BTCCイギリス・ツーリングカー選手権に過去4シーズンにわたってメルセデス・ベンツAクラスで参戦してきたレーザー・ツールズ・レーシングは、サマーブレイク明けの2019年シーズン後半戦からV37型『Infiniti Q50(日本名:スカイライン)』を投入すると発表。インフィニティが2015年以来のシリーズ復帰を果たす。
日本では7月16日に新型モデルのラウンチが行われた『ニッサン・スカイライン』は、北米や欧州などのグローバル市場では『インフィニティQ50』のモデル名で販売されてきた。2014年に登場したV37型Q50は2015年にサポーツ・アワー・パラス・レーシングのエントリー名でBTCCに参戦し、デレック・パーマーJr.のドライブによりフルシーズンを戦った。
しかし、プロ・モータースポートが運営するサポーツ・アワー・パラス・レーシングは、もともとインフィニティのサポートを受け“インフィニティ・サポーツ・アワー・パラス・レーシング”としてデビューを飾ったものの、第3戦スラクストンを最後にファクトリー支援を失い、シングルカー体制に移行。スネッタートン戦での15位がシリーズ最上位という戦績に終わっていた。
この結果により、残念ながらチームは2016年に向けた活動資金を調達することができず、『インフィニティQ50』は1シーズン限りでBTCCの舞台から姿を消すこととなった。
しかし、現存するこの2台のマシンに興味を示していたレーザー・ツールズ・レーシングのエイデン・モファットは、2020年シーズンに向けた参戦プランの一環として、2019年初頭にもこの『インフィニティQ50』の機材一式を買い取り、アップデートを敢行。
チームは最新のNGTC規定に合わせてRML(レイ・マロック・リミテッド)製の前後サブフレームやサスペンション、ブレーキを含む共通パーツ一式の装着や、最新のスウィンドン・エンジニアリング製TOCA共通エンジンへの換装を急ピッチで進め、計画より早く2019年シーズン後半戦開幕となる8月3~4日のスネッタートンからの投入をアナウンスした。
来月の実戦デビューに先立ち、チームは今週2日間にわたってオールトンパークで開催されるダンロップのタイヤテストにマシンを持ち込み、シェイクダウンを兼ねた走行機会を設ける予定だという。
「この2台のインフィニティを購入しようとレースエンジニアに電話したのは僕なんだ」と明かした、若干22歳のエースドライバーであるモファット。
「その後、僕のレースエンジニアであるフェデリコ・トゥラータは計測したマシンのディメンション、重量配分、各部の写真などのデータをイタリアのファクトリーに持ち帰って、最新のNGTC規定にアップデートした際のパフォーマンスをシミュレーションしてみたんだ」
「その結果は信じられないほど肯定的な数値ばかりで、フェデリコと僕らは『このマシンへのスイッチは最良の決断である』という判断に至った」
「この2020specのマシンは旧来の2015年仕様とは細部まで異なっていて、現行NGTC規定に対応するべく完全に再設計されているんだ。もちろん、ハッチバックのAクラスに比べてセダンボディの利点である空力性能も向上しているし、何より後輪駆動であるのも最高だね」
チーム・プリンシパルのボブ・モファットも、これまで使用してきたシシリー・モータースポーツ製のメルセデス・ベンツAクラスからのスイッチは、「正しい決断だったとすぐに証明されるだろう」と自信を見せている。
「我々のニューモデルは、過去4年間の進化幅を埋め、さらに競合モデルを凌駕する性能を備えるまでに仕上がった。当初の計画では2020年シーズンでの投入に向けて改良作業を進めていたが、2019年シーズン前半戦の戦績やアップデートの状況を鑑みてプランを変更したんだ」
「完全に刷新された『インフィニティQ50』は、その性能面で明らかに優位性を示している。と同時に、メルセデスの開発は飽和点に達しているとも感じていたんだ。もちろん、素晴らしいマシンだったし、エイデンは幾度か勝利を飾っている。しかし我々は、前進するために変化を必要としていたんだ」
「そのため、我々はインフィニティでのプロジェクトを加速させるべく、スネッタートンでのデビューを前にオールトンパークのタイヤテストに新型マシンを持ち込むことを決めた。これは大いなる挑戦だが、Laser Tools Racingのチームメンバーは準備ができている」
「ミスを犯さずに改善を続け、まだいくつかの課題を乗り越える必要もあるだろうが、チームがここまで見せてきた献身と努力を誇りに思う。2019年BTCC後半戦で大きな成長曲線を描き、2020年には勝てるマシンとしてグリッドに並んでいることを確信しているよ」