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己龍、MUCC、NOCTURNAL BLOODLUST、0.1gの誤算…代表的なV系バンドを系統別に紹介

2019年07月16日 19:12  リアルサウンド

リアルサウンド

己龍『手纏ノ端無キガ如シ』

 先日『有吉ジャポン』(TBS系)にて、“ヴィジュアル系バンドを支えるバンギャたち”と題して0.1gの誤算が取り上げられた。放送を観てV系という文化の特異性に驚いた方も多いだろう。しかしながらV系と呼ばれるバンドが皆同じような活動スタンスをとっているわけではない。今回はそんな現代のV系バンドの中でも代表的なバンドを例に上げつつ、4つに分けて紹介する。


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 まずは己龍、Royz、R指定といったいわゆる“王道系”のバンドから紹介していこう。王道と括っただけあり、人がV系と言われた時に一番多くイメージするのはこのタイプだろう。ぬめりのある歌声、大胆なビブラートといったV系らしいボーカルを主軸にしつつ、ヘドバン、拳、ジャンプなどノリやすいフリパートを織り交ぜた楽曲を多く展開していく。歌詞は日常とかけ離れた情景を描いていることが多く、暗い世界観を好む人の多いV系ファンの心を掴んでいる。こういったV系らしい要素を基盤にしつつも、それぞれのバンドが和のテイストやエレクトロなどの独自のエッセンスを持っているため、バンド毎にカラーが異なる。また、“王道系”は初心者も親しみやすい音楽性のため、新規ファンを獲得しやすく、10代のファンが多くいることも特徴である。


 V系は見た目ばかりに意識がいっていて音楽はおざなり、という世間のイメージは少なからずあると思うのだが次に紹介する“ハイクオリティ系”のバンドはそういった固定概念を瞬時に払拭してくれる。MUCC、lynch.を筆頭にX JAPANやLUNA SEAといった先人からのV系文化の流れを踏襲しつつ、海外メタルやスクリーモ、エレクトロから歌謡曲に至るまで様々な音楽を取り込み、自身の音楽に昇華しながらもキャッチーさを失わない高い音楽センス。どんな難解な楽曲も自分達のバンドのカラーに染め上げる演奏力。その圧倒的なポテンシャルから他ジャンルはもちろん、海外からも評価が高い。また、何年経っても色褪せない楽曲を繰り出し続ける彼らは様々な年代のファンから支持されており、アニメや映画のタイアップを獲得しつつ、流行り廃りとは関係なく着実にバンドとして規模を伸ばし続けている。


 こうした演奏力が高いバンドが増えてきている中でも近年新たな派閥が生まれてきた。それが“本格デスメタル系”である。先程挙げたMUCCやlynch.がキャッチーなメロディであるのに対し、こちらはアングラ寄りだ。NOCTURNAL BLOODLUSTや、NAZARE、DEVILOOF、DEXCOREを筆頭に海外のデスメタル、ハードコアの影響を色濃く受けた彼らの音楽はもはや“音の暴力”と言っても過言ではない。ドロップチューニングした多弦ギターやベースから繰り出される超重低音、何が起こっているかわからないほどに高速のブラストビート、つんざくようなホイッスルボイスからガテラルまで使い分けるシャウトなど、高い演奏力を誇る。過去にクラシカルメタルを基盤にした様式美系のバンドはいたが、彼らはまた違ったV系×メタルのスタイルを構築している。


 そして最後に紹介するのが“奇想天外系”である。冒頭でも名前が挙がった0.1gの誤算やてんさい。、まみれたという例に挙げるバンドの名前からすでに異質だ。彼らの音楽は1曲の中でポップな曲調からメタルに転調したり、歌詞にするにはあまりに奇抜な言葉選びであったり、バンドとはこうであれ、という固定観念を嘲笑うかのようなスタンスだ。また、一歩間違えば炎上しかねないMV、どこのバンドもやっていないチケット代キャッシュバック企画など、元々過激なイメージがついて回るV系というジャンルの中でも彼らの活動スタンスは特異だ。ただ、彼らは決して奇抜さのみが売りというわけではない。興味本位でライブを観に来たとしても、バンドが魅力的でなければ、また観に来ようとは思わないだろう。だが、彼らは派手な売り出し方の裏に鋭い爪を隠してオーディエンスを待ち構え、着実にファンを増やして、より大きなステージへと昇りつめている。


 4つの系統のどこにも属さないバンドや、新たな系統を生みだしそうなバンドなど、今回紹介しきれなかったアーティストも沢山いる。それほどまでにV系バンドの音楽性や活動スタンスは自由かつ多様なのだ。彩り豊かなバンドたちが溢れるシーンを是非一度覗いてみてほしい。(タンタンメン)