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Twitterは“魂を食らう怪物”か? デスクトップ版一新&通信障害の裏側で起こったこと

2019年07月17日 07:11  リアルサウンド

リアルサウンド

US版Twitter公式ブログ「Introducing a new Twitter.com」より

 世界的なSNSサービスのTwitterには、多くのSNSと同様にモバイル版とデスクトップ版の両方がある。このうちデスクトップ版のデザインが、一新されることになった。この新デザインがよりよいユーザー体験を約束する一方で、先日起こったTwitterのダウンによってこのアプリに対する「本当の思い」に気づいたユーザーもいたようだ。


(参考:Twitter、新元号「令和」への反応をデータ交え発表 盛り上がった瞬間の1位は菅官房長官の発表時


・2色のダークモードも導入
 US版Twitterは15日、デスクトップ版のデザインを一新したことを報告する公式ブログ記事を公開した。その記事によると、新デザインにおける主な変更点は以下の通りである。


・使いたい機能に簡単アクセス:デスクトップ版のレイアウトは従来と同じ3列から構成された3カラムレイアウトが採用されるのだが、左の列に「ブックマーク」「通知」「メッセージ」「リスト」といった機能が集約される。ちなみに、旧デザインではおすすめのユーザとトレンドが表示されていた。


・表示ツイートの最適化:ユーザーのプロフィール情報にもとづいて表示するツイートを決定する。この変更によって、ユーザーが住んでいる地域に関するツイートがより多く表示されるようになる。


・カラーリングのカスタマイズ:「Dim」と「Light Out」という2色のダークモードが導入される。さらに5色のカラーオプションが選択可能となる。選択できるのはデフォルトの青のほかに黄色、ピンク、紫、オレンジ、緑。


・ユーザーアカウントの切替も容易になる
 以上のデザイン変更においては、デスクトップ版とモバイル版がデザイン的に統一されることを意識した、とのこと。新デザインの適用開始時期は地域やユーザーによって異なるようなのだが、デスクトップ版の右の列に「まったく新しいTwitterが登場します」と表示された箇所に「表示する」というボタンが現れたら新デザインを適用できるようになる。


 なお、デザイン変更について報じたApple製品専門ニュースメディア『9to5Mac』の記事によると、新デザインを適用すると旧デザインに戻せなくなるので注意が必要だ。


・最高の体験をすべてのヒトに
 新デザインに関しては、開発を担当したTwitter技術チームが技術的観点から新デザインを解説する技術ブログ記事も公開している。その記事によると、新デザイン開発において苦慮したのはデスクトップ版とモバイル版の機能的な統一であった。一般的なウェブサービスでは、デスクトップ版とモバイル版で機能およびデザインにおいて差異があることが多い。こうした差異があるのは、モバイル版はデスクトップ版に比べて利用できるデバイスの演算能力が低いからである。こうしたなか、Twitter開発チームはすべてのユーザに最高の体験を提供したいという理念にもとづいて、デスクトップ版とモバイル版の差異を可能な限りなくそうとしたのだった。


 デスクトップ版とモバイル版の差異を少なくする開発手法として採用されたのが、モバイル版に関しては必要な機能だけ表示してプログラムを実行する、というアプローチであった。例えば、デスクトップ版では常時表示されている機能が集約されたサイドバーは、モバイル版においてはタイムラインを見ている限りはダウンロードされていない。


 以上のようなアプローチは、新機能の実装を容易にするという効果もある。新機能を追加しても、必要な時にしか実行されないのでアプリに負荷が生じないからだ。ちなみに、新デザイン発表の直前にあたる11日、リプライを隠す新機能をカナダに限定してテストすることを伝える公式ブログ記事を公開している。


・Twitterは“魂を食らう怪物”
 新デザインが発表される数日前の11日、Twitterが一時使えなくなるという不具合が世界各地で起こった。この一件に関して、US版『Engadget』で活躍するライターのRoberto Baldwin氏は興味深い記事を投稿した。


 同氏は1日に何十回もタイムラインをリフレッシュして閲覧しているTwitterヘビーユーザなのだが、最近では不愉快なツイートや偏見に満ちたコメントを見ると怒りを覚えたり憂うつな気分になっていた。同氏にとって、Twitterはもはや「魂を食らう怪物」と化していたのだ。それでも、同氏はTwitterを使うことを止められなかった。


 そんな折に、Twitterの不具合が起こった。その時、同氏が考えたことは「Twitterをもう止めよう、このアプリから逃げ出そう」ということであった。この感情はTwitterの不具合に怒りを感じたから沸き起こったものではないだろう。むしろ怪物から逃げ出す絶好の機会が不意に訪れたことによって、期せずして生じた思いだろう。もっとも、Twitterの復旧後、同氏はすぐに自分が思ったことをツイートしたのだが。


 TwitterをはじめとしたSNSは、ユーザが夢中になるように絶えず進化している。しかし、SNSに夢中になることが幸福なことかと問われたら、直ちにイエスとは答えらないだろう。案外、ときどきSNSの使用を止めるくらいがちょうどいいのかも知れない。


(吉本幸記)