日曜レース2の最終ピットで給油装置トラブルから炎上したBJRのニック・パーカット VASCヴァージン・オーストラリア・スーパーカーの2019年第8戦となるタウンスビル400は、土曜のレース17で王者スコット・マクローリン(フォード・マスタング/DJRチーム・ペンスキー)が6連勝を決め今季13勝目をマーク。日曜レース18は豪雨、接触、炎上などアクシデント多発の展開でセーフティカー・フィニッシュとなり、レッドブル・レーシング・オーストラリア(RBRA)のシェーン-ヴァン・ギズバーゲン(ホールデン・コモドアZB)がマスタングの連勝を阻止する今季2勝目を挙げている。
7月6~7日に開催された第8戦は、オーストラリア・クイーンズランド州北東岸に位置する港湾都市タウンスビルが舞台。市の公園内を中心とした70%パーマネントの半市街地コース、リード・パーク・ストリート・サーキットでは、ここまで5連勝を決め圧倒的な強さを見せるマクローリンとマスタングの組み合わせを誰が止めるのかが注目ポイントとなった。
その土曜決勝レース17に向けた予選では、ホールデン陣営のトップチーム、エレバス・モータースポーツのデビッド・レイノルズ(ホールデン・コモドアZB)がその意気込みを感じさせる走りで今季初ポールポジションを獲得。2番手ティックフォード・レーシングのチャズ・モスタート(フォード・マスタング)にフロントロウも譲り、マクローリンは2列目3番手に留まるなど、王者の行軍もここで止まるかと予想させるグリッドポジションとなった。
しかし、週末最初の200kmレースは一度もセーフティカー(SC)出動がない直球勝負のレース展開となり、勝敗はレースペースと各陣営のピットストラテジーに依存する形に。
70周のレースでモスタートやRBRAのトリプルエイト・レースエンジニアリング勢と接近戦を展開したマクローリンは、45周目に最後のストップを済ませるとフレッシュタイヤで首位を猛追し、この時点でトップを走行していたジェイミー・ウインカップ(ホールデン・コモドアZB)のリヤバンパーに迫ると、残り20周の最終コーナーで首位浮上に成功。そのままトップチェッカーをくぐって盤石の6連勝を飾ってみせた。
同じく200kmとなるレース18に向けた日曜午後の予選シュートアウトでは、王者マクローリンと同じマシンながら、ここまでセットアップで差をつけられてきたティックフォード陣営の1台、モンスターエナジー・フォード・マスタングのキャメロン・ウォーターズが、わずか0.0159秒差でマクローリンを押しやり今季初ポールを獲得。2列目にもレイノルズ、トッド・ヘイゼルウッド(ホールデン・コモドアZB/Matt Stone Racing)が並び、再びマクローリン&マスタング包囲網が完成した。
するとレース直前にシャワーがサーキットを覆い、ウォームアップラップを終えたグリッド上のマシンは全車スリックタイヤ装着ながら、この通り雨により路面は完全ウエットというトリッキーな状態でのスタートに。
その予想どおりオープニングの1コーナーで早速のアクシデントが発生し、ポールシッターのウォーターズに続けとジャンプアップを狙ったレイノルズのホールデンがマクローリンの右リヤに追突。これでペンライト・スペシャルカラーのコモドアZBは左フロントを破損し、DJRマスタングの右リヤはパンクに見舞われるダメージを負い、王者は憤慨したままピットへ。
ここでレコードライン上は乾くと予測したDJRチーム・ペンスキー陣営は、一度はウエットタイヤをあてがうものの急きょスリックタイヤ装着を決断し、再びシェル・マスタングをコース上へと送り出す。
このオープニングの混乱に乗じてポジションを上げたのは、ウエットを得意とするドライバーのSVGことシェーン-ヴァン・ギズバーゲンで、3周目には3番手にまで躍進。対するフォード陣営のウエットマスターであるモスタートも、トップ10圏外から大きくジャンプアップし、ヘイゼルウッドをパスして4番手にまで浮上してくる。
その後、20周前後に最初のピットウインドウが開く頃にはライン上が乾き始め、ウォーターズ、ウインカップ、そしてマクローリンのチームメイトであるファビアン・クルサード(フォード・マスタング)らが続々とピットへと向かい、クリーンエアを狙ってセカンドスティントへと入っていく。
しかし時を同じくして、サインガードでは“再びの雨”を予想する情報が流れ、実際にトラック上でも小雨がパラつき始めると、ピットアウト直後の7回王者ウインカップがまさかのスピンオフからバリアにクラッシュ。これでSC導入となり一気にレースは動くことに。
このSCピリオド中にタイヤ交換を終えた上位勢はそれでも軒並みスリックを選択し、短い作業時間とタイミングで勝ったクルサードを先頭に、ラップダウンのマクローリンを挟んでウォーターズ、SVG、モスタート、ニック・パーカット(ホールデン・コモドアZB/Brad Jones Racing)のトップ5で26周目にリスタート。
その後もポジションを入れ替えるバトルが続くと、ダンプ路面にスリックという滑りやすい状況ながら、30周目にはウォーターズがクルサードを捉えて再び首位を奪還。しかしここでいち早く動いたのはSVGとRBRA陣営で、より雨が強まると判断したトリプルエイトはこの周に急遽SVGをピットへと呼び戻し、ウエットタイヤへとチェンジ。
セカンドルーティンは45周過ぎとまだまだ先のため、路面コンディションに合わせたこの判断はギャンブルだったが、数周も経たぬうちに雨は強さを増し、上位勢が続々とウエットへとチェンジする判断を下したことで、SVGがゲインを獲得。しかしそのSVGをさらに上回り、SCピリオド中にすでにウエットを履いていたエレバスのアントン・デ・パスカーレ(ホールデン・コモドアZB)が、全車ウエット装着で一巡したところで首位に踊り出る。
その後、50周を前後に最低給油量110リッターに満たないマシンを中心に2度目のピットウインドウを迎えると、トラック上で表彰台争いを展開していたウォーターズとパーカットがブレーキングで絡み、4番手のBJRホールデンが3番手のマスタングをプッシングしたままターン4のエスケープに突進。
このインシデントでBJRのパーカットには15秒ペナルティが下されると、さらにコース上では別のマシンによるクラッシュが発生し、この日2度目のSCがコースイン。すると最後の燃料給油に飛び込んだパーカットのホールデンは、燃料給油装置の不具合かリグの圧力弁が開いたことでエキゾーストの熱が伝わって引火し、炎上する事故が発生。マシンとガレージの一部を焼く事態となってしまう。
この事故に加え、2度のSCと合わせてレース最大時間が近づいていたレース18は、SC先導走行のままチェッカー。SVGがマクローリン&マスタングの連勝を止め今季2勝目を飾り、2位に出走400戦記念レースだったクルサード、そしてBJRとのアクシデントで一時はポジションを失っていたウォーターズが帰還し、最後の表彰台に上がっている。
依然としてチームメイトのクルサードに292点のマージンを持ち選手権首位に立つ王者マクローリン。しかしわずかにシリーズの流れが変化したこの第8戦を経て、続くラウンド9は7月27~28日開催のクイーンズランド・レースウェイ、イプスウィッチ・スーパースプリントが待ち受ける。