2019年07月12日 10:51 弁護士ドットコム
若い女性がアダルトビデオ出演を迫られる「AV出演強要」など、業界内外の問題について考えるシンポジウム「AV問題を考える会」(AV男優・辻丸さん主催)が5月11日、都内で開かれた。シンポには、かつてAV女優として一世を風靡した小室友里さん、大塚咲さんが登壇した。本稿では、小室さん、大塚さんの発言を振り返りたい。
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小室さんは1996年から1999年にかけて、約3年半の間、トップのAV女優として活躍した。主に、講演活動をしているが、AV出演強要が大きな社会問題になってからは、「本番行為の全面禁止」を訴えている。この日のシンポでも、自身の体験を振り返りながら、次のように述べた。
「本番行為をするかどうか、女優が選べないのが問題だと思っています。(自身の現役)当時は、選べていました。それが、1990年代のAV女優の権利だったと思います。今は、セックス(本番行為)をすることが当たり前になっています。この意識が、AV業界の根本的な問題を引き起こしていると考えています」(小室さん)
小室さんの現役当時は、挿入がない「疑似本番」という撮影も少なくなかった。女優の心身に対する負担が少ないのだが、2000年代以降、モザイクが薄くなるにつれて、ほとんどが「本番」になっていった。
また、撮影現場では、台本や事前に聞かされていた内容とはちがう演技をもとめられることもある。小室さんによると、撮影現場で「やりたくない」と拒否できる雰囲気ではないという。もし、拒否した場合は「ペナルティ(罰金)」を支払うようもとめられるケースも起きていた。
「『ペナルティ、払えるの』と言われると、女の子は固まってしまいます。痴漢された人の心理に似ていると思います。(痴漢された人は)痴漢の手をとって、『痴漢です。助けてください!』と言えません。AVの現場で『やりたくありません!』と言えないのは、同じ心理ではないでしょうか」(小室さん)
AV女優になるきっかけは、さまざまだ。AV出演強要で、被害者支援団体が問題視しているスカウトや、求人サイトなどから入ってくる人は、あとをたたない。一方で、自分から「やりたい」と応募した人が大半とも言われている。実際にそう証言する女優も多い。しかし、小室さんは、その自己決定そのものについて疑問を投げかけた。
「大学生から社会人になりたてくらいの年齢の彼女たちが、大人と対等にわたりあえるくらいの知識や、契約書にサインすることや、ハンコを押す意味を知っていたのでしょうか」(小室さん)
もう1人の元AV女優・大塚さんは、2004年から2012年にかけて活動して、人気を博した。引退後は、写真家・画家として、個展を開催している(http://www.kiyoshiart.com/)。2017年発売の自叙伝『よわむし』(双葉社)では、15歳のときにレイプ被害にあったことを告白。そんな大塚さんは次のように述べた。
「20代前半の女の子に、AVをやってほしくないと思っています。物事の判断能力がない年齢ですから。20代後半くらいの物事の分別がついていないと、やってはいけない仕事なのではないか。引退したからこそ、この年齢になったからこそ、落ち着いてそういうふうに感じています」(大塚さん)
2000年代に入ってから、AV女優の人気が一般に広がり、恵比寿マスカッツ(AV女優やグラビアモデルなどで構成されたアイドルグループ)など「アイドル化」もすすんだ。こうしたグループにあこがれて、業界に入ってくる女の子も少なくない。小室さんは、こうした「アイドル化」が、AV強要問題を加速させた原因の1つではないかと指摘する。
「聞いてみると、『◯◯さんにあこがれて』『◯◯さんのインスタグラムを見て』。女優さんの生活そのものにあこがれて、AV女優という存在が、世間でどう見られているのか、というのが、わからないままなってしまう」(小室さん)
大塚さんはまさに2000年代に活躍したこともあり、こうした小室さんの発言を受けて、自身にあこがれて、AV女優になった女性がいることを打ち明けていた。
「とてもこわくなりました。ずいぶん影響力があったんだな、と。AV女優は、あこがれてなる商売じゃないです。性のことが大好きな子だけがやればいいと思います」(大塚さん)
AV男優の辻丸さんが主催する「AV問題を考える会」は8月24日(土)、第5回シンポジウム「生きづらさとAV」を開催する。登壇者など詳細は、ツイッター(https://twitter.com/avmondai)から。