7月22日、WEC世界耐久選手権は翌日からスペインのカタロニア・サーキットで行われる2019/2020年“シーズン8”の公式テストに先立ち、最高峰カテゴリーLMP1クラスに課せられるEoT(イクイバレンス・オブ・テクノロジー=技術の均衡)を進化させたと発表した。今季のEoTには“サクセスハンディキャップ”と呼ばれる、新たな調整が加わることになる。
EoTは車両ごと、パワートレインごとに異なるテクノロジーを用いるLMP1カーの性能を近づけさせる目的で、2014年から従来のBoP(バランス・オブ・パフォーマンス)に代わって採用されている性能調整システムのひとつだ。
メーカーワークスチームがトヨタのみとなった2018/19年“スーパーシーズン”は、ハイブリッド車とプライベーターが走らせるノンハイブリッド車の間にあまりにも大きな性能差が表れたことから、BoPに近い運用が執られた同システムだが、7月23~24日に行われるWECプロローグで早くも始動する2019/20年シーズンでもその性質は変わらず。
今回、シリーズからアナウンスされた進化版EoTはハイブリッドマシンと非ハイブリッドカーの競争を促進するという名目の下、むしろBoP的な色が濃くなったと言えるだろう。
■トヨタに14kgの重量増。燃費の優位性も消滅
変更点は4つ。まずは車両最低重量だが、昨シーズン8戦7勝と他を圧倒したトヨタはスーパーシーズン第7戦スパと比較して14kg重い918kgが今季のミニマムウエイトに設定された。
この数字は第8戦ル・マン比プラス30kg、2018/19年シーズン開始当時の最低重量と比較すると40kgのウエイト増となっていることを示す。一方、自然吸気エンジンを用いるレベリオン・レーシングは824kg、ターボエンジンを搭載したジネッタを走らせるチームLNTは833kgで、いずれも第7戦スパと同じ重量が維持された。
ふたつめの変更ポイントは燃料タンク容量だ。WECスーパーシーズンでは、トヨタがプライベーターよりも1スティントあたり1~2ラップ多く周回できていた。しかし、新シーズンで適用されるEoTでは燃料タンク容量が調整され、スティントあたりのラップ数が2種類の車両間で揃えられる。
また、燃料給油時間についても調整が行われ、ハイブリッド車の給油時間が毎回1秒伸ばされることに。これはモーター駆動で瞬時に発進可能なトヨタTS050ハイブリッドに対して、ピット作業終了のタイミングから発進までにわずかながらタイムを失う、ノンハイブリッド車のロスタイムを補う役割を果たすものであると説明されている。
前述3つの変更に加えて、2019/20年版EoTには新たに導入されるサクセスハンディキャップが導入される予定だ。
このシステムは各車のチャンピオンシップポイントに応じて毎戦、レース前に調整が行われることから、LMP1クラス全体のパフォーマンスに影響を与えるものになるという。なお、シーズン最終戦のル・マン24時間ではこのシステムが適用外になるとものと考えられている。
新しいEoTについてのこれらの変更ポイントは、トヨタとレベリオン、そしてチームLNTの全3チームによってすでに合意がなされており、8月30日~9月1日に行われるシーズン8開幕戦シルバーストン4時間レースから実際に適用される予定だ。