2019年07月06日 10:11 弁護士ドットコム
「仕事の量が少ないため、今日は昼で帰って良い。残りの半日分は有給休暇を使ってください」と言われて応じてしまったが、法的には問題ないのか? そんな質問が、弁護士ドットコムに寄せられました。
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相談者はパート従業員として働いています。会社の指示について、「本当に有休を使って休みたい時に休めなくなる」と疑問を感じたそうです。
会社の対応に問題はないのでしょうか。松尾裕介弁護士に聞きました。
「使用者の責に帰すべき事由により、労働者を休ませた場合、会社は賃金の60%以上の休業手当を支払わなければなりません(労働基準法第26条)。
ここでいう『責に帰すべき事由』とは、不可抗力の場合を除き、経営上の障害を広く含むとされており、仕事の量が少ない場合もこれに含まれると考えられます。
したがって、会社としては、仕事が少ないために昼で労働者を帰すのであれば、午後分の賃金の60%以上の休業手当を支払うべきです」
60%程度となると、有休を使ったほうが従業員には金銭的なメリットがありそうです。
「その時のことだけを考えれば、賃金の全額が保障される有給休暇を取得したほうが、休業手当の場合と比べて労働者にとって有利です。会社は、そのように考えて、有給休暇の取得を奨励した可能性もあります。
ただ、有給休暇は、原則として労働者が一方的に休む日を指定するものです(労働基準法第39条第5項)。会社が有給休暇の取得を『奨励』することを超えてこれを『強制』することは、原則としてできません」
働き方改革で、有給休暇を5日以上自発的に取得していない労働者に対しては、会社が有給休暇の時季を指定して休ませることができるようになりました(同条第7項)。今回も時季指定だったとは言えないでしょうか。
「今回の会社からの指示は、有給休暇の会社からの時季指定と解する余地があります。その場合でも、使用者は有給休暇の時季について、あらかじめ労働者から意見を聴取し、労働者の意見を尊重する必要があります(労働基準法施行規則第24条の6)。
今回、このような手続きが踏まれていたとは考えにくいので、相談者が有給休暇を自発的5日以上取得していなかったとしても、有給休暇の取得を『奨励』することを超えて、『強制』した場合には、違法と考えられます。
また、有給休暇を自主的に5日以上取得している場合には、そもそも会社側が有給休暇の時季を指定することはできず、やはり、有給休暇の取得を『強制』することはできません」
【取材協力弁護士】
松尾 裕介(まつお・ゆうすけ)弁護士
明治大学法科大学院卒業。弁護士登録後、税理士法人勤務を経て法律事務所へ移籍。家事事件、一般民事事件、刑事事件を扱うが、特に労働分野に強い関心を持ち、労使双方の立場から労働問題の解決に取り組む。
事務所名:南立川法律事務所
事務所URL:http://www.minamitachikawa.com/