トップへ

『ボイス』唐沢寿明×真木よう子の悲哀に満ちた過去を描く 「音」を活かした作品設定が魅力に

2019年07月14日 13:11  リアルサウンド

リアルサウンド

『ボイス 110緊急指令室』(c)日本テレビ

 新土曜ドラマ『ボイス 110緊急指令室』(日本テレビ系)の放送が始まった。人気韓国ドラマのリメイクとなる本作は、通報電話の「声」や現場の「音」を頼りに犯人逮捕をめざす、手に汗にぎるクライムサスペンス。7月13日の初回放送では、樋口(唐沢寿明)とひかり(真木よう子)の間に深い因縁を生み出し、「ECU(Emergency Call Unit)」なる捜査チーム結成の発端となったプロローグ的ストーリーが展開された。


参考:『ボイス 110緊急指令室』NEWS 増田貴久の誕生日をサプライズ祝福 「引き続き臨んでいきたい」


 本作冒頭では、菊池桃子演じる樋口の妻・未希(菊池桃子)が謎の暴漢に襲われ、殺害されてしまうまでの凄惨な事件風景が描かれる。そこで奇しくも共有されることになる、樋口とひかりを同時に苦しめる忌まわしい記憶……。


 唐沢寿明が演じるのは、検挙率トップを誇る港東署強行犯一係の係長で「ハマの狂犬」の異名をもつ凄腕の刑事・樋口彰吾。妻が殺害されてしまう事件当日も犯罪グループの張り込みを行っていた樋口は、未希からの着信に気づいたものの目の前の捜査を優先してしまう。その数時間後、妻が何者かによって殺害されていたという衝撃の事実を知ることに。


 唐沢寿明とのW主演となる真木よう子が扮するのは、110番を受ける「緊急指令室」で、未希からの通報電話を受けとった橘ひかり。一度電話が切れた後にコールバックをしてしまい、その着信音から犯人に居場所がバレてしまったことから、未希の死に少なからず責任を感じている様子を見せる。


 事件後、未希を殺害した犯人らしきものが逮捕されるものの、法廷の証言台に立ったひかりは、被疑者の声と自分が聞いた犯人の声とが異なっていると証言。その証言に納得のいかない樋口との対立を深めることになる(キャストは発表されていないので筆者の憶測に過ぎないが、あの特徴的な声と顔の輪郭を見ると、犯人役は“伊勢谷友介”ではないだろうか?)。


 事件から3年の月日が経過。あれから時が止まってしまったかのような樋口は交番勤務に配置換えに、一方のひかりは、科捜研で難事件を解決した実績を携えて、再び緊急指令室に戻ってくることになる。しかも、緊急指令室をまとめる室長というポジションに登りつめて。ひかりは聴覚が異常に優れていたり、空白の3年の間に悲惨な事件をもうひとつ経験していたりするなど、番組公式ホームページの登場人物紹介を見ているとまだ明らかにされていない情報があるようだが、それについては今後のストーリーで詳しく語られるのだろう。


 いずれにせよ、この歳月を経たひかりは緊急指令室にまだ見ぬ可能性を感じ、ECU(Emergency Call Unit)という捜査ユニットの設立を提案するまでに成長する。そして、本作が「タイムリミットサスペンス」と銘打たれる所以には、この設定のユニークさが一役買っている。


 ECUが志すのは、電話による通報から3分で現場に到着し、5分で現場確認、10分で検挙をめざすというフロー。これは、電話を受けてから10分間で犯人を逮捕しなければ、被害者の生死が決定づけられてしまうことを想定したものだ。ひかりをはじめとする“ボイスプロファイラー(声紋分析官)”たちが「声」を聞き分け、「10分」で答えを導き出すというタイムリミットサスペンスとしてのこの作劇が、本作の特異さを際立たせている。初回放送では10分が経過してしまったところで一旦幕を閉じ、事件の結末は第2話へと受け継がれた。


 「音」を聞き分けて、そのわずかな情報から犯人を特定するという設定と似たストーリーの形式として、今年公開され話題となった映画『THE GUILTY/ギルティ』が記憶に新しい。また、短いタイムリミットのなかで犯罪を未然に防ぐというのは、トム・クルーズ主演の映画『マイノリティ・リポート』を彷彿とさせるものだ。「音」によって聴覚を刺激し、スピーディーな展開によって視覚を刺激するこの設定は、うまくハマれば視聴者をハラハラドキドキさせる極上のサスペンスドラマになりうる。唐沢寿明と真木よう子による緊密なコンビネーションや、現場でのバディ関係となる増田貴久(NEWS)と繰り広げるアクションにも期待しながら、1話1話のストーリーに注目していきたい。 (文=原航平)