2019年シーズンのMotoGPも第9戦ドイツGPで前半戦を終え、サマーブレイクに入った。最高峰クラス2年目のシーズンを戦う中上貴晶(LCRホンダ・イデミツ)にとって、ここまでどのようなシーズンとなっているのだろう。中上自身が第9戦までを振り返った。
中上の前半戦を振り返る前に、第9戦ドイツGPに触れておきたい。中上にとって、このレースウイークは痛みとの戦いとなった。第8戦オランダGPの決勝レース中、バレンティーノ・ロッシ(モンスターエナジー・ヤマハMotoGP)と接触。激しく転倒した中上は、骨折こそなかったものの左足の靭帯を損傷した。ドイツGPの舞台であるザクセンリンクでは、バイクを降りると松葉づえを使う中上の姿があった。
決勝レースでは「体の動きや、メリハリを少し抑え、なるべく体力を温存」しての走りだったと、レース後に中上は語った。さらにはレース終盤、リヤに選んだソフトタイヤの左側ラバーがなくなってしまった。「転ばないようにスローダウンするしか手段がありませんでした」という状況のなか、ポイント圏内の14位フィニッシュを果たした。
そんな苦しい戦いを終えたドイツGPのレース後、前半戦の印象について尋ねると「アッセンと(前半戦)締めのザクセンリンクはちょっと残念な結果の2連戦にはなってしまった」と中上。
しかし、全体として見れば、前半戦は決勝レースではおおむね安定してトップ10圏内フィニッシュを果たしおり、第6戦イタリアGPでは自己ベストリザルトの5位を獲得。予選でもコンスタントにQ2へのダイレクト進出を決めている。こうした結果に、中上自身も前半戦について総じて前向きにとらえている。
「この2戦(アッセン、ザクセンリンク)以外は、まずまずですね。自分のなかでベストを尽くして、ムジェロ(第6戦イタリア)ではいいレースができましたし、総合的には前半戦はそんなに悪くないパフォーマンスだったと思います。ときどき自分の速さを見せつけられるセッションもあったので、自分的には満足しています」
「でも、もっといける、という感触があるので、後半戦は(その感覚と)自分の走りを一致させて、結果にうまくつなげたいですね」
もっといける、その言葉からは、中上自身が自分の伸びしろを感じていることがうかがえる。
MotoGPクラスのルーキーイヤーだった2018年シーズンを終え、オフシーズン中のインタビューで、中上は2019年シーズンの課題について『レース序盤のペースとバトル』を挙げていた。これについて聞くと「克服はできていると思います」との答え。
「完ぺきに克服できたわけではないですけど。でも、スタート直後に順位を上げるレースもたくさんありましたし、50パーセントくらいは改善できたのではないかと思います。バトルについても、2018年に比べて抜いて順位を上げたレースがたくさんあります。レース序盤の強さとバトルの強さについても、着実に1ステップ、2ステップはレベルは上がっていると、自分では思います」
中上自身の手ごたえが結果に結びついていることを感じさせる言葉だ。MotoGPクラス2年目のシーズンで確実な成長を見せる中上。期待したくなるのが表彰台に立つ中上の姿だが、後半戦の具体的な目標について聞くと、あくまでも冷静さを失わない答えが返ってきた。
「(現在ではレースで)最低でもトップ10に入れるようになってきました。ムジェロでトップ5に入ったことが大きなきっかけでもあるのですが、後半戦、(第10戦)チェコからの戦いに関しては、トップ6くらいをねらっていきたいと思います。簡単ではないけれど、そこのチャンスをつかみとらないといけません。後半戦は安定して6位、7位あたりに顔を出した強いレースがしたいです」
中上はMotoGPクラスにデビューした2018年シーズン、目標を常にトップ10に定めていた。そしてそこまで前進した今、さらに次の目標へ歩を進めようとしている。2019年シーズン後半戦、成長を続ける中上はどのような力強いレースを見せるだろうか。