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BUMP、菅田将暉、ヤバイTシャツ屋さん……社会やメディアのなかで有機的に進化する新作

2019年07月10日 13:02  リアルサウンド

リアルサウンド

BUMP OF CHICKEN『aurora arc』(通常盤)

 今週はBUMP OF CHICKENの約3年5カ月ぶりのフルアルバムや、あいみょん、米津玄師、志摩遼平などとのコラボレーションを実現させた菅田将暉のニューアルバムなどを紹介。その共通点は、バンド/アーティストの描き出す物語、そして、様々なクリエイターやメディアとのつながりを強く感じさせる作品であること。音楽は現在、社会やメディアのなかで有機的に絡み合いながら、まったく新しい変化を遂げようとしているのだと思う。


(関連:BUMP OF CHICKEN、アルバム&ドームツアーに高まる期待 バンドが描く次なる“未来”とは


 「アリア」「月虹」「新世界」「Aurora」など、前作『Butterflies』(2016年2月)以降に発表された楽曲をすべて収めた本作『aurora arc』は、この3年5カ月のバンドの軌跡が刻まれていると同時に——まるで最初から緻密なプロットが存在してたかのように——神話のごとき壮大なストーリーを描き出している。その要となっているのは、アルバム全体のビジョンを明確に示す1曲目のインストナンバー「aurora arc」、そして、少年期と現在の自分を照らし出す「ジャングルジム」、“君”に向けた愛情と歌を届け続ける意思を綴ったミディアムチューン「流れ星の正体」というふたつの新曲。宇宙的なスケール感と日常のなかの心の揺れを共存させた、このバンドにしか生み出せない物語をたっぷりと堪能してほしい。


 1stアルバム『PLAY』のリリース以降、「ロングホープ・フィリア」「まちがいさがし」などのヒット曲を送り出し、シンガー/アーティストとして存在感を強めている菅田将暉のニューアルバム『LOVE』には、秋田ひろむ(amazarashi)、石崎ひゅーい、柴田隆浩(忘れらんねえよ)、志磨遼平(ドレスコーズ)、米津玄師、あいみょんなどが参加。菅田自身が作詞/作曲を手がけた楽曲も収録され、前作以上にディープな音楽世界を味わえる作品となった。本作のポイントは、すべての参加アーティストと菅田自身がリアルにつながっていること。“人気俳優に対し、今をときめくクリエイターが楽曲を提供した”ではなく、彼自身の興味、志向、関係性がそのまま反映されていることこそが、このアルバムの魅力なのだと思う。


 ヘビィ&ファストなサウンド、ドキャッチーなメロディとともに“癒着”について歌う“これぞヤバT!”なリード曲「癒着☆NIGHT」(「スプライト」CMタイアップ曲)をはじめ、「NHKフレッシャーズキャンペーン2018」イメージキャラクターに抜擢されたことを受けて制作された「案外わるないNHK」、こやまたくや(Gt/Vo)の小学校時代の恋のエピソードを描いたアッパーチューン「sweet memories」(しばたありぼぼの超ハイトーンボイスが炸裂!)、『志摩スペイン村』のテーマソング「きっとパルケエスパーニャ」をヤバイTシャツ屋さんアレンジでカバー、岡崎体育による「癒着☆NIGHT」remixとビックリするような大型タイアップ満載の8thシングル『スペインのひみつ』。バンドの個性を発揮しまくり、様々な企業、メディアとつながりながら表現を拡大し続けるヤバTの最新モードが体感できる。


 昨年12月から今年2月にかけてCDデビュー15周年を記念した全国ツアーを行い、旺盛な実験精神と普遍的なポップネスを兼ね備えた音楽性を改めて提示した藍坊主。アニバーサリーイヤーを経て届けられた新作ミニアルバム『燃えない化石』は、このバンドの独創的な音楽世界がさらに深化していることを告げる作品となった。それを象徴しているのがリード曲「アンドロメダ」。夏の夜を想起させるきらびやかなサウンド、叙情性とスケール感を同時に放つメロディライン、そして、〈あなたと あなたを愛する人が いつか星になれたら/ 同じ星になれたら〉という歌詞がひとつになったこの曲は、日常と神話を行き来するような物語を描き出している。生まれては消えるトレンドを乗り越え、独自のスタイルを貫く彼らの現在地がここにある。


 00年代中頃から活動スタート。メロコアを軸にしながら、ギターポップ、インディーロック、シューゲイザーなどを取り込んだバンドサウンド、日々の生活のなかにある葛藤、不安、希望を真っ直ぐに照らし出す歌うことによって確実に支持を広げてきたスリーピースバンド、SEVENTEEN AGAiNから4年ぶりのフルアルバム『ルックアウト』が到着。表題曲「ルックアウト」はポストパンク的なエッジーな音像と解放感のあるサビのメロディ、“なくした鼓動をもう一回”というラインがぶつかり合うアッパーチューン。さらに80年代のネオアコを想起させるアンサンブル「意味はないなんて強がらないで」、失恋の喪失感と平和の願いが自然につながる「戦争はおわりにしよう」などルーツに根差した音楽性と真摯なメッセージを共存させた楽曲を収録。(森朋之)