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杏と仲間由紀恵、対照的な姉妹の恋の行方 『偽装不倫』宮沢氷魚の部屋は“2人だけの世界”に

2019年07月18日 10:51  リアルサウンド

リアルサウンド

『偽装不倫』(c)日本テレビ

 嘘のせいで前に進めない鐘子(杏)の心の声が切ないーー『偽装不倫』(日本テレビ系)第2話では、博多旅行から戻った鐘子が姉・葉子(仲間由紀恵)の結婚指輪を失くしたことを打ち明ける。だが、博多での丈(宮沢氷魚)との出会いは報告せず、結婚記念日を控えている葉子から指輪をすぐに返して欲しいと詰められてしまう。


【写真】カメラマン・丈役の宮沢氷魚


 そんな中、葉子は、名古屋出張と嘘をついてボクサーの風太(瀬戸利樹)と不倫をしていた。葉子は自身が結婚していることを隠し、風太と交際しているのだ。そして鐘子は偶然、葉子の不倫現場を目撃してしまい、葉子から2人の夫婦仲が良好でないことを知らされる。しかし、葉子はこの状況でありながら夫の賢治(谷原章介)と別れるつもりもないと言う。鐘子は、指輪を取り戻し、夫婦の関係をなんとか修復しようとSNS経由で丈に連絡することに。そして2人は東京で指輪を受け取るという名目のもと再会するものの、1日デートを楽しむことになる。


 丈と過ごす時間が長くなるほど、鐘子は丈に惹かれていく。しかし鐘子が既婚であると思っているにもかかわらずアプローチしてくる丈に不信感を感じ、嘘ばかりついてしまうのであった。最初についてしまった“既婚者である”という嘘に重ねて、丈に“夫の写真”として賢治の写真を見せてしまう。鐘子は丈を好きだからこそ、嫌われたくないと感じ、なかなか現状を変えるような発言をできずにいる。そのせいで現状維持のその先にはいくつもの嘘が待っていることになってしまった。


 これでも2人の関係が壊れないのは、お互いが強く惹かれあっていることと、運命だと強く感じているからだろう。2人の恋は宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』になぞらえて語られる。『銀河鉄道の夜』のジョバンニはジョー・バンノ、カンパネルラはイタリア語で鐘という意味で“鐘”子の名だ。丈は、2人で「本当の幸せ」を目指すという『銀河鉄道の夜』の物語に惹かれており、鐘子と幸せを目指したいと思っているようにも見える。こういった運命を感じさせる偶然は恋にとても大きく左右する。鐘子が丈に惹かれているのも、3年も婚活したのに本当の愛を見つけられなかった鐘子が偶然惹かれた相手が、さらに『銀河鉄道の夜』になぞらえた相手だったからだろう。好きという気持ちに拍車をかけるような偶然に、鐘子の気持ちはもう戻れない。しかし口をついで出るのは気持ちと裏腹に嘘ばかりなのだった。そんな切ない2人の恋は、物が少ないながら温かみのある落ち着いた丈の部屋で進んでいく。夜景が一望でき、思い出の写真で飾られた丈の部屋はまるで異国にいるかのよう。鐘子を現実世界から解き放ち、2人の世界に誘うかのようなセットになっている。


 葉子のように結婚していないと言いながら不倫をし、どちらの男性とも良好な関係を築く女性もいるが、一方で鐘子のように独身でありながら既婚と嘘をつき、たった1人との恋ですら前途多難な女性もいる。まるで対照的な2人が姉妹であることが、本作の展開をよりドラマチックにしていた。そして器用な葉子と不器用な鐘子のどちらにも共感する余地が残されている。どちらに感情移入しながら観るのか、そんな楽しみもある作品だ。


(Nana Numoto)