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松たか子の毒舌もさらに炸裂 『ノーサイド・ゲーム』大谷亮平はアストロズを救うのか?

2019年07月15日 06:11  リアルサウンド

リアルサウンド

『ノーサイド・ゲーム』(c)TBS

 7月14日に放送された日曜劇場『ノーサイド・ゲーム』第2話では、「勝利を目指すリーダーの要件」がテーマになった。


参考:大泉洋、満を持しての日曜劇場主演 『ノーサイド・ゲーム』“サラリーマン役”は新境地となるか


 第1話で君嶋隼人(大泉洋)の檄によって優勝に向けてスタートを切ったアストロズ。運命共同体となった君嶋とアストロズの次なる課題は後任の監督探しだった。チームスポーツを経営の視点からとらえるなら、優勝経験のある監督は成功する経営者にも通じる。チームアナリストの佐倉多英(笹本玲奈)たちが候補として提案したのは、城南大ラグビー部監督を解任されたばかりの柴門琢磨(大谷亮平)。大学の同期である柴門に対して一方的な印象を抱いていた君嶋は躊躇するが、葛藤を乗り越えて柴門のもとを訪れる。


 「勝つことを知る指導者」という言葉には実績を重視するという以外の意味もある。ポイントは勝者のメンタリティを持つこと。同時にそれはリーダーの本質でもある。組織を率いるリーダーに必要なのは、どんな局面でも勝利する確信であるからだ。


 もう一点、柴門が指導者として傑出している部分は選手の可能性を見抜く眼力である。一目見ただけで「スクラムが良い」とチームのポテンシャルを喝破し、選手一人ひとりに課題を伝える。選手自身が気づいていなかったり、気づかないふりをしていたウィークポイントを丁寧に解きほぐす。選手個々の弱さと向き合いつつも、決して自分の考えを押し付けるのではなく機が熟するのを待つのだ。人心を知り、時をつくるのが名将の条件であることがストーリーを通して表現されていた。


 その上で、監督選びにはさらなるハードルがあった。優勝を託された後任監督の報酬とチーム予算を取締役会で承認させなければならない。柴門の要求に応えるために君嶋が考えたのは足し算ではなく引き算の戦略。「ゼロになるか100になるかは自分次第」と君嶋が語るように、それはゼロからのチーム再構築を意味していた。


 第1話に続いて、第2話でも至るところで男たちのぶつかり合いが繰り広げられた。強化方針をめぐって衝突する君嶋と柴門の姿からは、本気で勝利を追求する熱意が伝わってきた。打算と利害に満ちたビジネスの駆け引きと異なる、正面から全力で挑む信念とプライドがノーサイドの精神には込められているのだ。


 妻・真希(松たか子)の「ため息するぐらいなら呼吸しないで」、「あなたの好き嫌いには毛ほども興味ない」という厳しすぎる愛のムチに耐えながら、いじめを受けていた長男・博人(市川右近)と向き合う君嶋。博人のタックルを受け止めながら、自分以外へのいじめに見て見ぬふりをするのはラグビーではないと話す。ノーサイドの精神が子どもにもちゃんと伝わっているのがうれしい。スポーツを通じた親子の交流は、第3話以降の伏線になっていく。


 主演の大泉洋も舞台あいさつで話していたように、第2話を終えた時点ですでに画面から伝わる熱量が半端ない『ノーサイド・ゲーム』。笑える要素もあるが、それを上回る真剣さがストーリーからほとばしる、近年まれに見る“熱い”作品となった。そこには、元日本代表の廣瀬俊朗たちラグビー経験者が多く出演していることも関係しているだろう。


 勝利を知る名将を得て、いよいよ本格的に挑戦を開始したアストロズ。しかし、チームの内外には課題が山積している。常務の滝川(上川隆也)が進める合併案件の行方も気にかかるところだ。企業スポーツの課題と正面から対峙しながら、勝利を目指す君嶋と仲間たちの奮闘に期待したい。


■石河コウヘイ
エンタメライター、「じっちゃんの名にかけて」。東京辺境で音楽やドラマについての文章を書いています。