2019年07月19日 11:01 弁護士ドットコム
知人女性(21)を無理やり車に乗せ、結婚を迫ったとして、茨城県の男性(63)が7月3日、逮捕された。男性は容疑を認めているという。
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報道によると、男性はかねてからこの女性に好意を寄せていたといい、7月1日の正午ごろから翌2日夕方まで、車で無理やり連れまわしたとみられる。女性が携帯電話で母親に助けを求め、通報を受けた警察官が衣料品店の駐車場で発見した。
男性の逮捕容疑は「結婚目的略取」というもの。いったいどのような罪なのか、富永洋一弁護士に聞いた。
ーー結婚目的略取って、どんな罪なんでしょうか?
「刑法225条により、『結婚の目的で、人を略取(りゃくしゅ)し、又は誘拐』する行為は犯罪となります。
『誘拐』とは、だましたり誘惑したりして連れ去ることを言います。これは用語的にも一般に知られていて分かりやすいと思います。他方で、『略取』とは、暴行や脅迫などにより無理矢理に連れ去ることを言いますfが、日常ではあまり使わない法律用語ですね。
『誘拐』は一見同意があるようでも巧妙にだまして連れ去る行為で、『略取』は実力行使により無理矢理に連れ去る行為、といったイメージでしょうか。
結婚目的で略取や誘拐をした場合、『1年以上10年以下の懲役』に処せられます」
ーーやはりめずらしいのでしょうか?
「『結婚目的』の略取となると、現代の日本では事例は少なく、めずらしい部類だと思います。
他方で、『結婚目的』などではない、未成年者に対する略取などは少なくないと思います。 離婚した両親による子の奪い合いで、幼い子どもを連れ去った場合、実の親であっても、状況によっては『未成年者略取罪』に問われることがあります。
また、わいせつな行為をする目的での連れ去り事件も少なくなく、このような場合は、『わいせつ目的略取罪』に問われます」
ーー金銭や加害、わいせつ目的と違って、めずらしい「結婚目的」。取り締まるにしても、条文で明記する必要はあるんでしょうか?
「『結婚の目的』は、自分との結婚を迫るだけでなく、『第三者と結婚させる目的』をも含みます。
諸外国では、児童や若い女性が人身売買のために連れ去られた挙句、強制結婚させられたり、児童労働、売春、臓器売買などの被害にあったりと卑劣な事例が後を絶たないと言います。
日本では略取・誘拐のことを、明治初期ころまで『かどわかし』と呼んでおり、古くはこの島国でも強制結婚やその他の卑劣な略取・誘拐も少なからず横行していたのではないでしょうか」
【取材協力弁護士】
富永 洋一(とみなが・よういち)弁護士
東京大学法学部卒業。平成15年に弁護士登録。所属事務所は佐賀市にあり、弁護士1名で構成。交通事故、離婚問題、債務整理、相続、労働事件、消費者問題等を取り扱っている。
事務所名:ありあけ法律事務所
事務所URL:http://ariakelaw-saga.com/