FIAグランツーリスモ・チャンピオンシップの2019ワールドツアー第2イベントが、ドイツ・ニュルブルクリンクで開催された。ビデオゲームの中で初めてニュルブルクリンクの伝説的な北コースを再現したグランツーリスモにとって、ニュルブルクリンクは特別な場所。今回も、実車によるニュルブルクリンク24時間レースが開催されている週末、サーキット内の特設会場に16か国から24人の選手を集め、GRスープラカップエキジビションレース、マニュファクチャラーズカップ、ネイションズカップが行われた。
個人戦となるネイションズカップはすさまじいレースだった。レースは昨年のワールドチャンピオンで日本育ちのブラジル人、イゴール・フラガと、スペインからの挑戦者コッキー・ロペス、オーストラリアの暴れん坊コディ・ニコラ・ラトコフスキーによる三つどもえの格闘となった。
ポールポジションからスタートしたフラガはソフトタイヤ、ミディアムタイヤ、ハードタイヤとつなぐ正攻法を採り、レース終盤から燃料マップを絞り給油時間を最小限にしてぎりぎりでレースを走りきる作戦で首位を守りにかかった。
これに対し2番手につけたロペスは、フラガと同じソフト、ミディアム、ハードとつないだが、レース最後にガス欠覚悟の勝負に出て、2回目のピットストップでフラガをかわし首位を奪うとチェッカーフラッグへ向けて突進を開始した。
フラガはロペスの背後につけて逆襲を狙ったが、その背後から3番手スタートのラトコフスキーが迫る。彼はミディアムスタートでハード、ソフトとつなぎ後半ペースアップする作戦を採っており、レース終盤ロペスとフラガを上回るペースで周回し追いついたのだ。
20周レースの残り5周となって格闘が始まった。トップを走るフラガは燃料をセーブしながらペースをコントロールし、残り5周で無給油作戦を採りタイヤ交換を終えた。一方ロペスは残り4周でピットイン、なんと彼も無給油でレースに復帰、フラガの前でレースに復帰した。燃料をセーブするフラガに対し、ロペスはガス欠覚悟での勝負に出たのだ。
意表を突かれたフラガはロペスのすぐ後について逆襲をはかる。そしてその後方から身軽なマシンにソフトタイヤを履いたラトコフスキーがラップ2秒速いペースで全開で追い上げてきた。
19周目が終わろうという時、ラトコフスキーが強引にフラガを押しのけた。フラガは対抗することができず3番手に。そして最終ラップ。ロペスに迫ったラトコフスキーも、さすがにソフトタイヤを使い果たそうとしていた。
テール・トゥ・ノーズに迫ったところで、前を行くロペスがイン側の壁に軽く接触して失速したのをきっかけに3台が交錯、バランスを崩したラトコフスキーはオーバーランしてフラガを前に出してしまう。
そして最終ラップの最終コーナーひとつ前、2番手のフラガはアウトにマシンを振ってクロスを狙ったところ、インに飛び込んだラトコフスキーがトップのロペスに軽く追突、ロペスはアウトへコースオフし、そのスキにフラガがインに切り込んでトップへ抜け出し、そのまま最終コーナーを抜け、真っ先にチェッカーフラッグを受け劇的な優勝を遂げたのだった。
「最終ラップでは3位に落ちたが、レースが混乱していたから、できるだけ上位2名の近くにいることを心がけた」とフラガは言う。
「2位に上がって最終コーナーに入った。最終コーナーでコッキー(ロペス)選手がガソリンセーブのため早めにアクセルを抜いてインにディフェンスしていたから、ぼくはアウトに並んだんだ」
「そのとき、コディ(ラトコフスキー)選手がインに飛び込んだので、それを見た瞬間フルブレーキしたら目の前でコッキー選手がコースアウトしてトップへ抜け出せたよ。ぼくはコディ選手と並んで、余っていた燃料をすべて使って1位でゴールできた」
日本人選手はマニュファクチャラーズカップで山中智瑛の属するトヨタチームが優勝、会場に日の丸が掲げられたものの、ネイションカップでは結果を出すことはできなかった。
それにしても、すさまじいレースだった。ワールドチャンピオンであるフラガの速さ、強さ、そして“引き”にはかつてのF1ワールドチャンピオン、アイルトン・セナの往事を思い出さざるをえなかった。
グランツーリスモ・チャンピオンシップの2019ワールドツアーは、ますます熱さを増して第3イベント、ニューヨークへ向かう。