トップへ

米国議会がFacebookの仮想通貨Libraに危機感 「我々の信頼に値しない」

2019年07月22日 07:11  リアルサウンド

リアルサウンド

写真

 Facebookは、新しい仮想通貨Libraをローンチする計画を発表した。しかし、既存の金融機関の在り方を変えてしまう可能性があり、米国政府は危機感を募らせている。


(参考:マイクロソフト創業者ビル・ゲイツ、「政府が大手テック企業を規制すべき」との見解示す


 そしてFacebookのブロックチェーン事業を担当するデヴィッド・マーカス氏が、7月16日、米国上院銀行委員会の公聴会に出席し、翌17日は米国下院金融サービス委員会の公聴会に出席するに至った。


・Libra実験は「狂気の沙汰」なのか?
 シェロッド・ブラウン米上院議員は「相次ぐスキャンダルで、我々の信頼に値しない。人々の銀行口座で実験をさせるなど、狂気の沙汰だ」と公言し、不快感を露わにしている。


 マルタ・マクサリー議員は「信用できません。自分の家(不祥事)を整理するかわりに、新規ビジネスモデルをローンチするんですか」と不満を述べ、デヴィッド・マーカス氏は、「重要な法規制の対応がなされるまで、Libraを発行することはない」と約束したが、開発は引き続き進めていくことを明らかにした。


 『Forbes』は「多くの者が、ザッカーバーグの話を疑っており、会社の拡大と支配を増大させるためのパワープレイだとみている。もしFacebookユーザーが、Libraで金銭的なやり取りをするようになると、米国や他の国の通貨や金融システムを危うくする。強大な企業1社が、お金の流れを支配し、米ドルは深刻な影響を受けるだろう。政府は危機感をいだいている」と記している(参考:https://www.forbes.com/sites/jackkelly/2019/07/16/facebooks-libra-comes-under-fire-in-senate-hearing-heres-why-congress-is-terrified/#6f64b52736b4)。


・根底にあるのはFacebookへの“根強い不信感”
 『Mashable』は、Cambridge Analyticaスキャンダルといったデータプライバシーの問題、フェイクニュース、2016年大統領選の外国の干渉、ミャンマーの集団虐殺に果たした役割等に触れ、Facebookの危険性を指摘(参考:https://mashable.com/article/facebook-libra-hearing-congress/?europe=true)。とくにユーザーに無断でデータを販売したCambridge Analyticaスキャンダルでは、米国連邦取引委員会(FTC)から50億米ドルもの制裁金が科されることになったことを振り返った(参考:https://eu.usatoday.com/story/money/2019/07/15/facebook-fined-5-billion-ftc-cambridge-analytica/39687137/)。


 このことに対し、デヴィッド・マーカス氏は、Libraの統制は、Facebookではなく、非営利団体Libra Associationにより行なわれると強調している。


・G7でも「世界的な金融政策に影響を与える」と判断
 仮想通貨は、国際的な支払いでも手数料が抑えられるという利便性は確かにある。ビットコインなど仮想通貨の基幹技術として注目されるブロックチェーンをLibraも使用しているが、細部では異なる方式を採用している。ブロックチェーンの特徴は、分散型台帳技術だが、Libraは一部の人が記録管理を行う中央集権型構造だ。


 このことに対し、『CNBC』は「多くの専門家は、Libraを仮想通貨と呼べるか疑問視している」と報じている(参考:https://www.cnbc.com/2019/07/19/bitcoin-vs-libra-how-facebooks-cryptocurrency-is-different.html)


 主要7カ国(G7)の財務相・中央銀行総裁会議でも「Libraは国家の通貨主権や世界的な金融政策に影響を与える」との見解で一致。マネーロンダリング、テロ資金、消費者とデータ管理といった課題も確認した。


 近年、ビットコインやイーサリアム等、あまたの仮想通貨が興隆している。デヴィッド・マーカス氏も、元々PayPalの出身だ。にもかかわらず、何故アメリカや世界各国の政府がLibraにこれだけ大きな拒否反応を示しているのだろうか。


 それは先述の通り、Facebookが危うさと規模の大きさの両方を兼ね備えている企業だからだろう。不祥事で伸び悩んではいるものの、最新の月間アクティブユーザーは、約23億7500万人で、ソーシャルメディアとしては1位と影響力の大きなプラットフォームであり続けている(参考:https://www.statista.com/statistics/272014/global-social-networks-ranked-by-number-of-users/)。


 これは、世界最大の人口14億人の中国を遥かに凌ぐ数であり、これだけの規模で流通する通貨が出来たら、各国の中央銀行が管理する法定通貨の地位は落ちることになるかもしれない。それだけではなく一企業が、地球政府の如く化けることを各国の政府関係者は恐れているのではないだろうか。


 CEOマーク・ザッカ―バーグ氏は、Libraについて、スイスの法規制の下で開発されるとしている。VisaやUberが既に出資しており、引くに引けないFacebookと各国政府の駆け引きは今後も続くだろう。


(Nagata Tombo)