レッドブル・ホンダがオーストリアGPで待ちに待った初優勝、見事な力技での勝利だ。レッドブル・ホンダのシャシー、RB15はステップ3のホンダPU(パワーユニット)を搭載し、標高の高いオーストリアGPのレッドブルリンクでは過給がパフォーマンスに重要な要素となるので、ホンダジェットからのインフルエンスでの開発TCU(ターボチャージャー・ユニット)が大きな役割を果たしたかもしれない。
さて、そのレッドブルRB15。以前のこの連載記事『レッドブル・ホンダRB15の複雑な2段分離型アッパーアーム』ではRB15のサスペンションアームの段違いマウントに注目したが、今回はRB15の第2弾とも言える、フロントサスペンション機構に注目したい。
こちらはレッドブルRB15のフロントサスペンションの写真だ。まずはロッカー上部を結ぶヒーブユニット(1)が最初に目に入る。比較的単純なユニットで上下動(ヒーブ)を大小の傘ワッシャースプリング(2)を重ねて、上下動のスプリングとしている。
写真のマシンはメンテナンス作業中のものでジャッキで車体が空中に落ち上げられており、サスペンションはホイールが下方に限界まで下がっている状態(フル・ドゥループと言う)になっている。それでも傘スプリング間にはほんのわずかしか隙間(3)がなく、いかにフロントサスペンションの上下動が少ないか想像がつく。この上下動は昨シーズンよりも、かなり少ないと考えられる。
さらに、ヒーブユニットの裏側に紅いボディーのダンパー(4)が見える。これはロールダンパーで写真左側のロッカー上部(5/ロッカー回転軸の上側)に取り付けられていて、紅いボディの下部は写真右側のロッカー下部(ロッカー回転軸の下側)に装着されている。
ロールではヒーブのように左右ロッカー(6)の動きが対称にシンクロせず、ロッカーは左右で同方向へ回転する。したがって左コーナーでは写真左(右サスペンション)のロッカーはダンパーを押す方向に回転し、同じ方向に回転する写真右(左サスペンション)のロッカーも回転軸の下側からダンパーを押す方向に回転する。
したがって左コーナーではダンパーを圧縮し、右コーナーではまったく逆にダンパーを引っ張る方向に働かせ、つまりはロールの振動を緩衝させていることになる。このダンパーにはアジャスター(7)があり、ダンパーレートの変更が可能だ。レッドブルはルノー同様、長年ロールダンパーを採用してきたが、今シーズンはそのサイズが大きくなっている。
ライバルのメルセデスW10がロールをロックしてまで動きを殺しているのと正反対に、ダンパーで微妙で繊細なロール制御を図るレッドブルRB15とではサスペンションへの哲学がまったく異なっているのがわかる。今後のレッドブル・ホンダの戦いが期待できそうだ。