係が壊れるのが怖いというのもわかるし、早く本当の自分としてぶつかってみるのもいいのになと思いますね。


ーー鐘子に共感する部分はありますか?


杏:自分に自信がないという気持ちはわかるけど、既婚者を偽るというレベルの嘘はハードル高いなぁと(笑)。自分でも意図した嘘じゃないし、根っからの嘘つきではないのですごく悩ましいですよね。


ーー姉の葉子役の仲間由紀恵さんは、杏さんのことを「思わず姉としていじめたくなっちゃう」とおっしゃっていました。


杏:私自身は男兄弟で兄がいるんですけど、たぶん女兄弟だったらこれくらい遠慮がないのかなと。葉子とは5つくらい年が違うので一方的に搾取されたり、やられっぱなし(笑)。「絶対勝てない」というセリフもあるんですが、鐘子は小さい頃からこうやって利用されてきたのかなとか、ドライで遠慮のないやりとりがリアルだなと思います。一度とあるシーンで監督が「背中をさする」みたいな動きを入れたらどうかと提案があったんですけど、私も仲間さんも「たぶんこの姉妹はしませんね。もっとドライですよ」って(笑)。どんどん姉妹の関係性は構築されてきていて、会話のシーンが多いので、一緒に練習させていただいたりして絆が深まっているような気がしています。


ーー「オタク心を理解できる女優さん」とも。


杏:東村先生にも同じことを言われました(笑)。「杏ちゃんはこじらせ系女子を絶対に表現できるよ! たぶん持ってるから!」と。初めて会う前からメールでのやりとりをしていたのですが、文章のやりとりだけでも、そうおっしゃっていました(笑)。お二人からの褒め言葉だと受け取っています。


ーーご自身としても思い当たる部分があるのでしょうか。


杏:わかるような気もします。そう言っていただけて嬉しかったですし。あまり自分をキャラ付けするのも変ですが、自分が好きなものを追求していくのが好きで、それをあまり人と共有したいとは思わなかったり。共有できたらできたで嬉しいのですが、自分の中で完結する喜びを持っているのかなと思います。(取材・文=若田悠希)