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“突然止まる”おもちゃの動きにあわせた演出も! 『トイ・ストーリー4』4DX体験レポート

2019年07月16日 18:02  リアルサウンド

リアルサウンド

『トイ・ストーリー4』(c)2019 Disney/Pixar. All Rights Reserved.

 今最も老若男女万人向けの良質な映画を作り続けていると言えるピクサー・アニメーション・スタジオ。同スタジオの名声を一気に高めた看板シリーズ『トイ・ストーリー』の新作『トイ・ストーリー4』が7月12日から公開されている。


 全世界の人々の涙を搾り取った『トイ・ストーリー3』から9年、完璧に完結したと思っていたこのシリーズが復活すると聞いて正直不安のほうが大きかったが、いざ見てみたら今度はよりオモチャたちのための話になっていて別の感動が生まれていた。


 完結したと思っていたのは1~3のオモチャたちの持ち主アンディと一番のお気に入りのカウボーイ人形ウッディの物語であって、オモチャたちそのものの物語はまだまだ語る余地があったのだ。


 毎度毎度オモチャたちが持ち主のもとを離れて苦労しながら戻ってくるのが基本プロットの本シリーズ。『トイ・ストーリー4』も同じ型で話が作られているが、その玩具たちの大冒険をよりリアルに感じられるものがこの9年間の間に開発された。2010年までのシリーズ公開時にはなかったが、2019年現在人気の上映形態になっている4DXだ。


 『トイ・ストーリー』の4DX版は老若男女誰でも楽しめるように動きは調整されており、ゴリゴリのアクション映画と比べれば演出は控えめ。それでも揺れる座席や吹き出る水、煙などによって人間には何でもない状況がオモチャたちにとってはいかに困難で過酷かというのがより伝わってくる。


 人間社会のどこにでもある空間がオモチャたちには一大スペクタクルの舞台になるというこのシリーズの面白さが十二分に強化されていた。今回の話であれば、人間にとっては狭くてすぐに全て見終わってしまうようなアンティークショップがオモチャたちには未知の巨大迷宮のように見えてしまう。そんな感覚が座席の振動の演出や3Dを通して体験でき、シリーズとともに成長してきた世代としてはこれまでもウッディたちはこんな大変な思いをしてでも持ち主のもとに一途に戻ろうとしていたのかと想像して遡って感動してしまった。


 また4DXの水の表現も、冒頭の雨の中で仲間のオモチャを救出するシーン(この場面も過去パートの思い出という設定なのでかかる水は控えめ)以外は基本的に水場から離れて室内や快晴の空のもとでの冒険が続くので、水が苦手な人も安心していただきたい。


 さらに、単に揺れるだけではなく、人間に見つかりそうになった時にはオモチャたちが動きを止めるのと同時に座席の動きもピタリと止まるのも世界観を強化していて見事だった。


 直前まであわあわ動いていたものが突然止まってしまう。それまでずっと『トイ・ストーリー』シリーズの基本ルールだったはずのこの設定も動きを伴って表現されると特別な感慨がある。オモチャたちに課された宿命とはいえ、彼らは動いているところを子供たちに見られることはできない。あくまで人間の世界では彼らはオモチャ。その『トイ・ストーリー』シリーズにおいて重要なポイントを再認識させられる演出だった。


 だからこそ、それでも子供たちに夢を届け愛され見守ろうとするオモチャたちの健気さに胸を打たれるし、1作目から24年間そのオモチャの宿命に疑問を持たずシリーズを引っ張ってきたウッディに心境の変化が現れる場面はハッとさせられた。


 1995年から続く伝統あるシリーズが4DXという機能をうまく活用し、本作が届けようとするメッセージと巧みにリンクさせていた。そこまでアクションがド派手なわけではない本作において4DXをどう使うべきか、4DXで見てよかったと思わせるにはどうすればいいのか、ひとつの見本を示したバージョンだった。


 吹き替え声優たちも安定のハマリぶりを見せてくれている。新キャラでも元々はアメリカの人気お笑いコンビ、キー&ピールが演じているダッキー&バニーというぬいぐるみコンビをお笑い芸人チョコレートプラネットが違和感なくアテレコし爆笑をかっさらっていた。


 同じく4DX作品では、現在ディズニー作品の『アラジン』が日本での最高興行成績を樹立するなど大ヒットを記録している。『トイ・ストーリー4』とあわせて、ディズニー/ピクサー作品と4DXは好相性と言えるかもしれない。


 「4DXはアトラクション並みに動きがダイナミックなのでは?」と思っている人でも今回はファミリー仕様で控えめになっているから大丈夫。せっかく2019年に本シリーズを見られるのだから、かつてない『トイ・ストーリー』の側面を見る意味でも4DXは大いにオススメしたい。(文=シライシ)