「僕のほうはすごくいい一日で、ハッピーだね。今シーズンで一番良い金曜日だったかもしれない」
フリー走行を終えたピエール・ガスリーは、こう言って、イギリスGP初日を振り返った。
ガスリーにとって、レッドブル・ホンダとして初めて臨むイギリスGPは滑り出しから好調だった。通常のヨーロッパラウンドより1時間早い午前10時からスタートしたフリー走行1回目で、ガスリーはセッション終盤にトップタイムをマークしていたからだ。
今シーズンのガスリーのフリー走行1回目の順位は、以下の通りだ。
■オーストラリアGP 8番手
■バーレーンGP 6番手
■中国GP 7番手
■アゼルバイジャンGP 15番手
■スペインGP 8番手
■モナコGP 6番手
■カナダGP 13番手
■フランスGP 6番手
■オーストリアGP 6番手
じつはフリー走行1回目からトップ5に入って、グランプリをスタートしていたことがなかったのである。午後2時からスタートしたフリー走行2回目でも、その好調な走りは続いた。
常にチームメイトのフェルスタッペンを上回るペースで走行を重ねていたガスリーは、ソフトタイヤを履いた予選シミュレーションでも5番手となる1分27秒249をマーク。マックス・フェルスタッペンが1分27秒862だったから、コンマ6秒速かったことになる。
もちろん、この結果はフェルスタッペンのマシンのセットアップが、まだ煮詰めきれていなかったことも関係していた。
「まだクルマの感触が完全に決まっていなくて、やるべきことが多い」(フェルスタッペン)
ただし、ガスリーの調子が良かったことは、紛れもない事実だ。ガスリーが記録した1分27秒249をセクターごとの詳細は、以下の通り。
セクター1→28.300秒
セクター2→35.278秒
セクター3→23.671秒(自己ベスト)
このうち、自己ベストはセクター3だけで、それ以外はじつは自己ベストではなかった。それでは、ガスリーのセクターごとの自己ベストはどうだったかというと、次の通りだ。
セクター1→28.067秒(自己ベスト)
セクター2→35.265秒(自己ベスト)
セクター3→23.671秒(自己ベスト)
これを合計すると、タイムは1分27秒003となり、4番手のセバスチャン・ベッテル(フェラーリ)を上回る。この日ガスリーが走らせていたマシンには、そのポテンシャルがあったというわけだ。
前戦オーストリアGPでマクラーレンのランド・ノリスの後塵を拝する7位に終わったガスリーが、なぜ今回のイギリスGPでフェラーリに肉薄する走りを披露したのか。その理由のひとつは、オーストリアGPで使用できなかった新しいフロントウイングが関係していた。
チームは明らかにしていないが、オーストリアGPでは新フロントウイングはフェルスタッペンだけが使用。そのウイングによって、どの分野が改善されたのかと尋ねると、フェルスタッペンは「すべての領域が改善された」と答えた。
つまり、オーストリアGPの優勝は、ホンダのアグレッシプなエンジンモードによるパワーも勝因のひとつだが、レッドブルの車体も大きくアップデートされていたことになる。その主な要因がフロントウイングだった。
そのフロントウイングを、ガスリーはようやくこのイギリスGPで手に入れることができた。
「今日はまだ金曜日だから大騒ぎはしない。ミスをせず、この調子で持てる力を発揮することだけに集中したい」(ガスリー)
シルバーストンは高速コースで、かつ風の影響を受けやすいためコーナーごとにバランスが変わるため、1周を通してタイムをまとめるのが簡単ではない。しかし、いまのガスリーにはアップデートされた空力パッケージがある。オーストリアGPまでの逆風を、シルバーストンでは追い風にしてほしい。