ハンガリー・ハンガロリンクで7月5~7日に開催されたユーロフォーミュラ・オープン(EFO)第5大会に、FIA-F2ドライバーでホンダ育成ドライバーでもある松下信治が参戦すると正式発表されたのは大会直前の4日。現地では、“格下のシリーズに格上のシリーズへ参戦中のドライバーが練習目的で参戦するとはいかがなものか?”と疑問の声がある一方、“EFOの競技水準を図るひとつの物差しになる”と好意的な声もあった。
実際、今回のEFO参戦に関して松下は、「(8月に開催されるハンガロリンクのF2レースへ向けた)あくまで練習ですよ」と語っていた。
また、彼は今年2月に開催されたEFOウインター・シリーズにも参戦して、未経験のポール・リカール習熟に努めた過去がある。今回は2015~16年シーズンのGP2や2017年シーズンのF2で経験済みのハンガロリンクだが、念には念を入れてといったところなのかもしれない。
さて、4日にはEFOの公式合同テスト/プライベート・テストが4時間にわたり実施された。松下はこの機会に新品タイヤでのアタックを含めて54周を走り込み、全体6番手となる1分35秒201の自己ベストを記録した。
翌5日には通常の練習走行(40分間×2)が実施され、参加ドライバー全員が中古タイヤで走り込むなか、松下は1回目2番手で2回目4番手と徐々に本領を発揮し始めた。
6日の予選1回目、松下はライバル同様に2セットの新品タイヤを投入して1分35秒458の3番手タイムを記録した。
しかし、高速コーナーのターン11でトラック・リミットを外れたと判断されてタイム抹消。18台中16番手と下位に沈んでしまった。
これを受けて松下は、同日午後の決勝レース1に対する取り組みを変更して臨んだ。フォーメーションラップの最後にピットストップ。ほかの17名のドライバーがコース上で戦うなか、松下ひとりだけはその後もピットイン/ピットアウトを繰り返す不可思議な行動を見せたのだ。
「あれはプラン。クルマのトラブルではない。日曜日の予選に向けてクルマのパフォーマンスを調べた」と松下。
「今日(土曜日)の予選1回目、トラック・リミット違反で自己ベストタイムを抹消されて16番手スタートになったのがその理由。ここは抜けないしそうなると走ってもあまり意味は無いし、来週もF2レースがあるのでリスクは避けたかった。クラッシュとかして手を傷めたら嫌ですから」
迎えた7日の予選2回目、前日の決勝レース1での取り組みが功を奏し、松下は1分34秒361を記録してポールポジションを獲得した。
同日午後の決勝レース2、松下はスタートの“蹴り出し”がやや鈍く、3番グリッドの佐藤万璃音に先行されて2番手へ落ちた。
松下は終始1秒以内でランキングリーダー万璃音を追うも、相手のミスがなければ抜くのはほぼ不可能と言われるハンガロリンクでは、2位でのチェッカーフラッグを甘んじて受けるしかなかった。
「スタートは悪くなかった。でも、彼(佐藤)のスタートが“MEGA”だった」と若手のパフォーマンスを称賛した松下。ハンガロリンクでの練習を糧とした松下の今後のF2レースが期待される。