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TCR EU第4戦:セルビア出身ドライバーが非紳士的行為で“追放”。レースはヒュンダイ勢が制圧

2019年07月18日 11:31  AUTOSPORT web

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2度目の"無法行為"により、シリーズから除外処分を受けたドゥサン・ボルコビッチ
7月13~14日にオーストリアのレッドブルリンクで開催された2019年TCRヨーロッパ・シリーズの第4戦は、波乱含みで後味の悪い結末となった。土曜レース1で勝利を飾ったジョシュ・ファイルズ(ヒュンダイi30 N TCR)が選手権首位に浮上し、日曜レース2ではルカ・エングストラー(ヒュンダイi30 N TCR)が勝ち、ヒュンダイが連勝。しかし、レース後パドックでの“非紳士的行為”により、ドゥサン・ボルコビッチ(ヒュンダイi30 N TCR)に2019年シーズン出場停止処分が下ったのだ。

 イベント開催を前にBoP(バランス・オブ・パフォーマンス)調整が行われ、アウディRS3 LMSやフォルクスワーゲン・ゴルフGTI TCR、セアト・クプラTCRなどのフォルクスワーゲン・グループ系マシンが軒並みBoPウエイトを軽減される措置を受けるなか、レース1に向けポールポジションを獲得したのはやはりヒュンダイ勢。BRCレーシングのルカ・フィリピ(ヒュンダイi30 N TCR)が最前列を確保し、TCRドイツ連覇の経歴を持つターゲット・コンペティションのファイルズがフロントロウを分け合った。

 迎えた土曜決勝スタートでは、2番手ファイルズが1コーナーで早々に首位奪取に成功すると、そのまま13周のレースを支配して今季2勝目をマーク。

 途中セーフティカー(SC)ランを挟んでファイナルラップ目前まで2番手フィリピに続き、Mレーシングのネルソン・パンチャティッチ(ヒュンダイi30 N TCR)が3番手をキープし、ヒュンダイのワン・ツー・スリー達成が目前に迫るも、公式練習でトップタイムを連発していたダン・ロイド(FK8ホンダ・シビック・タイプR)が12周目に華麗なオーバーテイクを決め最後の表彰台をゲット。4位パンチャティッチ、5位エングストラーのトップ5となった。

 明けた日曜正午を前にスタートが切られたレース2は、前日トップ10リバースグリッドのフロントロウをトム・コロネル(FK8ホンダ・シビック・タイプR)とジャンニ・モルビデリ(フォルクスワーゲン・ゴルフGTI TCR)の実力派ベテランコンビが分け合うスタートに。

 その先頭集団は混乱なく1コーナーへ進入していったものの、6番グリッドのパンチャティッチがエンジンストールで集団後方までドロップ。さらに中団ではTボーンクラッシュも発生し、いきなりのSC導入となってしまう。

 4周目に再開されたレースだが、SC先導中にコース上には雨粒が落ち始め、全車スリックタイヤでウエット路面の難しいコントロールを強いられると、6周目にはモルビデリがターン1でワイドになり後方へ脱落。

 さらに7周目には再びのクラッシュでSCピリオドになり、10周目のリスタートで首位コロネルと2番手エングストラー、そして3番手フィリピのバトルがさらに激化。ここで勢いを見せたのは前日の予選最速男フィリピで、11周目にエングストラーを仕留めて2番手に浮上すると、続く12周目にはコロネルもオーバーテイクし、視界良好なトップランを確保する。

 そして迎えた13周目のファイナルラップ。さらに雨量の増したコンディションがM1RAのエングストラーを味方し、ターン1でコロネルを抜き去り2番手へ浮上すると、そのまま首位のフィリピとのバトルに持ち込み、フィニッシュまで残り3コーナーを残したターン9でエングストラーがついにトップスポットを手に入れる。

 このバトルでコンタクトを受けたフィリピはあえなくスピンオフしバリアにクラッシュ、レース後審議の対象となるもお咎めなしの裁定で、エングストラーがTCRヨーロッパ初優勝を決めると同時に、ポイントランキングでも2位に急浮上。

 2位ファイルズに続き、3位チェッカーをくぐったのはコロネルだったが、彼のクルーがスタート開始5分前ボード掲示後に作業を続けていたことが発覚し、ドライブスルーの代わりに30秒加算ペナルティが下され無念の18位降格。代わってウォルフ-パワー・レーシングのアレックス・モーガン(セアト・クプラTCR)が続く表彰台となった。

 しかしレース2波乱のドラマはここで終わらなかった。その主人公となったのはパンチャティッチとボルコビッチのふたり。スタートでストールを喫し、車列後方に下がっていたパンチャティッチは、レインコンディションを活かして鬼神の追い上げを披露し、ファイナルラップで4番手に浮上しフィニッシュした。

 だがこの際、前方を走るボルコビッチのヒュンダイをプッシングし、スピンに追いやっており、このバトルの結末に憤慨したボルコビッチは、パルクフェルメで制止する妻でマネージャーのアドリアナ・ボルコビッチさんをマシンのボンネットに跳ね退け、左フロントドアをパルクフェルメで横に停まっていたMレーシングのマシンにぶつけようとしたため、「競技者は容認できない行動をとった」としてレース除外処分に。

 さらに事態を重く見たスチュワードとシリーズプロモーターは、2018年のTCRヨーロッパ・モンツァ戦でも“非紳士的行為”で警告を受けていたボルコビッチに対し、残るシーズンに「彼を歓迎しない意」を通知する事態となった。

 シリーズプロモーターのパオロ・フェレイラは、リリースの中で次のように述べている。

「こうした決断をしなくてはならないことに失望しているが、他に選択肢はなかった。我々はシリーズプロモーターとして、この不幸な出来事をただの第三者として見過ごすことはできない。ファンやメディアに開かれたイベントで、暴力を容認することはできない」とフェレイラ。

「多くの場合、ドライバーはモータースポーツの世界に参入しようとする若者のためのモデルであり、その哲学こそ暴力的態度を容認しない最大の理由だ。我々の倫理規範において、間違いを悔い改め謝罪した人には機会を与えるべく、昨年のモンツァでの出来事を容認したが、寛容の時間は終わったのだ」