ディズニーアニメーションの映画史上最高となる観客動員数を誇る『ライオン・キング』。ミュージカル版では、映画、舞台、コンサートなどを含めた全ての興行作品で史上最高となる62億ドル(約6700億円)を樹立し、日本では20年を超えるロングラン上演を続ける劇団四季の公演としても親しまれている。
公開から25年経った今でも愛されているそんな作品が、このたび「超実写版」として映画化され、7月19日に全米公開、8月9日に日本公開を迎える。監督は『ジャングル・ブック』の実写版も手掛けたジョン・ファヴロー。人間の登場しない動物だけの世界はどのように表現されているのだろうか。
■ドナルド・グローヴァー、ビヨンセ、セス・ローゲンらが声の出演
『ライオン・キング』のあらすじを振り返ろう。舞台はサバンナの王国・プライドランド。広大な地を治める王であるライオン・ムファサの息子として、シンバが誕生する。だがシンバは王の座を狙うムファサの弟スカーの陰謀で父を失ない、王国を追放されてしまう。新たな世界で新しい仲間と出会ったシンバはやがて自分の使命に目覚め、王国を守るために立ち上がる――。
主人公シンバの声を演じるのはChildish Gambinoことドナルド・グローヴァーだ。シンバの幼なじみ・ナラの声をビヨンセが演じ、イボイノシシのプンバァ役にセス・ローゲン、相棒でミーアキャットのティモン役にビリー・アイクナーがキャスティングされている。
7月9日にロサンゼルスで行なわれたワールドプレミアには監督や声優陣が集結した。ドナルド・グローヴァーは「小さい頃からずっと知っていた映画に参加できるっていうのは本当に楽しかったよ!一生に一度あるかないかというくらい、心の底から本当に大好きな映画に出られることをとても特別に思います」と喜びを語った。
日本語吹替版はセリフだけでなく歌も吹き替える「プレミアム吹替版」で上映。シンバ役を賀来賢人、スカー役を江口洋介、プンバァ役を佐藤二朗、プンバァの相棒・ティモン役を亜生(ミキ)、ナラ役を門山葉子が担当する。ムファサ役はアニメーション版で同役を務めた大和田伸也が続投。また日本版オフィシャルソングとして“サークル・オブ・ライフ”を19歳のシンガー・RIRIが歌唱している。
■おなじみの音楽をグローヴァーやビヨンセの歌で新録。エルトン・ジョンによる新曲も
オリジナルのアニメーション版『ライオン・キング』の魅力を構成する大きな要素のひとつが音楽だ。『第67回アカデミー賞』では“Can You Feel the Love Tonight(愛を感じて)”、“Circle of Life(サークル・オブ・ライフ)”、“Hakuna Matata(ハクナ・マタタ)”の3曲が最優秀主題歌賞にノミネートされ、“Can You Feel the Love Tonight(愛を感じて)”が受賞。さらに最優秀オリジナル作曲賞も受賞している。
実写版でもエルトン・ジョンと作詞家のティム・ライスがアニメのために手掛けた楽曲群が、ドナルド・グローヴァーやビヨンセといったキャストの歌で新録された。さらにエルトン・ジョンが歌う新曲“Never Too Late”がエンドクレジットで使用される。
サウンドトラックにはグローヴァーとビヨンセが歌う“Can You Feel the Love Tonight(愛を感じて)”や、ティモンとプンバァの歌としておなじみの“Hakuna Matata(ハクナ・マタタ)”などが収められている。作曲家のハンス・ジマーと南アフリカ出身のレボ・Mはアニメ版から続投。“Can You Feel the Love Tonight(愛を感じて)”“Hakuna Matata(ハクナ・マタタ)”など5曲でファレル・ウィリアムスがプロデューサーを務めている。
■ビヨンセが贈るインスパイアードアルバムにはケンドリック・ラマー、Jay-Z、Childish Gambinoらが参加
さらに注目すべきは、サウンドトラックとは別にリリースされるインスパイアードアルバム『The Lion King: The Gift』の存在だ。映画『ブラックパンサー』公開時にもケンドリック・ラマーのプロデュースによる『Black Panther: The Album』が制作されたが、『The Lion King: The Gift』では声優キャストでもあるビヨンセがその役を担った。
7月19日にリリースされた本作は、映画へのトリビュートとアフリカンミュージックへの敬意を表した「アフリカへのラブレター」のような作品になっているという。参加アーティストにはケンドリック・ラマー、Jay-Z、Childish Gambino、ファレル・ウィリアムス、ティエラ・ワックをはじめ、ビヨンセの娘ブルー・アイビーも名を連ねる。
ビヨンセは本作のリリース発表時に「この映画にインスパイアされた楽曲をただ集めること以上のことをやりたかった。1つのサウンドとしては括ることができない、ジャンルを超えたコラボレーションです。R&B、ポップ、ヒップ・ホップ・アフロ・ビートなど、さまざまなジャンルで構成される予定です」とコメントしていた。
■新曲“Spirit”のPVではビヨンセが娘と共演
ブルー・アイビーは先行シングルとして発表されたビヨンセの“Spirit”のPVにも登場している。壮大な自然を舞台にした母娘の共演は、ムファサとシンバの父子の絆を描く映画のストーリーとも重なる。この曲は劇中でナラが登場する重要なシーンで使用され、映画のサウンドトラックと『The Lion King: The Gift』の両方に収録されている。
アルバムにはナイジェリア出身のMr.Eazi、Wizkid、Teknoをはじめ、ガーナ、南アフリカなど、アフリカ系のアーティストも多く起用されている。ビヨンセは本作について「みんなにこのストーリーの中で自身のストーリーをリンクさせてもらいたかった。すべての楽曲は、この映画の内容に沿ったものとなっていて、自身のイマジネーションを膨らませてもらえるものになると思う。素晴らしいアーティスト陣に参加してもらっただけでなく、最高のアフリカン・プロデューサーにも参加してもらった。信頼と心が大切だった」と語っている。
■ジョン・ファヴロー監督「また違った別の解釈でストーリーを描いている」
全米では7月19日に公開される『ライオン・キング』。日本ではアニメも実写も超えた「超実写版」と銘打って宣伝されているだけあってネイチャードキュメンタリーさながらのリアルな映像表現を実現しているという。
ワールドプレミア後の批評家からの評価は賛否両論あるようだが、観客はどう反応するだろうか。同じディズニーアニメ実写化の近作である『アラジン』は日本国内の興行収入が100億円を突破するヒットを記録している。
新作はアニメ版とほとんど同じストーリーのようだが、上映時間は約30分長くなっている。監督のジョン・ファヴローは「『ライオン・キング』は、今でも多くの人々が見続けている作品だけど、今回の作品は、それとはまた違った別の解釈でストーリーを描いている。これが、この素晴らしいストーリーをさらに多くの人々と分かち合うための方法だと確信しているよ」と自信を覗かせている。
最新技術によってリアルな動物の姿を表現し、現代に生まれ変わった『ライオン・キング』は、8月9日から日本で全国公開される。