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the HIATUS、フジファブ、10-FEET、ネクライトーキー、Ivy……ロックバンドの進化を感じる新作

2019年07月23日 19:31  リアルサウンド

リアルサウンド

the HIATUS『Our Secret Spot』

 ヒップホップ、EDM、R&Bに押され、世界的なマーケットではすっかり鳴りを潜めているロックだが、ここ日本では、斬新な表現を続けているバンドがしっかりと存在感を示している。そこで今回は、ロックバンドの進化を予感させる、この夏一押しの新作を紹介。バンドというスタイルの新たな可能性を感じ取ってほしい。


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 the HIATUSがリリースする5thアルバム『Hands Of Gravity』(2016年)以来、約3年ぶりとなるオリジナルアルバム『Our Secret Spot』。2009年の活動開始からオルタナティブ、エレクトロニカ、プログレ、ヘビィロックなどのテイストを織り交ぜ、(矛盾した言い方になるが)“ジャンルを超越したロックミュージック”と呼ぶべき独創性を追求してきた彼ら。本作では、ネオソウル、オルタナR&Bなどのエッセンスを取り入れ、自らの音楽性をさらに前進させている。特に興味深いのは中音域、低音域の作り方で、たとえば現在のヒップホップを好んで聴いているリスナーにとっても一聴して“いい音!”と感じられるサウンドを体現している。アルバム全体を覆う“ロックバンドの形式を持ったまま、音楽自体をどこまでも進化させる”という強い意志に心を打たれてしまう。


 デビュー15周年を迎えたフジファブリックのニューシングルの表題曲「ゴールデンタイム」(『BORUTO-ボルト- NARUTO NEXT GENERATIONS』オープニングテーマ)は、加藤慎一(Ba)の作詞・作曲によるナンバー。ニューウェイブ、ギターロック、レゲエなどが混ざり合うアレンジ、まるでS字カーブを疾走するようなトリッキーかつポップなメロディ、〈挙げろ 行き場をなくした拳を〉という力強いフレーズがぶつかり合うこの曲は、意外性に溢れたアイデアを織り込みながらも、幅広い層のリスナーが聴いた瞬間から楽しめるアッパーチューンに仕上がっている。一筋縄ではいかないセンスをポップに響かせる技は、ここにきてさらに向上しているようだ。ギター、ベース、キーボードの音色とフレーズからメンバーの個性がはっきり感じられることもこの曲の魅力だろう。


 おしゃれな感じのソウル系ポップスが向こうのほうから聴こえてきたな……と思ったら、突如として激しく歪みまくったギターとベース、高速のドラムが耳に突き刺さり、そのまま体ごと持っていかれる。このまま最後まで突き進むかと思いきや、サビではエレクトロ的なエフェクトが施され、フワッと浮遊するような気持ち良さを演出。そして再び轟音の爆裂サウンドに戻るーー約2年ぶり、通算18枚目となる10-FEETのニューシングル『ハローフィクサー』表題曲は、予想不可能な展開とジャンルレスなテイスト、それを力づくで一体化させる演奏技術をダイレクトに体感できる楽曲となった。90年代のミクスチャーロックを背景に登場した彼らは、結成23年を超えても(自らのスタイルを維持したまま)刺激的な進化を続けているようだ。


 『バズリズム02』(日本テレビ系)の「コレはバズるぞ」2019年版で3位に入るなど、ブレイク候補の筆頭に挙げられているネクライトーキー。新作ミニアルバム『MEMORIES』は、ライブの定番曲を音源化した作品。バンドの中心である朝日(Gt)がボカロP・石風呂として発表した「ゆるふわ樹海ガール」「夕暮れ先生」「きらいな人」などのバンドバージョンが収録され、オルタナ、ギターロック、フォークなどが混然一体となった音楽性、卓越した演奏テクニックに貫かれたサウンド、そして、もっさ(Gt/Vo)のフリーキーでポップな歌声など、このバンドの独創性を生々しい音像とともに体感できる。ロックとボカロを融合させた音楽の、もっとも先鋭的なスタイルがここにある。


 マスロック、オルタナティブロックなどをルーツに持つ、緊張感と鋭さを共存させたバンドサウンド、スリリングな手触りに溢れたライブパフォーマンスによって躍進を続けるIvy to Fraudulent Game(以下、Ivy)。初のアニメタイアップ曲(TVアニメ「トライナイツ」エンディングテーマ)となった3rdシングル『模様』は、メインソングライターの福島由也(Dr)ではなく、ボーカリストの寺口宣明(Gt/Vo)が作詞・作曲を担当。ドラマティックにして叙情的なメロディライン、歌をしっかりと支えるアンサンブル、〈重ねた傷も あの痛みさえも 僕にとっての模様になる〉という歌詞が共存するバラードナンバーは、明らかにIvyの新機軸だが、強いエモーションが込められたボーカルと演奏によって、“これも自分たちの表現なのだ”という確かな説得力が宿っている。(森朋之)