WEC世界耐久選手権の2019/2020年シーズン、LMP2クラスにフル参戦を果たすことになった山下健太。7月23~24日の公式テスト“プロローグ”を控え、テスト開催地のスペイン・バルセロナに姿を見せた山下に、WEC参戦の経緯や将来的な展望について聞いた。
早めにバルセロナ入りし、20日に決勝が行なわれたELMSヨーロピアン・ル・マン・シリーズも現地で視察したという山下。WECのテスト前日となる月曜は猛暑のなか、マシンのシート合わせやチームメイトとのコース下見などを行なった。
WEC参戦の話が最初にトヨタからもたらされたのは、今年のスーパーGT開幕戦岡山のときだったという。
「トヨタがやっているトップのカテゴリーだったので、声をかけてもらえるというのは素直にうれしかったです」と山下。その時点ではチームなどは決まっていなかったが、下準備は進めていた。
「ドライビングは問題ないと思っていましたが、英語でのコミュニケーションについてはいろんな人に話を聞いて、いろんな手段を試して……と準備してきました」
今年のル・マン24時間でトヨタに帯同していた山下は、本誌の取材に対し「将来に向けた勉強の意味合いが強い」と語っていたが、この時すでにWEC参戦自体は決まっていたことになる。
チームがハイクラス・レーシングと決まったのは、ル・マンを視察したあと。直後の全日本スーパーフォーミュラ選手権第3戦SUGO戦の際にレーシングスーツのサイズを、自分で採寸したという。
22日夕方に徒歩で行なったコース1周の下見に帯同したところ、チームメイトとの英語でのコミュニケーションもとくに問題なくこなしていたように見えたが、「まだまだ全然足りないです」と山下は言う。
将来的には、トヨタが参戦するWECのトップカテゴリーへのステップアップを目指す意向は、当然山下自身にもある。
「でもそれは自分次第。今回こうやって乗らせてもらえて、速さもそうですが、コミュニケーションも(トヨタに)みられると思うので、そこ次第じゃないですかね」
「これまでもカテゴリーが移ったり初めてのコースだったりしてもドライビングはあまり問題なかったので、そこは今回も心配していないです」
■“先輩”小林可夢偉もチームとのコミュニケーションの重要性を唱える
チームのピット前で山下に話を聞いていたところ、“兄貴分”とも言える小林可夢偉が山下の様子を見にやってきた。バルセロナのコースの印象について山下に聞くと、「ゲームでやったことあるやろ?」とツッコミを入れる可夢偉。
「すっげー速いクルマでやりました」と山下が答えれば、「すごいグリップするやつやろ? それ、ちょっと違うんだよな……」と可夢偉。
可夢偉も「まずは英語とコミュニケーションですよね。日本では当たり前にできる、“速さを作るまでの過程”を、海外でも作れるかが大事」と山下の挑戦を語る。
「このチームとしゃべったところ、彼(山下)のポジションをすごい理解してくれている」
「ドライなチームではなく、すごく彼のことを思ってやってくれている。彼が速いということは、もう分かっているので」と、チーム環境については“先輩”可夢偉も太鼓判を押すだけに、いかにこのカテゴリーでチームとともに耐久レースを「組み立てて」いくかが、山下の将来を決することとなりそうだ。