FIAの欧州格式選手権となるETRCヨーロピアン・トラック・レーシング・チャンピオンシップの第3戦が7月6~7日の週末にスロバキアリンクで開催され、前人未到自身6度目の王座を目指す“帝王”ヨッヘン・ハーン(イベコ)が土日ともポール・トゥ・ウインで週末2勝をマーク。シリーズ唯一の女性ドライバー、シュテイフィ・ハルム(イベコ)も奮闘をみせ、新記録となる3戦連続表彰台に上っている。
2018年にシリーズ記録となる5度目の王座を獲得しているハーンは、この日も予選から速さを見せ、練習走行で首位だったハルムを逆転して今季4度目のポールポジションを確保。
レース1のスタートでも盤石の態勢でホールショットを決めると、3番グリッドから好スタートを切ったハルムが追走し、イベコ同士のデッドヒートが展開される。
しかしレース序盤のターン2でドイツ人ドライバー同士のレネ・ラインアート(イベコ)とアンドレ・クルシム(イベコ)が絡み、若いクルシムの方がグラベルにスタック。このアクシデントでセーフティカー導入となってしまう。
8周のフィニッシュラインに向けリスタートを切った隊列では、4番手から発進の2017年王者アダム・ラッコ(フレートライナー)が2番手ハルムのテールを執拗に追うも、ラップ数が足りずオーバーテイクには至らず。王者ハーンが今季5勝目を挙げ、ハルム、ラッコと実力者が顔をそろえる表彰台となった。
続く土曜のレース2は前戦のトップ8リバースグリッドとなり、アクシデントからのリカバリーで他者の進路を妨害したとして10秒加算ペナルティを受けていたラインアートが、4位から8位に降格して望外のリバースポールを獲得。
しかしこのレースで主役に躍り出たのは5番グリッド発進のサッシャ・レンツ(マン)で、オープニングラップで2番手にジャンプアップすると、続く2周目に先頭走者がターン3でワイドになったのを見逃さず、ラインアートをかわして早々に首位浮上に成功する。
するとラインアートはすぐさま襲いかかってきたかつての愛弟子であるハルムにバトルを挑まれると、コンタクトを伴う彼女の攻めにあえなく陥落。さらにトラックへのダメージとパンクにも見舞われ、そのまま戦列を去ることに。
さらにファイナルラップでは3番手争いも激化し、タンクプール24レーシングのメルセデス・ベンツ・トラックスを駆るノルベルト・キスをコーナーアウト側から攻略したラッコが最後の最後で表彰台を獲得。レンツが今季2勝目、キャリア通算3勝目となり、連続2位のハルムが続くポディウムとなった。
「今日の私は本当にラッキーだったわ。レース1では後方とギャップがあったんだけど、残り2周のリスタートで間隔が大きく縮まった。でもミスをしないように心がけて、アダム(ラッコ)を抑えきることができた。私は可能な限りインサイドラインをとったし、彼もそれほど無茶はしなかったから、ファイナルラップをしのげて良かった」と、振り返ったハルム。
「レース2はそれとは対照的に、仕掛けるには距離がありすぎたの。最終的には2位が確保できたし、とにかく初日は上出来よ」
明けた日曜の予選でもハーンが手のつけられない速さで連続ポールを奪取すると、レース3でも前日の再現とばかりにポール・トゥ・ウイン。後続もこのスタートで明暗が分かれ、フロントロウに並んでいたキスのメルセデスが大きくドロップすると、セカンドロウのドイツ人2台、ラインアートとハルムが王者を追走。
そのまま8周のレースディスタンスを走破し、帝王ハーンが今季6勝目。ラインアート、ハルムの表彰台となり、前日から続けて2位、2位、3位をマークした彼女は、自身とスロバキアリンクでの記録となる3戦連続ポディウムを獲得。結果的にイベコ勢が1-2-3フィニッシュを飾ることとなった。
「レースペースは良いと感じていたし、3戦で3つの表彰台にはとても満足よ。スロバキアリングでは数年前にもポディウムを勝ち獲っているし、ここは相性が良いみたい」と満足げなハルム。
そして週末最終ヒートとなるレース4は、アントニオ・アルバセテ(マン)がリバースポールからスタートし、2018年のフランス、ル・マン戦以来となる優勝をマーク。2位にフロントロウ発進のレンツ、3位に週末初表彰台のキスが続いている。
続くシリーズ第4戦は例年最大の観客数を集める一大イベント、ドイツ・ニュルブルクリンクでの"トラック祭"が、7月20~21日の週末に開催される。