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風間俊介の涙のプロポーズが話題に 『監察医 朝顔』は“家族ドラマ”として震災を描く

2019年07月16日 06:11  リアルサウンド

リアルサウンド

(c)フジテレビ

 上野樹里が主演を務める月9ドラマ『監察医 朝顔』(フジテレビ系)が、7月15日に第2話を迎えた。


 第1話、事件解決の後で2011年の震災の回想と対峙が描かれ、反響を呼んだ本作。第2話でも、朝顔(上野樹里)と平(時任三郎)の朝、事件の解決、震災、というドラマの構成になっており、全体を包み込む穏やかな時間の流れが、すでに確固たる作品の色を放ち始めている。


 第2話では、医学部生の光子(志田未来)が登場する。彼女は、朝顔が勤める興雲大学の医学部生で、アルバイトとして法医学助手を務めることとなる。時給目当てで法医学教室にやってきた光子は、先輩相手に遠慮なくはっきりものを言うタイプの空気が読めない生徒。しかし、そんなところが自由奔放な主任教授の茶子(山口智子)に気に入られ即採用を決める。遺体の解剖に立ち会い気を失ってしまったりと助手として不向きかと思われたが、医学部生の立場から事件解決への手がかりをもたらしていく。公式サイトのプロフィールには「朝顔たちに接していくうちに徐々に変化が……」とあり、彼女のムードメーカーから法医学助手としての成長も描かれていくのだろう。


 第2話の事件では、自殺によって亡くなったホームレスの男性が焦点となる。平とバディを組む桑原(風間俊介)が、「あの人の人生何だったんですかね……」とつぶやくと、「もったいない。生きたくても生きられない人がいるのに」と平が返答する。その言葉が指すのは、東日本大震災に被災し、今も行方不明なままの妻・里子(石田ひかり)だ。


 桑原の恋人である朝顔は、ずっと黙っていた見つかっていない母の存在を話し始める。第1話同様、作品越しに語られる2011年3月11日の記憶は、8年経った今でも私たちの心を不安に駆り立てる。体育館を覆うブルーシート、朝顔から話されるたくさんの泥だらけの遺体、溺死で体が変色した人、津波にもまれて体の一部がなくなった人、妊婦、赤ちゃん。原作の同名漫画では阪神淡路大震災を描いているが、ドラマ化にあたり設定が変更されている。上野樹里はクランクイン前、実際に東北の被災地の方々から、当時の体験を聞き、それを演技へと投影している。少しずつ風化していく震災の記憶、扱い。8年経った今だからこそできる作品であり、同時に意義のある作品でもあることに気づかされる。


 無気力に憔悴している朝顔に茶子がかける「あなた生きてるのよね」の一言は、とても力強い。茶子と出会い、彼女の姿を観て朝顔は法医学者になることを決意する。遺体を解剖する前に朝顔が語りかける「教えてください。お願いします」の言葉は、彼女の立場が明らかになるにつれ、深みが増していく。


 第2話で大きく進展するのは、朝顔と桑原の関係性。お好み焼き屋でのプロポーズを経て、桑原は朝顔から母の話を聞いたタイミングで再びプロポーズを申し込む。何の変哲もない道で自転車を押しながら、泣きながら「僕と結婚してください」とプロポーズ。桑原の誠実な人柄が滲み出たシーンだ。結婚指輪を持ち合わせてないということで、有耶無耶にはなったが、2人の中で少しずつ、結婚は現実味を帯びてきている。


 そして、そこに立ちはだかるのが、朝顔の父であり、桑原の相方である平の存在。平はついに朝顔と桑原が付き合っていることに、幾つかの事象から確信し、「挨拶がない。紹介もされていない」と拒否モードに入っていく。「プロポーズ」という言葉を掻き消すように降ってきた、交際への前言撤回。平は正義感が強く謙虚な桑原を部下として認めており、嫉妬による一時的な態度と思われるが、2人の交際を知った平は、朝顔の父親として、上司として、桑原への向き合い方も少しずつ変わっていくだろう。(渡辺彰浩)