2019年07月09日 10:31 弁護士ドットコム
人気ファッションブランド「セシルマクビー」など、女性服を手がける「ジャパンイマジネーション」(東京・渋谷)の下請け工場で発覚した技能実習生の労働問題をめぐり、外国人技能実習生問題弁護士連絡会とNPO法人ヒューマンライツ・ナウ(HRN)は、同社による改善の取り組みを明らかにして、再発防止のために必要な対策を提言する報告書を発表した。
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この報告書は、同社の取り組みについて、「他の一般的な日本企業と比較した場合には積極的」と一定の評価を与えながらも、アパレル業界のサプライチェーン全体で、さらなる改善と再発防止をもとめるものとなっている。
きっかけは、2017年12月に放送されたテレビ東京のドキュメンタリー番組「ガイアの夜明け」。この番組の中で、ジャパンイマジネーションのサプライチェーンを構成する二次請けの工場で、中国人の技能実習生に対して、違法な長時間労働を強いていることなどが放送され、大きな批判を浴びた。
同社は同12月、「労務問題が存在するという事実も判明した」と認めたうえで、「今後は取引メーカーさまとともに、製造現場についてさらなる関心を払い、弊社の商品がそのような環境下で製造されることがないように努力をしてまいる所存です」というコメントを発表した。
同社はすぐに、1次請け企業70社をあつめて説明会を開いて、企業理念にもとづいて、(1)このような労務問題がある工場での生産は一切おこなわない、(2)問題があった工場および同社と関係の疑われる工場においては生産を中止する――などと宣言した。
さらに、そうした工場と取り引きのある1次請け企業についても取り引きを中止する意思を示した(実際に、問題のあった工場と取り引きのあった1次請け企業を取り引き停止とした)。その後、技能実習生の実態調査や、工場への直接の訪問調査を実施している。同社は今年5月31日、調査状況から「状況は明らかに改善しつつあると認識している」としていた。
外国人技能実習生問題弁護士連絡会とNPO法人ヒューマンライツ・ナウは、番組放送から約1年後の2018年12月、ジャパンイマジネーションに質問状を送り、今年2月に面談をおこなうなどして、やり取りをおこなった。そこから明らかになった同社の取り組みや、さらなる改善ポイントをこのほど報告書にまとめた(6月28日付)。
報告書は、同社の取り組みに一定の評価を与えながらも、二次請け工場の訪問調査で、工場長など雇用者側の聞き取りだけで、技能実習生に対して直接聞き取りをおこなっていないことや、その調査方法についても開示されていないことを指摘している。
そのうえで、業界全体で、2011年に国連で承認された「ビジネスと人権に関する指導原則」に沿った人権方針を策定すること、人権デュー・ディリジェンス(人権リスクに関する内部統制)を実施すること、救済メカニズムの構築をおこなうこと――などを提案。日弁連の「人権デュー・ディリジェンスのためのガイダンス」が参考になるとしている。
・(日弁連)人権デュー・ディリジェンスのためのガイダンス
https://www.nichibenren.or.jp/library/ja/opinion/report/data/2015/opinion_150107_2.pdf
外国人技能実習生問題弁護士連絡会とヒューマンライツ・ナウは7月8日、東京・霞が関の厚労省記者クラブで会見を開いた。
外国人技能実習生問題弁護士連絡会サプライチェーン問題PTの川上資人弁護士によると、二次請け工場で、破産を理由として、技能実習生の未払い賃金を払わずに逃げるというやり口が増えているという。川上弁護士は、そうした場合に対応するために「未払い賃金を補填する基金を設立すべき」と述べた。
HRNの伊藤和子弁護士は「(NHK「ノーナレ」で取り上げられた)今治タオルのもそうだが、まだまだ深刻な闇がつづいているのではないかと思っている。業界全体としての取り組みがもう少しすすんでいかないと、東京五輪が近づく中で、日本自体がブラックリスト化されるのではないか」と話していた。