2019年07月07日 10:21 弁護士ドットコム
盛れすぎて別人のように映る最近のプリクラ。SNSのアイコンにしたりインスタにあげたり、若者を中心に人気ですが、そんなプリクラを巡り、撮影中にいきなり他人が乱入してきた様子をUPしたTikTokが話題になりました。
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動画に映るのは、プリクラ機内でポーズを構える3人組の女性。最近は、プリクラを撮影している様子を動画で残せるように、カメラ側にスマホを置く場所が設けられたプリクラ機があり、投稿者もスマホで動画を撮影していたようです。
3、2、1の撮影カウントダウンが始まると、知らない人が乱入。シャッターの瞬間、呆然としている3人の姿がうつっています。
動画の投稿者は「プリクラで起きた迷惑行為 謝られもせず!非常識な男子高生 お金かえせぇ~~」とコメント。動画を見た人からは「これは酷い。お金払って撮ってんのに…」「すごい怖がっててほんとに可哀想」などとコメントが集まりました。
こうした行為は、法的な問題にならないのでしょうか。尾崎博彦弁護士に聞きました。
「なかなか何が法律問題かを検討することが難しいのですが…一応、民事と刑事の側面から考えてみようと思います
まず、民事の面からは、乱入した人に不法行為(民法709条)が成立すると考えてよいでしょう」
なぜでしょうか。
「プリクラの撮影中に乱入するという妨害行為は、プリクラを撮影するという正当な利益を侵害したとして、不法行為の要件である『違法性』を充足していると思われます。
問題は、いかなる損害が発生したかと言うことです。台無しにされたプリクラの料金相当額は損害だと考えてよいでしょう」
それ以外に損害は認められますか。
「まずは、慰謝料が考えられます。ですが、偶発的な妨害行為のみで精神的苦痛がどこまで認められるのかは微妙です。
何度も執拗にプリクラ撮影を妨害されたといった場合はともかく、一回の突発的な乱入によって精神的苦痛に対する慰謝料は、極めて少額にとどまるのではないかと思われます。
結局、損害賠償の面からは、数百円から数千円程度ではないかと私は考えます」
刑事の面ではどうでしょうか。
「行為者が少年であることは除外して、考えてみます。まず、他人の行動を妨害したという面から、業務妨害罪(刑法233条、234条)に当たるか検討します。
この罪の『業務』とは『職業その他社会生活上の地位に基づき継続して行う事務又は事業を言う』とされており、『社会生活上の活動』で『継続的なもの』を保護の対象としています」
そうすると、撮影者に対する業務妨害罪は成立しますか。
「プリクラ利用者である投稿者の撮影行為は業務とはいえないので、業務妨害罪は成立しないと考えられます」
プリクラを設置しているお店に対しては、どうでしょうか。
「プリクラは利用者が撮影行為をすることでその役割を果たすものです。設置者は利用者の望むように稼働すべくプリクラ機の設置管理を行っているのであって、正常な使用方法を妨害する行為は、設置者の反復継続した社会的活動を妨害したと評価することはできると思います。
実際には、動画のケースのような突発的な妨害行為で、お店側が業務妨害罪で捕まえることは通常考えにくいですが、そのような行為が頻繁になされるようであれば、お店への影響が小さくないでしょうから、お店から警察へ通報されるかもしれません。 いずれにせよ、こう言った乱入行為はせっかくのプリクラ撮影を楽しむ人の気持ちを台無しにする行為であって、たとえ法的には微妙であっても、そのような行為は慎むべきでしょう」
【取材協力弁護士】
尾崎 博彦(おざき・ひろひこ)弁護士
大阪弁護士会消費者保護委員会 委員、同高齢者・障害者総合支援センター運営委員会 委員、同民法改正問題特別委員会 委員
事務所名:尾崎法律事務所
事務所URL:http://ozaki-lawoffice.jp/