2019年07月20日 09:41 弁護士ドットコム
「妻が不倫していました。相手の男性は、バツイチ。子どもの習い事の先生です」という男性から悲痛な相談が弁護士ドットコムに寄せられています。
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相談者によると、妻と相手男性は半年前から親密になり、1度だけとのことです。2人とも不倫の事実を認めているといいます。
「精神的に大きなショックを受けたので、男性に対して慰謝料請求を考えています」という相談者。しかし、男性は自身の子どもの養育費も払っており、ギリギリの生活。さらに、1度きりの肉体関係でも慰謝料を取れるのかという不安もあるようです。慰謝料請求は可能なのでしょうか。
不倫相手への慰謝料が認められるためには、不貞行為があったことが前提となります。不貞行為とは、結婚している人が、自由な意思に基づいて、配偶者以外の人とおこなう性的交渉のことをいいます。
たとえ肉体関係を持ったのが1度かぎりだったとしても、不貞行為となります。そのため、相談者が相手男性に不貞行為を理由に慰謝料請求をすることは可能でしょう。
しかし、肉体関係を持ったことが1回であることから、慰謝料額は少なくなる可能性もあります。
なお、慰謝料請求には時効があります。時効は、不貞行為の事実および不倫相手を知ったときから3年です。これを過ぎてしまうと、不倫相手に慰謝料を請求することはできないので、注意が必要です。
今回のように、1度きりの不倫の場合、慰謝料額の相場はどの程度になるのでしょうか。
離婚問題に詳しい長瀬佑志弁護士は「不貞行為の慰謝料は、配偶者と不倫相手の関係性や不貞行為当時の夫婦関係、婚姻期間や不貞行為の期間の長短などを総合考慮して判断されるため、1度きりの肉体関係の場合の慰謝料の相場を一義的に出すことはできません」と説明します。
長瀬弁護士によると、肉体関係の回数の目安について、20回程度の肉体関係を「多い」と判断した裁判例(岐阜地判平成26年1月20日)がある一方で、3回程度の肉体関係を「少ない」と判断し、慰謝料の減額事由とした裁判例(東京地判平成22年9月28日:慰謝料150万円)もあるようです。
相手男性が養育費を支払っていることについて、長瀬弁護士は「直ちに養育費の支払いが慰謝料に考慮されるとは言い難いですが(東京地判平成23年12月28日参照)、養育費の支払い義務があるために経済的に余裕がないということが、事実上慰謝料額に影響する可能性は否定できないでしょう」といいます。
弁護士ドットコム
【取材協力弁護士】
長瀬 佑志(ながせ・ゆうし)弁護士
弁護士法人「長瀬総合法律事務所」代表社員弁護士(茨城県弁護士会所属)。多数の企業の顧問に就任し、会社法関係、法人設立、労働問題、債権回収等、企業法務案件を担当するほか、交通事故、離婚問題等の個人法務を扱っている。著書『若手弁護士のための初動対応の実務』(単著)、『若手弁護士のための民事弁護 初動対応の実務』(共著)、『現役法務と顧問弁護士が書いた契約実務ハンドブック』(共著)、『現役法務と顧問弁護士が実践している ビジネス契約書の読み方・書き方・直し方』(共著)、『弁護士経営ノート 法律事務所のための報酬獲得力の強化書』(共著)ほか
事務所名:弁護士法人長瀬総合法律事務所水戸支所
事務所URL:https://nagasesogo.com