ルイス・ハミルトンはF1イギリスGPを、2019年シーズン7度目の勝利で締めくくった。彼は最終ラップにおける猛烈なダッシュによってファステストラップを記録し、ボーナスポイントをも獲得。これはメルセデスのエンジニアたちの肝を冷やす行動だったという。
F1は2019年シーズンに、グランプリの終盤ステージを盛り上げるため、ファステストラップへのボーナスポイント付与のシステムを導入しており、いくつかの場面では効果がもたらされている。
イギリスGP決勝で、ハミルトンはボーナスポイントのためにピットインして新品タイヤに履き替えることなく、32周を走ったハードタイヤで最速ラップをマークした。その行動はメルセデスのガレージ内の緊張を大きく高めることになった。
「僕たちはいつもタイヤのライフが短いだのなんだのと言っているけれど、今回、最後までタイヤが持った。すごくクールだったよ」とハミルトンは語った。
「ほとんど予選の周回のようだった。土曜日の予選ラップのように走ったんだ。何もしないよりよかったと思うよ」
「すごかった。ぎりぎりまで力を出してレースをフィニッシュするのは最高だし、あれは間違いなく、これまでで最高の最終ラップだった」
終盤、新しいソフトタイヤを履いていたチームメイトのバルテリ・ボッタスも、数周前に全力でボーナスポイントを目指した。ハミルトンのタイムは1分27秒369で、僅差でボッタスを抜き、ファステストラップを記録したわけだが、彼のエンジニアたちはその様子をやきもきして見ていた。
「彼らは僕たちがやっていることを喜んでいなかった。スピンやミスがあり得ると、とても心配していたんだ。でも限度内なら許される」と5度のF1世界チャンピオンであるハミルトンは付け加えた。
メルセデスのテクニカルチーフを務めるジェームズ・アリソンは、他のチームメンバーたちと同様に、ハミルトンの終盤での挑戦に神経をとがらせていたが、最終的に彼が成し遂げたことに大いに感銘を受けたという。
「息を呑むような場面だったと思わないか? 使い古したハードタイヤで、最後の周回でファステストラップを出したんだ。まったく素晴らしいことだ」とアリソンは語った。
メルセデスF1チーム代表のトト・ウォルフは、ハミルトンがこのようなタイムを出したことは、タイヤの寿命を考えると予想外のことだったと述べている。。
「これには面白い話がある」とウォルフは語った。
「ファステストラップへのボーナスポイント付与についての新レギュレーションが導入されて以来、エンジニアたちは日曜朝のブリーフィングでファステストラップを狙うことには意味がなく、リスクが高すぎると指摘している」
「そしてドライバーたちはといえば、『そうだね、どうでもいいよ』といった感じなのだ」
「これは完全に理屈に合わない状況だ。なぜなら理論上は、32周を走った古いハードタイヤはファステストラップを出すのに十分良い状態にはないはずだ。にもかかわらず、ファステストを叩き出すことができたのだ」