「日曜日のレーススタートに向けて、フェラーリがQ2でソフトタイヤを選んだことは戦略的に興味深い。なぜなら、彼らが2ストップ作戦を選択してくる可能性が出てきたからだ。明日はエキサイティングなレースになりそうだ」
F1第10戦イギリスGPの土曜日に行われた予選後、レッドブル・ホンダのクリスチャン・ホーナー代表はそう言って、今回の決勝レースがフェラーリとの全面対決になることを予想していた。
一方、フェラーリも予選後にセバスチャン・ベッテルが、レッドブル・ホンダが日曜日の最大のライバルになることを予想していた。
「メルセデスが頭一つ抜き出ているけど、僕らもレースペースは悪くないと思う。厳しい戦いになるだろうけど、レッドブルとは戦えると思う」
果たして、レースは両者の思惑通りに進んだ。序盤は3番手のシャルル・ルクレールから4番手マックス・フェルスタッペン、5番手ベッテル、6番手ピエール・ガスリーまでの4人が、約2秒以内の差の中で激しいバトルを繰り広げた。結局、4名のドライバーによる戦いはコース上では決着がつかないと判断したレッドブル・ホンダとフェラーリは、ピットストップ戦略で打開策を模索する。
まず最初に動いたのが、レッドブル・ホンダ。6番手のガスリーを12周目にピットインさせ、ハードタイヤを装着して、コースに復帰させる。
続く13周目に3番手のルクレールと4番手のフェルスタッペンがピットイン。このピットストップ作業で、レッドブル・ホンダはフェラーリよりも、良い仕事をした。前の周に約1秒あったふたりは、ピットストップ作業で逆転。しかし、コースインした直後にフェルスタッペンのわずかのミスをルクレールが見逃さずに、ルクレールが再びフェルスタッペンの前に出る。
19周目にセーフティカーが導入されたタイミングでのレッドブル・ホンダとフェラーリの対応でも、レッドブル・ホンダのほうがフェラーリを上回っていた。ピットストップロスは通常のレース中よりも、セーフティカーやバーチャル・セーフティカー(VSC)が導入されているときのほうが小さい。そのため、このタイミングを利用して、まだピットインしていなかったドライバーはもちろん、13周目にピットストップしていたフェルスタッペンも、ピットインした。
というのも、1回目のピットストップでフェルスタッペンはスタートと同様、ミディアムタイヤを選択していたため、もう1度ピットストップしてもう1種類のタイヤに履き替えなければならなかったからだ。
■コース上で互角の戦いを演じていたレッドブル・ホンダとフェラーリ
ところが、1回目のピットストップでフェルスタッペンと同じミディアムタイヤを装着していたルクレールは、スタート時にソフトタイヤを使用。すでに2種類のタイヤを使っており、必ずしもピットインする必要がないため、迷いが生じてしまった。最後まで走りきれないという判断を下したフェラーリは、フェルスタッペンの1周後となる20周目に、ルクレールをピットインさせたが、時すでに遅し。
「チームはとてもいい決定をしてくれて、2回目のピットストップのときにハードタイヤにしてくれた。それでシャルルに対して有利になることができた」というフェルスタッペンは、再びルクレールを逆転した。
コース上でほとんど互角だったルクレールvsフェルスタッペンの戦いは、ピットクルーも含めたチームの総合力によってレッドブル・ホンダが勝利した形となった。
レッドブル・ホンダとフェラーリのもう一方のドライバー同士の戦いはどうだったか。5番手からスタートしたガスリーはスタート直後にベッテルにポジションを奪われたものの、ミスのない走りを披露していた。
ベッテルはセーフティカー導入のタイミングでピットインしたのが功を奏して3番手に浮上するが、フェルスタッペンにオーバーテイクされた直後のブレーキングで判断をミス。フェルスタッペンに追突して最後尾まで落ちた。
ガスリーはルクレールにオーバーテイクを許したが、ベッテルもフェルスタッペンに抜かれている。ただ、ガスリーが冷静な走りに徹していたのに対して、ベッテルはミスを犯した。
連続表彰台はならなかったが、総合力ではレッドブル・ホンダのほうがフェラーリを上回っていたイギリスGPだった。