トップへ

フェルスタッペンの力強いオーバーテイクを可能にした“一心同体”の力【今宮純のF1フランス&オーストリアGP採点】

2019年07月07日 15:01  AUTOSPORT web

AUTOSPORT web

2019年F1第9戦オーストリアGP マックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)
F1ジャーナリストの今宮純氏が独自の視点でドライバーを採点。週末を通して、20人のドライバーから「ベスト・イレブン」を選出。予選やレースの結果だけにとらわれず、3日間のパドックでの振る舞い、そしてコース上での走りを重視して評価する。今回はF1第8戦フランスGPとF1第9戦オーストリアGPの2連戦分だ。 

--------------------------------

☆ アントニオ・ジョビナッツィ(アルファロメオ)
 フランスGP=16位/オーストリアGP=10位


 ようやくオーストリアGPで1ポイントをゲット。この2戦連戦を通してミスは減り、キミ・ライコネンとのタイム差も僅少に(とくに高速コーナー)。さらにオーストリアGPのアルファロメオは初のダブル入賞。フェラーリ製パワーユニット(PU/エンジン)ユーザーのハースにプレッシャーが。

☆ ジョージ・ラッセル(ウイリアムズ)
 フランスGP=19位/オーストリアGP=18位


 決勝順位でゼロ行進がつづくがオーストリアGPの18位は、全車完走レースでケビン・マグヌッセン(ハース:19位)以上の戦果だ。17位でフィニッシュしたダニール・クビアト(トロロッソ・ホンダ)にもくいさがり、青旗が振られる中でタイムロスを抑える走り。いまのマシンで自己ベストを追求しつづける姿勢は、他チーム関係者の目にもとまる。

☆☆ ダニエル・リカルド(ルノー)
 フランスGP=11位/オーストリアGP=12位


 上がったり下がったり、この2連戦ルノーのパフォーマンスは全く不可解だ。ホームGPであるフランスGPで本領を発揮したリカルドだが8~9コーナーのアクションに“ダブル5秒ペナルティ”を科せられ、7位から11位に降格。それを受け入れた態度はポジティブ……。それにしても20代最後の日(7月1日が誕生日)は、散々だった。


☆☆ ルイス・ハミルトン(メルセデス)
 フランスGP=1位/オーストリアGP=5位


 先を見据えた“チャンピオンシップ・マネージメント”でこの2連戦をのりきった。フランスGPでは自信満々に無敵のポール・トゥ・ウィン。熱波気象のオーストリアGPではメルセデスW10の戦力が相対的に低下し5位でセーブ。次の母国戦イギリスGPを前に“一休み?”。

☆☆ バルテリ・ボッタス(メルセデス)
 フランスGP=2位/オーストリアGP=3位


 第9戦の“ゲームメーカー”は、21周目にピットインした彼。反応したルクレールが22周目につづき、長いスティントを強いられてマックス・フェルスタッペンに敗れた。彼自身もハードタイヤで50周はきびしかったがソフトタイヤで迫るベッテルを0.65秒差で抑え3位。ハミルトンとの36点差を31点差に、少しだけつめられた。

☆☆☆ キミ・ライコネン(アルファロメオ)
 フランスGP=7位/オーストリアGP=9位


 ときどき無線で叫ぶが彼はフェアプレイヤー。フランスGPで起きたリカルドとの交錯シーンでは、右に威嚇すれば抜かれなかったのにしなかった。F1ドライビングの『規範』を示すベテラン、300戦スタートのオーストリアGPでジョビナッチを引き連れダブル入賞。


☆☆☆ セバスチャン・ベッテル(フェラーリ)
 フランスGP=5位+ファステスト/オーストリアGP=3位


 試練の6月2連戦は、5位と4位にとどまった。オーストリアGP予選中、パワーユニットに不具合発生でQ3アタックできず。さらに決勝ではピットワークが混乱、てんやわんやに。

 一つ明るい話題はフェラーリのアップデート効果が徐々に上向き、課題の低中速コーナーでのダイナミック・ダウンフォースが増したこと。とくにターンインの挙動に見てとれる。ベッテルは次のシルバーストーンでそれを活かせるか……。

☆☆☆☆ ランド・ノリス(マクラーレン)
 フランスGP=9位/オーストリアGP=6位


 毎戦いい部分をレース中に見せている。フランスGPではハイドロリック系のトラブルに陥りながら、終盤までベテラングループ相手に奮闘。翌週のオーストリアでは予選6番手からソフトで25周目まで引っ張り、皆がハードに交換後ミディアムタイヤをきっちりマネージメント。ピエール・ガスリー(レッドブル・ホンダ)を寄せつけない2度目のベスト6。19歳ルーキー、現在進化中。

☆☆☆☆ カルロス・サインツJr.(マクラーレン)
 フランスGP=6位/オーストリアGP=8位


 ノリスより5歳年上のエースがマクラーレンMCL34開発に専念し、各パーツの比較やセッティングを試す。自分好みにまとめる前のそれが役割と自覚。

 オーストリアGPではPU交換ペナルティがあり、予選ではノリスのアシスト。その鬱憤(?)を晴らすかのような決勝ではオーバーテイクショーで8位まで上りつめた。アンドレアス・ザイドル率いる新体制になって、サインツ自身もマクラーレン自体も変わってきている。


☆☆☆☆ シャルル・ルクレール(フェラーリ)
 フランスGP=3位/オーストリアGP=2位


 フランスのポール・リカールでは全セッションを3番手、予選も決勝もメルセデス勢に次ぐ3位。フェラーリSF90の戦力をすべて引き出してみせた。

 レッドブル・リンクで驚いたのは、“縁石通過ライン”を正確にコントロール(ハミルトンとは大違い)、きれいに攻めていた。予選セクター1~3のタイムも通過スピードもすべてトップ(!)、非常に珍しい。

 フェルスタッペンに敗れて2位であっても彼のドライビングは敗北者のそれではない。最終盤のリヤタイヤ状態では、もっと早くに抜かれていてもおかしくはなかった。68周目までの防御戦、ベスト・ファイン・プレー。

☆☆☆☆☆ フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)
 フランスGP=4位/オーストリアGP=1位+ファステスト


 強気な攻めと一撃のオーバーテイク。それだけでなくオーストリアGPの勝利で特筆すべきは、金曜クラッシュによってロングランを全くできなかったのに、ハイペースをつらぬいたこと。

 69周目、1コーナー進入から“出口加速”を高めるラインへ。レッドブルRB15のグリップとトラクションだ。そしてそこから3コーナーまでがホンダ・パワー。車体とパワーユニットとドライバーが<一心同体>、グランプリ・レースらしい瞬間――。