F1ジャーナリストの今宮純氏が独自の視点でドライバーを採点。週末を通して、20人のドライバーから「ベスト・イレブン」を選出。予選やレースの結果だけにとらわれず、3日間のパドックでの振る舞い、そしてコース上での走りを重視して評価する。今回はF1第8戦フランスGPとF1第9戦オーストリアGPの2連戦分だ。
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☆ アントニオ・ジョビナッツィ(アルファロメオ)
フランスGP=16位/オーストリアGP=10位
ようやくオーストリアGPで1ポイントをゲット。この2戦連戦を通してミスは減り、キミ・ライコネンとのタイム差も僅少に(とくに高速コーナー)。さらにオーストリアGPのアルファロメオは初のダブル入賞。フェラーリ製パワーユニット(PU/エンジン)ユーザーのハースにプレッシャーが。
☆ ジョージ・ラッセル(ウイリアムズ)
フランスGP=19位/オーストリアGP=18位
決勝順位でゼロ行進がつづくがオーストリアGPの18位は、全車完走レースでケビン・マグヌッセン(ハース:19位)以上の戦果だ。17位でフィニッシュしたダニール・クビアト(トロロッソ・ホンダ)にもくいさがり、青旗が振られる中でタイムロスを抑える走り。いまのマシンで自己ベストを追求しつづける姿勢は、他チーム関係者の目にもとまる。
☆☆ ダニエル・リカルド(ルノー)
フランスGP=11位/オーストリアGP=12位
上がったり下がったり、この2連戦ルノーのパフォーマンスは全く不可解だ。ホームGPであるフランスGPで本領を発揮したリカルドだが8~9コーナーのアクションに“ダブル5秒ペナルティ”を科せられ、7位から11位に降格。それを受け入れた態度はポジティブ……。それにしても20代最後の日(7月1日が誕生日)は、散々だった。
☆☆ ルイス・ハミルトン(メルセデス)
フランスGP=1位/オーストリアGP=5位
先を見据えた“チャンピオンシップ・マネージメント”でこの2連戦をのりきった。フランスGPでは自信満々に無敵のポール・トゥ・ウィン。熱波気象のオーストリアGPではメルセデスW10の戦力が相対的に低下し5位でセーブ。次の母国戦イギリスGPを前に“一休み?”。
☆☆ バルテリ・ボッタス(メルセデス)
フランスGP=2位/オーストリアGP=3位
第9戦の“ゲームメーカー”は、21周目にピットインした彼。反応したルクレールが22周目につづき、長いスティントを強いられてマックス・フェルスタッペンに敗れた。彼自身もハードタイヤで50周はきびしかったがソフトタイヤで迫るベッテルを0.65秒差で抑え3位。ハミルトンとの36点差を31点差に、少しだけつめられた。
☆☆☆ キミ・ライコネン(アルファロメオ)
フランスGP=7位/オーストリアGP=9位
ときどき無線で叫ぶが彼はフェアプレイヤー。フランスGPで起きたリカルドとの交錯シーンでは、右に威嚇すれば抜かれなかったのにしなかった。F1ドライビングの『規範』を示すベテラン、300戦スタートのオーストリアGPでジョビナッチを引き連れダブル入賞。
☆☆☆ セバスチャン・ベッテル(フェラーリ)
フランスGP=5位+ファステスト/オーストリアGP=3位
試練の6月2連戦は、5位と4位にとどまった。オーストリアGP予選中、パワーユニットに不具合発生でQ3アタックできず。さらに決勝ではピットワークが混乱、てんやわんやに。
一つ明るい話題はフェラーリのアップデート効果が徐々に上向き、課題の低中速コーナーでのダイナミック・ダウンフォースが増したこと。とくにターンインの挙動に見てとれる。ベッテルは次のシルバーストーンでそれを活かせるか……。
☆☆☆☆ ランド・ノリス(マクラーレン)
フランスGP=9位/オーストリアGP=6位
毎戦いい部分をレース中に見せている。フランスGPではハイドロリック系のトラブルに陥りながら、終盤までベテラングループ相手に奮闘。翌週のオーストリアでは予選6番手からソフトで25周目まで引っ張り、皆がハードに交換後ミディアムタイヤをきっちりマネージメント。ピエール・ガスリー(レッドブル・ホンダ)を寄せつけない2度目のベスト6。19歳ルーキー、現在進化中。
☆☆☆☆ カルロス・サインツJr.(マクラーレン)
フランスGP=6位/オーストリアGP=8位
ノリスより5歳年上のエースがマクラーレンMCL34開発に専念し、各パーツの比較やセッティングを試す。自分好みにまとめる前のそれが役割と自覚。
オーストリアGPではPU交換ペナルティがあり、予選ではノリスのアシスト。その鬱憤(?)を晴らすかのような決勝ではオーバーテイクショーで8位まで上りつめた。アンドレアス・ザイドル率いる新体制になって、サインツ自身もマクラーレン自体も変わってきている。
☆☆☆☆ シャルル・ルクレール(フェラーリ)
フランスGP=3位/オーストリアGP=2位
フランスのポール・リカールでは全セッションを3番手、予選も決勝もメルセデス勢に次ぐ3位。フェラーリSF90の戦力をすべて引き出してみせた。
レッドブル・リンクで驚いたのは、“縁石通過ライン”を正確にコントロール(ハミルトンとは大違い)、きれいに攻めていた。予選セクター1~3のタイムも通過スピードもすべてトップ(!)、非常に珍しい。
フェルスタッペンに敗れて2位であっても彼のドライビングは敗北者のそれではない。最終盤のリヤタイヤ状態では、もっと早くに抜かれていてもおかしくはなかった。68周目までの防御戦、ベスト・ファイン・プレー。
☆☆☆☆☆ フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)
フランスGP=4位/オーストリアGP=1位+ファステスト
強気な攻めと一撃のオーバーテイク。それだけでなくオーストリアGPの勝利で特筆すべきは、金曜クラッシュによってロングランを全くできなかったのに、ハイペースをつらぬいたこと。
69周目、1コーナー進入から“出口加速”を高めるラインへ。レッドブルRB15のグリップとトラクションだ。そしてそこから3コーナーまでがホンダ・パワー。車体とパワーユニットとドライバーが<一心同体>、グランプリ・レースらしい瞬間――。