20日、アイオワ・スピードウェイで開催されたインディカー・シリーズ第12戦。雷雨によりスタート時間が大幅に遅れた決勝レースをジョセフ・ニューガーデン(チーム・ペンスキー)が制し、今季4勝目を挙げた。
佐藤琢磨(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)は、上位を争うもレース中盤に接触。マシンにダメージを負いリタイアとなった。
雨でスタートが4時間以上も遅れ、まだ陽のあるうちの夕方に行われるはずだったレースが完全なるナイトレースになった。
前日の日中、暑い時間帯にプラクティスも予選も行われたため、低気温、低路面温度というコンディションの走行データは誰にもない。このようにチームのエンジニアリング能力が試されるレースになると、俄然強さを発揮するのがチーム・ペンスキーだ。
しかし、今回の彼らは擁する3人の元チャンピオンのうち、涼しいコンディションでも速さをキープできたのはジョセフ・ニューガーデンだけだった。
2016年、まだエド・カーペンター・レーシングで走っていたニューガーデンが、アイオワの8分の7マイルオーバルで見事な勝利を記録した。テキサスでのレースで手首を骨折していながら、その痛みを乗り越えて勝利を記録した。
そのガッツ溢れる走りが、彼のチーム・ペンスキー入りに繋がったとさえ言われている。
ペンスキー入り初年度の2017年にチャンピオンとなった彼は、チーム入りして3年目の今シーズン、自身二度目となるタイトル獲得へと邁進している。
そのライバルとなるのはチームメイトのシモン・パジェノー、F1経験者のアレクサンダー・ロッシ(アンドレッティ・オートスポート)、5度のインディカータイトルを誇るスコット・ディクソン(チップ・ガナッシ・レーシング)と強敵揃いだが、11戦を終えた今シーズン、ニューガーデンはポイントリーダーの座を保ち続けている。
残るはもう、アイオワを入れても6戦。そして、このアイオワはチャンピオン争いで非常に重要な役割を果たすものだと前々から考えられていた。
ニューガーデンは予選3番手だった。フロントローは先輩チームメイトたちが占めたのだ。しかし、レースでは彼が最速だった。
涼しくなったレースで圧倒的な強さを見せたのがニューガーデンだった。これで今シーズン4勝目。チャンピオンとなるに十分な優勝回数だ。
ランキング2位でアイオワを迎えたロッシは、アイオワでは6位という目立たない成績に終わった。予選結果と同じ6位。チャンピオン争いでは一歩後退だ。
ランキング3位のパジェノーも、ポールポジション獲得をレース結果にうまく繋げることはできず、4位でゴール。ニューガーデンはポイントリードを広げることに成功した。
残るレースは5戦だけとなっている。もちろん、最終戦ラグナ・セカはダブルポイントと、まだまだタイトル争いの行方は分からない状況が続く。
連勝でさらなる勢いを手に入れたかったシモン・パジェノー(チーム・ペンスキー)だったが、アイオワは4位フィニッシュという結果に終わり、「今日のジョセフ(・ニューガーデン)は本当に速かった。自分はアンダーステアが強過ぎ、トラフィックでの走りをアグレッシブにできなかった」と語った。
ニューガーデンとのポイント差は39点から58点へと広がった。
ランキング5位のウィル・パワー(チーム・ペンスキー)は、ピットインの際にスピードが高過ぎ、なんとかコントロールしたものの、ピットロードへの進入時に規定のエリアから飛び出したため、ペナルティを科せられて今季初勝利のチャンスから遠ざけられた。
ペンスキー勢に割って入り、2位を獲得したのはスコット・ディクソン(チップ・ガナッシ・レーシング)。
オーバーステア、アンダーステアに悩まされた彼は序盤で大幅ポジションダウン。2周遅れに近く、14、15位でのゴールというのが現実的になっていた。
しかし、最後のピットストップを大きく遅らせる燃費走法を採用。それが見事に当たって2位フィニッシュを成し遂げた。イエローが絶妙のタイミングで出されたのも味方していた。
ディクソンはトップグループより10周以上も遅くピットに入り、新しいタイヤのグリップを武器に、残り25周で切られた最後のリスタート以降にグラハ・レイホール(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)、昨年アイオワで2位フィニッシュしているスペンサー・ピゴット(エド・カーペンター・レーシング)、パジェノー、昨年のウイナーのジェイムズ・ヒンチクリフ(アロー・シュミット・ピーターソン・モータースポーツ)をパス。ニューガーデンの2秒後方まで迫った。
ニューガーデンはパスできなかったが、2位という結果はディクソンにとって望外のものだったはずだ。
「最後まで諦めず、ゴールまで走り続ける。自分としてはずっとやってきていることだが、それが今回も大きなポイント獲得に繋がった。一時は2ラップダウンに近いところまで順位を落としていた」
「どうやって2位まで上がることができたのか、まだよくはわかっていないんだ。14位とか15位で終わって不思議のなかったレースで、2位フィニッシュできたのは、すべてチームのおかげだ」とディクソンは言った。
3位はヒンチクリフ。6番手を走っていたエド・カーペンター(エド・カーペンター・レーシング)がクラッシュして出された最後のイエロー、その少し前までシボレー勢がトップ4を占めていた。
しかし、作戦と粘り強さでディクソンがトップ3入りし、ヒンチクリフはアイオワでの強さを発揮し、自力で表彰台圏内まで上り詰めた。
ランキング2位のロッシは、アイオワでトップの座を争うことができなかった。それでも辛抱強く6位でフィニッシュ。ポイントダメージを最小限に抑えた。レース前に4点だった差は29点になった。
「今日苦戦するのはわかっていたが、実際にその通りになった。残るシーズンもそういう戦いを続けるだけだ。昨日の状況から考えれば、僕らのチームは最大限の成果を挙げた」とロッシは話した。
佐藤琢磨はアクシデントによるマシントラブルでリタイアした。
スタートでダッシュを決めて2番手に浮上したが、最初のスティント中に大きく後退。すると一度多いピットストップで逆転勝利を目指した。
しかし、競い合う2台のマシンの後ろで一瞬ラインがアウトに流れたところでセイジ・カラム(カーリン)に追突され、アンダートレイを破損したためにリタイアとなった。
「テキサスからずっと、上位を走っていながら結果を残せていない」と琢磨。
「昨日とまったく違うコンディション。それにマシンを合わせるのは難しく、自分たちはそれがうまくいかなかった。予選でトップ3だったペンスキー勢は、その速さを今日も保っていた。自分たちは予選は4番手だったが、レースではスティントが30周を超えたぐらいからペースの下がり具合が大きくなっていた」と琢磨はレースを振り返り、次のミド・オハイオで好成績を上げることにフォーカスすることを誓った。
琢磨のランキングは6位がまだ保たれているが、ポイントリーダーとの差は176点になり、ランキング7位のライアン・ハンター-レイ(アンドレッティ・オートスポート)は13点差、ランキング8位のレイホールは21点差に迫っている。