■音楽関係4団体&配信サービス事業4社が連名で要望書
日本レコード協会などの音楽団体やサービス事業者はApple Inc.に対し、無許諾音楽アプリへの対策強化を求める要望書を連名で提出した、と発表した。
6月28日付で提出された要望書は、一般社団法人 日本レコード協会、一般社団法人 日本音楽事業者協会、一般社団法人 日本音楽出版社協会、一般社団法人 日本音楽制作者連盟の音楽関係4団体および、音楽配信サービス事業会社であるAWA株式会社、KKBOX Japan合同会社、LINE MUSIC株式会社、楽天株式会社の4社によるもの。
無許諾音楽アプリは、許諾のない楽曲をユーザーがストリーミング視聴やダウンロードすることができるなど、著作権者および著作隣接権者などの権利者が想定しない形での音楽配信を可能にするアプリを指す。
■アップル社に対し、「アプリの事前審査の強化」「迅速な削除対応の強化」を求める
要望書を提出した団体らはこうしたアプリの氾濫によって、「多くのユーザーが当該アプリで音楽聴取を行い、運営者がアプリ上に掲載される広告から不当に利益を得ることで、著作権が侵害され、本来であれば、音楽CD、ダウンロードまたはストリーミング販売などを通じて著作権者や事業者に正当に得られるべき収益が収奪されています」と問題点を指摘。
App Storeでアプリを配信しているアップルに対し、「アプリの審査段階で無許諾音楽アプリと思われるアプリについて、事前に日本レコード協会と連携するといった事前審査の強化」、「権利者から削除申請が行なわれた場合、アップルのアプリ規約に違反するアプリに対する迅速な削除対応の強化」の2点を求めている。
これまで数年にわたり、無許諾音楽アプリと思われるアプリに対して、日本レコード協会を通じてアップルに削除申請を行なって対応を受けてきたが、削除申請したにもかかわらず削除されていないものがあったり、削除されても形を変えて再度アプリストアに登録されることがあるなど、「アプリストア側の対応が十分とは言えない状況」だったという。そのような現状を背景に、音楽団体らは対応・対策の強化を求めて要望書の提出に踏み切った。
■「音楽にお金を使わない」というユーザーの傾向も
無許諾音楽アプリを巡っては、様々な音楽が無許諾で無料配信されている「Music FM」などが若者を中心に利用されており、問題となっていた。
日本レコード会社が2019年4月に発表した、2018年度「音楽メディアユーザー実態調査」によれば、「主な音楽聴取手段」の1位はYouTube、ついで音楽CD、テレビ、音楽CDからコピーした楽曲ファイル(MP3など)となっている。YouTubeは動画視聴サービスだが、いまや音楽を聴く手段として使用している人も多い。
また「新たに知った曲の購入を見送った理由は?」との質問に対する回答の1位は「無料音楽配信・動画サイト、アプリで満足した」(30.1%)。さらに3位に「金銭的な余裕が減った」(10.4%)との回答が並び、「そもそも音楽にお金を使おうと思わない、または思わなくなった」の回答は前年の7.4%から9.6%に増加するなど、音楽にお金を使う余裕がない、あるいは使いたがらないユーザーの傾向も表れている。
無許諾音楽アプリについては違法と知らずに使っているユーザーもいるようだが、アプリ開発者に対して厳しい対処が必要なことはもちろん、そうしたアプリを使わないという意識をユーザーが持つことも求められるだろう。