グッドスマイルレーシングとブラックファルコンにより3台のメルセデスAMG GT3が日本のスターコンテンツを纏い戦うことになった。 7月19日、グッドスマイルレーシング7月25~28日にベルギーのスパ・フランコルシャンで開催される伝統の一戦・トタル・スパ24時間レースに向けて、ドイツの強豪ブラックファルコンと組み、3台のジャパンデザインのアートカーを走らせると発表した。このコラボレーションについてグッドスマイル・レーシングの安藝貴範チーム代表は、ブラックファルコン側からの要請で今回のコラボが実現したと明かした。
スーパーGT GT300クラスではGOODSMILE RACING & Team UKYOとして、トップチームのひとつとして活躍するグッドスマイルレーシングは、2017年にGT3カーの世界最高峰の一戦であるスパ24時間に初挑戦した。しかしその際には、決勝を前にしてクラッシュのため車両は全損。急遽ドイツから代替車両を取り寄せ、暫定カラーで挑んだが、そのマシンも他車にヒットされてしまいクラッシュ。完走できぬまま初挑戦を終えていた。
安藝代表は、そのときを振り返り「今回のスパ24時間参戦の話が最初に持ち上がった時、正直なところ2017年に完走すらできずに敗退した苦い経験が頭をよぎり、迷っていました」とチームの特設サイト(https://special.goodsmile.info/spa24/)のなかで語った。
「しかし、このままでは悔いが残るとも思っていたし、AMGサイドからブラックファルコンとのコラボレーションという強力なパッケージの提案をもらったこともあって、参戦を決意しました。話のきっかけは、昨年の鈴鹿10時間の総合5位、アジア賞1位という結果でした。あのレースでピレリタイヤが分かってきて、少しは世界で戦えるようになったかもと自信も得ました」
こうして、ニュルブルクリンク24時間総合優勝など、輝かしい歴史をもつブラックファルコンとのコラボレーションによりふたたびスパ24時間に挑むことになったグッドスマイルレーシングだが、谷口信輝/片岡龍也のお馴染みのコンビに加え、アダム・クリストドウロウというAMGが信頼を置くエースのひとりを投入。充実した体制が組まれた。
テストデーでは片岡がクラッシュを喫してしまったが、「アダムの速さと強さも十分知ることができました。セッティングの方向性も大きくは間違いないことが確認でき、本番は違うマシンになるものの、AMGが信頼できるマシンを用意してくれたので不安はありません」と安藝代表は意気込んだ。
■カラーリングは『スーパークールだ!』
そして、ファンにとって参戦発表の際に驚きとなったのが、TYPE-MOONが手がける『Fate』とのコラボ。チームはこれまで初音ミクのイラストがメインで、ファンにもその印象があったが、「ずっと続けてきた初音ミクGTプロジェクトとして参戦したい思いももちろんあるのですが、ミクと同じくらいずっとお世話になっている『Fate』シリーズが15周年を迎え、感謝とお祝いの気持ちを込めて企画を提案したところ、TYPE-MOONさんにも快諾いただいたことで、このとおり実現しました」と安藝代表は語っている。
こうしてグッドスマイルレーシングによりデザインされた『Fate』とのコラボカラーリングは、テストデーでの車両への施工のためブラックファルコンに引き渡されることになったが、ブラックファルコン側から「『これはエキサイティング! スーパークールだ!』、『ウチの他のマシンのアートコーディネートもしてよ!』と突然のオファーを受けました(安藝代表)」と、なんとブラックファルコンから参戦する他の2台のデザインも担当することになったという。
グッドスマイルレーシングでは、急遽関係各社へ連絡し、ライセンスをもつ各社の協力を得て、ブルーをベースとしたマシンは『プロメア』、グリーンをベースとしたマシンは『初音ミク』とのコラボカラーリングを実現。19日に発表された3台のマシンのカラーリングは、ブラックファルコンの公式サイトにも掲載されたほか、インターコンチネンタルGTチャレンジ、スパ24時間の公式SNSアカウント等にも紹介され、世界中のジャパニーズ・ポップカルチャーのファンから大きな反響を得ている。
「これにより、日本のスターコンテンツ3作品が世界三大耐久レースのひとつであるスパ24時間で一緒に走ります。我々にとって栄誉なことはもちろんですが、ちょっと考えられないレベルのすごいことですので、ぜひこの3大アートカーの活躍にも注目していてください」と安藝代表。
「今回は日本のプライベーターが、日本のスターコンテンツを纏い、トップクラスの強豪ブラックファルコンとともに世界一のレースに挑みます。それに伴う苦難、いいことも悪いことも含めて、一緒に体感してほしいとおもいます。応援よろしくお願いします」
近年、日本のポップカルチャーは日本人が想像している以上に世界に浸透しており、コラボカラーリングの実現は、日本人が思うよりも自然な実現だったのかもしれない。特に今回、『プロメア』を纏う04号車は、メルセデスAMGにとってもエースカーの1台でもある。かつてはスーパーGTでも好奇の目線で見られていた“痛車”が、こうして世界のチームとのコラボにより、世界一のレースを戦うことは、非常に興味深いことだと言えるだろう。