モビリティランドは7月10日、7月25日~28日に鈴鹿サーキットで行われる2018-2019 FIM世界耐久選手権(EWC)最終戦“コカ・コーラ”鈴鹿8時間耐久ロードレース第42回大会の前夜祭と決勝レース前に行われるセレモニーで元ロードレース世界選手権(WGP、現MotoGP)ライダーの青木拓磨がデモ走行を行うと発表。22年ぶりに拓磨が鈴鹿サーキットのコースを駆け抜ける。
拓磨は、1995年に当時の全日本ロードレース選手権の最高峰、スーパーバイククラスでチャンピオンを獲得。翌年の1996年にも王者に輝き2連覇を果たす。1997年にはWGPのGP500クラスにレプソル・ホンダからフル参戦を開始。ホンダNSR500Vを駆り、3位表彰台を2度、2位表彰台を1度獲得し、デビューイヤーをランキング5位で終えた。
1998年も引き続きレプソル・ホンダからWGPに参戦するはずだったが、開幕前のテスト中に転倒を喫し、このときに脊髄を損傷し下半身不随となってしまい、バイクに乗ることができなくなった。以来、拓磨は車椅子での生活を送ることになる。
下半身が動かなくなった拓磨だが、レース活動はやめることなく、チームの助監督やアドバイザーとして活躍した。その他、四輪レースにも参戦しており、現在はフランスの耐久レースVdeV(ベドゥベ)選手権に参戦。2020年にはWEC世界耐久選手権として行われるル・マン24時間レースに特別枠で出場を予定している。
そんな拓磨が下半身不随となった1997年以来22年ぶりに鈴鹿サーキットを走行。イギリス製のハンドシフト装置を備えたホンダCBR1000RRでデモ走行を行う。
この企画は、幼い頃からともにレースを競い合ってきた兄青木宣篤と三男青木治親の「もう一度拓磨をレーシングバイクに乗せたい」という想いがきっかけだという。プロジェクト名は『青木拓磨がバイクで走る“Takuma Rides Again”プロジェクト』。拓磨もデモ走行に向け2019年の春からトレーニングを積み、準備を重ねている。
7月9日には拓磨が鈴鹿サーキットでホンダCBR1000RRの試走を実施。ホームストレートを200km/hオーバーで駆け抜ける姿が見られた。
試走を終えた拓磨は走行を次のように振返り、当日のデモ走行へ向けた思いを語っている。
「久しぶりの鈴鹿サーキットでしたが、コースがところどころ変更されていて、MuSASHiシケインをまっすぐ行ってしまいました。でも、こうやって走ってみると、電子制御が発達した今のバイクの性能に改めて驚きました。ストレートでは250km/hぐらい出ていましたが、10年前のバイクでは無理だったかもしれません」
「ヨーロッパでは障がいのある人でもレースを楽しんでいる人が多く、私が2020年にル・マン24時間耐久レースに出場を予定しているチームオーナーも四肢欠損した障がい者です。でも、その方は生きる目標を見出すために自らレースに挑み、ル・マン24時間にも出場しています」
「障がい者でもチャレンジするエネルギーが生きていく力になると教えてくれました。今回、私がバイクに乗って、私と同じように障害を負って二度とバイクには乗れないと諦めていた人にも『障がい者でもできるんだね』ということを知って欲しかった。障がい者になったからといってチャレンジする精神を止める必要はないということを、伝えていければと思います」
7月27日の鈴鹿8耐前夜祭で行われるデモ走行は19時に開催。決勝レース前セレモニーでのデモ走行はスケジュールが決まり次第発表するとのことだ。青木拓磨が再びバイクでサーキットを駆け抜ける姿を見に鈴鹿サーキットを訪れてみてはいかがだろうか。